3月下旬に開幕したインディカー・シリーズは、足早にシーズンを進めている。広大なアメリカ大陸を東南部、西海岸、深南部と転戦した後、インディカーのふるさとである中西部のインディアナ州インディアナポリスへ。第5戦グランプリ・オブ・インディアナポリス(インディGP)が5月第2週の週末に開催された。舞台はF1グランプリを2000年から8回開催したインディアナポリス・モーター・スピードウェイ内のロードコースだ。

 5月のアメリカといえば、月末に行なわれる世界最大のレース、インディ500がある。しかも、今年は記念すべき第100回目の開催とあり、注目度は非常に高まっている。インディ500決勝の指定席=約25万席が完売! その週末のインディナポリスはホテルも満室。スピードウェイ横のキャンプ場でさえ、もう予約でいっぱいだ。レースには30万人以上が押し寄せることだろう。

 インディGPは、インディ500へと雰囲気を盛り上げていく効果も狙って、3年前に始まった。ほぼ1ヵ月にわたってプラクティス、予選、レース、関連する様々なイベントが繰り広げられるインディアナポリスは、まさにインディカー一色に染まる。

 今年もレギュラーシーズンを戦っているのは21台だというのに、インディGPには25台が出場した。"インディ・ダブル"といって、インディ500にスポット参戦するドライバーが、マシンに慣れ、チームとの交流を深めるためにインディGPにも出場するケースが増えてきている。注目度が高いので、スポンサーも獲得しやすい。

 気温が摂氏10度以下という異常気象下での第5戦。勝ったのはシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)だった。これでロングビーチからの3連勝。2位にはチームメイトのエリオ・カストロネベスが入り、3位はホンダ勢最上位のジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)だった。

 表彰台に上った3人は、それぞれが感慨にひたっていた。パジェノーは初タイトルへ大きく近づき(昨年のチャンピオンは年間3勝だった)、ベテランのカストロネベスは史上最多に並ぶインディ500での4勝目に向けていい流れを引き寄せた。そして昨年のインディ500で瀕死の重傷を負ったヒンチクリフは、久々のトップ3フィニッシュで自信をあらためて手に入れた。

 佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)は、インディGPではマシン・セッティングがまったく思うようにいかなかった。予選は22位。車両規定違反が2台あったので20番手スタートに繰り上がったが、レースで得られたのは18位という厳しい結果で、ポイント・ランキングは11番手に落ちてしまった。

 インディGPの決勝は土曜日で、明けた日曜はお休み。しかし、月曜からは早くもインディ500のプラクティスが始まった(いずれも現地時間)。

 こちらには33台がエントリーし、走行初日から全員が走り込みをスタートさせた。正午から2時間はルーキー・テスト。午後2時から夕方6時は出場経験者たちにもコースが開放された。

 金曜日までの5日間は、毎日正午から夕方6時まで、出場者たちに6時間ものプラクティス時間が与えられる。時速350km/hを超すハイスピードで接近したまま連続周回を行なうインディ500を戦うためには、空力もサスペンションも、気温、湿度、風向きなどのちょっとした気象の変化にも対応できるようマシンをファインチューニングする必要があり、多くの走行時間が必要なのだ。

 予選は21日(土)と22日(日)の2日間にわたって開催される。そして翌週は、ほとんど走行はなし。クルーたちは細心の注意を払って入念にマシンを組み上げる。決勝前のファイナル・プラクティスは金曜日に行なわれ、土曜日はインディアナポリス中心部でドライバー全員が出席して盛大なパレートが開催される。雰囲気がおおいに盛り上がったところで、500マイルの長いレースにグリーンフラッグは振り下ろされる。

 佐藤琢磨はインディ500を得意としている。2012年には最終ラップを2位で迎え、ターン1でダリオ・フランキッティにアタック! しかし、ラインを封じられてスピン、クラッシュした。しかし、そのファイターぶりを評価して、インディ500最多の4勝を挙げている伝説のドライバー、AJ・フォイトが彼のチームで琢磨を起用することになったのだ。

 そして今年、琢磨はフォイトでの4シーズン目を戦っている。今年のインディ500でも、本命でこそないが、優勝候補のひとりに数えられている。果たして第100回インディ500のウィナーとなり、ビクトリー・レーンで伝統のミルクを味わうのは誰になるだろうか。

天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano