志村真介代表
 ドイツ生まれのユニークな人材研修が人気を集めている。その名も「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」。

 トヨタや清水建設、東京海上日動、みずほ証券などここ数年で500以上もの企業・団体に導入され、利用数は毎年約2割増しというほど急速に伸びているという。

 一体どんな研修なのか、そしてその真価とは? ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン代表・志村真介氏に話を伺った。

◆ドイツ生まれの「暗闇」で行う研修

 各企業との具体的なアプローチにふれる前に、そもそも、ダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下、DID)の研修内容を説明してもらおう。

「1988年にドイツで生まれ、これまで世界39か国で開催されています。その内容自体はシンプルで、照度ゼロの真っ暗闇で、チームのメンバーで共同作業をするというもの。さらに『アテンド』と呼ばれる視覚障がい者のスタッフが案内役としてつきます」

 照度ゼロは、自分の手さえ視認できない漆黒の暗闇。そして、照度ゼロの空間では、何時間たっても“暗闇に目が慣れる”ことはないため、最後まで視覚を使わずに研修を進めることになる。

 人間の五感のうち、視覚情報は約9割を占めているという話もあるが……。この視覚を遮断することで、いったいどのような効果を生むのか?

◆暗闇がフラットな関係を生み出す

「コンセプトの根幹は、『ダイアログ』=対話です。視覚情報に頼れない状態では、いつもの行動様式は通用しません。健常者は『アテンド』や他の参加者の助けなしには行動できず、お互いに助け合う必要性もでてきます(その方法も、暗闇に合わせて新たに体得しなければなりません)。つまり、暗闇は価値観や発想の転換を促す非日常的な空間であり、それゆえに従来の人間関係を脱したフラットなコミュニケーションを促進するというわけです」

 このため、社内のチームワーク醸成に活用される例が目立つという。

「たとえば、開発部・営業部・広報部といった別々に動いている部署、これらをつなぐために研修をすることがあります。また、部署異動後や合併した企業では古参と新参の社員に溝が生まれがちですが、こうしたメンバーでの研修も多いですね」

 もともと、日本ではエンタテインメント・イベントとしてスタートしたそうだが、これが企業研修として効果的ということで評判になり、利用団体が増えていった。

「特に研修の営業マンがいるわけではなく、口コミ的に広がっていったという状態ですね。これまでメディアで見かけた人事部の方からお問い合わせを頂いたり、たまたま、経営者の集まりで体験していただく機会があったのも幸運でした。経営的には『平日昼間の稼働率を上げなければ!』という悩みに直面していたので、非常にタイムリーなシフトでしたね」

 現在はエンタテインメント・イベントと企業研修ともに実地しており、いずれも盛況だ。

◆暗闇の共同作業で呼び覚まされるイノベーション

 DIDの成果を2つのキーワードで表すなら、ひとつは先に説明した「チームワーク」。そして、もうひとつは「イノベーション」だろう。

 研修内容は、企業や目的ごとにカスタマイズされているのだが、その内容は興味深い。
 たとえば某ドリンクメーカーでは、暗闇で自社製品と競合製品を飲み比べた(視覚情報がない飲み比べでは、赤ワインと白ワインを取り違えることも珍しくないとか!)。

 あるいはインフラ系の企業では、二人でチームを組んで、一人は目隠しされ、もう一人が先導役となって、街中を視覚障がい者の立場になって白杖を使いながら、最寄りの駅から会場まで歩いてくるセッションもあるという。

「自分の扱う製品・対象に、視覚を排除してアプローチすることで、新たな気づきを獲得することを狙っています。実際、視覚障がい者の感性を商品開発に取り込むことで、企業の開発力は上がると考えています」