『報道ステーション』番組HPより

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 米軍属男性が沖縄県うるま市の女性死体遺棄容疑で逮捕された事件に対し、沖縄では怒りの声が広がっている。だが、この事件が基地問題や米オバマ大統領の広島訪問、7月の参院選へ影響を及ぼすことは必至であることから、官邸は事件の火消しに躍起。安倍首相は昨日、事件をどう受け止めているかを問う記者を無視し、無言で背を向けて立ち去った。

 さらに本サイトで既報の通り、"本土"のメディアはそんな官邸の意向を忖度して、18日にはすでに琉球新報が重要参考人としてこの男が任意の事情聴取を受けていることをスクープしていたのにもかかわらず報道を尻込みし、逮捕が確定的になってからも読売新聞と日本経済新聞(全国版)は男が米軍関係者であることに触れなかった。

 今回のような残忍な事件はこれまでも沖縄で繰り返されてきたことであり、当然、不平等すぎる日米地位協定の見直しや基地の問題追及は免れない。しかし政府が事件そのものを矮小化しようとし、それに追随するマスコミの姿勢を見ていると、沖縄を捨て石としか考えていないと思わざるを得ない。

 それは、この男も同様である。昨日、『報道ステーション』(テレビ朝日)のコメンテーターで、共同通信社客員論説委員の後藤謙次氏が、番組内で信じられない言葉を吐いたのだ。

 まず、米軍属男性の逮捕を報じた『報ステ』では、富川悠太キャスターや取材記者が「政府は事件のことよりも選挙を気にしているのでは」「大きな事件と認めたくないという冷たい印象」「なぜこの事件が起きたかを考えるべき」と言及するなど、政府の対応に批判的な見方だった。コメントを求められた後藤氏も、最初は「政府は早急にアメリカ政府に対して厳重抗議をするべき」ともっともなことを述べていたが、しかし、コメントの最後にはこんなことを言い出した。

「必ず明日の朝から大きな怒りの炎が沖縄全土に広がるんではないか。となると、あらためて沖縄の怒りが日本外交、政府の政治全体を大きく揺さぶると。その前に政府は果敢に動くことが、とても大切なことだと思うんですね」

 外交や政治問題に波及する前に政府は「果敢に」動くべき。これだけだと前半のコメントから考えて、アメリカに対して強く出ろと言っているようにも聞こえる。だが、このあと番組中に岸田文雄外相とケネディ駐日米大使の会談が開かれるという速報が入ったとき、ついに後藤氏は本性を露わにした。

「政府はやっぱり早く初動しようということだと思うんですね。この問題を封じるということだと思うんですね」

 後藤氏が「政府は果敢に動くことが大切」と述べていたことの真意は「問題を封じる」こと、つまり事件への怒りの声が沖縄で広がり、外交や政治問題へと発展する前に、政府は事件を「封じ」るべきと述べたのだ。

 ひとりの女性が亡くなっているこの重大な問題を、なかったことにするべき──。これはもはや「暴言」と言ってもいいコメントだ。

 後藤氏は先月も、国際NGO「国境なき記者団」が発表した「報道の自由度」ランキングで日本が72位という過去最低の順位となったニュースの際も、「ちょっとこの数字については我々、実感があまりないんですけどね」ととぼけた顔で言い放って視聴者を唖然とさせたばかりだが、今回の発言といい、まるでその立ち位置はさながら"安倍政権に黙従し、政権の不都合はテレビで火消しに回る実働隊"だ。そうでなければ「問題を封じる」などという政権内部の人間であるかのような言葉は出てこないだろう。

 しかし、後藤氏のこうした"本性"は、昔から政治記者のあいだでは有名なものだ。というのも、じつはこの後藤氏こそ共同通信社の政治部長時代、不都合な報道を「封じ」た過去があるからだ。

 時は遡って2003年、当時、自民党総裁選で小泉純一郎が再選を果たしたが、この総裁選の直前に、共同通信は自民党の重鎮・野中広務氏にかんする疑惑を追及していた。それは野中広務氏の元秘書に世間を騒がせたニチメン手形詐欺事件の被告から5000万円がわたっていた、という疑惑だ。

 しかも、じつは共同通信はさらに野中事務所がゼネコンと一緒に立体駐車場利権に関与していた疑惑も取材していた。当初、共同通信はすでに野中氏に疑惑を直撃しており、総裁選前にキャンペーンを張る態勢だったという。

 ところが、これに政治部長の後藤氏が横槍を入れてきて、記事は結局、お蔵入りになってしまったのだという。
 
 じつは、後藤氏は長きにわたって竹下登や野中広務といった経世会議員の番記者を務めていた。なかでも野中とは昵懇の仲で、1999年に出版された野中の著書『私は闘う』(文春文庫)では解説を担当しているほど。ようするに後藤氏は、親密な関係の政治家に成り代わって部下たちが掴んだスクープを「封じ」てしまったのだ。

 しかも、野中氏や経世会と親しかったはずの後藤氏はこのところ、安倍首相と急接近している。今年1月や昨年5月にも安倍首相と会食に繰り出しており、こうした馴れ合いの番記者体質を、今度は安倍官邸に対して発揮しているようなのだ。事実、アベノミクスの失敗はあきらかなのに、いまだに「財政出動がアベノミクスの再活性化にもつながる」(5月5日放送)とエールを送る始末だ。

 今回の後藤氏の発言は、視聴者ではなく官邸の視点に立つというコメンテーター失格のものであり、同時に、沖縄県民の思いを踏みにじるものだ。『報ステ』は後藤氏の存在を官邸圧力の防波堤にしているのかもしれないが、そんなことでは報道への信頼は得られない。電波を使って政権を擁護して媚びを売るコメンテーターなど、一刻も早く降板させるべきだろう。
(田部祥太)