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○今後の展開

グローブ、バレット、そしてバレットの秘蔵っ子であったポール・オッテリー二と言う歴代のCEOを継いだ現在のCEOのクルザニッチの発表によると、今までのインテルのモバイル戦略の失敗を認めたうえで、下記の3つの分野に注力するとしている。

1. IoT (Internet of Things)
2. 3D NAND フラッシュメモリ
3. 10ナノメータークラスの微細加工(ムーアの法則の延長)

クルニザッチの最近の発表ではPC、サーバーという言葉は全く登場しないのだという。現在のビジネスのほぼ100%を担っている市場の話を敢えて公の場で話さないというのは、インテルらしいとは思うが、私は往年のライバル企業の一員として何か釈然としない感じがする。と言うのも、これからのインテルの行く末に大きく懸念を抱いているからだ。これらのクルニザッキが述べている戦略に沿って私の独断的コメントをさせていただく。

1. IoT
IoTのハードウェアの代表格はセンサーである。IoTセンサーの推進団体でT-Sensorと言うのが有名だが、彼らが言うTとはTrillionのTである。日本語にすれば1兆個。私は彼らのプレゼンを何回も見たが、年間1兆個のセンサーが出荷されるIoTの世界ではハードウェア(半導体ベースのセンサーチップとしての)の値段はほぼ10円(10セント)である。今まで1個100ドルの半導体チップを生産して巨額なもうけを出してきたインテルのコスト構造が、この世界に通用するだろうか?

2. 3Dフラッシュメモリ
これこそ一旦技術が確立されればあっという間に値段勝負になってしまうコモディティー製品の代名詞である。インテルは嘗てその市場をあっさり捨て、マイクロプロセッサにシフトするという大きな博打を打って大成功した会社である。そこに戻っていくことの勝算はあるのだろうか?

3. 10nm - ムーアの法則の推進
ムーアの法則の終焉と言うのはこの業界にいる人であればこの5年くらい度々聞いてきた問題である。微細技術が分子レベルまで極まってしまった今、これをさらに極め続けることができるのだろうか? これはインテルだけの問題ではなくて、半導体業界全体の大きな問題なのである。

もうすでに引退して、向正面にどっかと座る解説者が心配するような問題ではないのは承知だが、やはり気になってしまうのである。先日亡くなったアンディー・グローブが生きていたら何をしていただろう? トリニティー(三位一体)の唯一の存命者ゴードン・ムーアは今何を感じている? あるいは、インテルの創始者ロバート・ノイスは天国で今のインテルを見て何を感じているだろう?

大横綱の背後では、真剣勝負の末敗れ去っていった数々の力士たちの英霊が、インテルのこれからを固唾を飲んで見ているはずだ。どうしたインテル?! 以前いつもそうだったように、不屈の闘志と、他を寄せ付けないインテリジェンス(インテルの社名の語源)、そして偏執狂的な強靭さでもってこの難関を突破してくれ!! もしかすると、"そのプランはすでに十年前からできていて、着々と進められているから心配ご無用!!"と言うのかもしれないが、かつてAMDでインテルとの戦いに明け暮れていた身としては今の姿にはどうしても物足りなさを覚えるのである。

著者プロフィール
吉川明日論(よしかわあすろん)
1956年生まれ。いくつかの仕事を経た後、1986年AMD(Advanced Micro Device)日本支社入社。マーケティング、営業の仕事を経験。AMDでの経験は24年。現在も半導体業界で勤務。
・連載「巨人Intelに挑め!」記事一覧へ

(吉川明日論)