専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第55回

 せんだって、マスターズの試合を見ながら、ジョーダン・スピース(22歳/アメリカ)もアマチュア並みのダフりをやらかすんだなぁ、としみじみ思いました。

 それはさておき、マスターズを見て思ったのは、日本にも本格的な"チャンピオンコース"がないものか、と。欧米人は、常日頃から難易度の高いコースでプレーしているから鍛えられるんだ、と。

 現在、米ツアーでは松山英樹選手(24歳)が孤軍奮闘しておりますが、将来的には松山選手クラスの選手を10人くらい育成しないと、日本は世界のゴルフ大国ビッグ3(※)のポジションを保てないのではないか、つくづくそう思ったのです。
※ゴルフ場の数は、アメリカ、イギリス、日本が世界の「ビッグ3」となっている。

 そのためにも、コース造りは大事です。まずもって、全長7400ヤードクラスで、池やクリークに囲まれた戦略的なトーナメントコースを作らねば、と思います。つまり、優秀な人材を国際規格のコースで日頃からラウンドさせないと、メジャー優勝は難しい、と思うわけです。

 もちろん、日本にも国際規格のコースはありますが、世界ではさほど有名じゃありません。そもそも、『世界ゴルフ場ランキング100』みたいなものに登場する日本のコースは、廣野ゴルフ倶楽部(兵庫県)と川奈ホテルゴルフコース(静岡県)ぐらい。そして、いずれもチャールズ・アリソン(イギリス)設計のコースで、日本人の設計家によるコースは、たまに下のランクで見かける程度です。

 日本人設計家による昔のコースは、いかんせん距離が短い。ただこれは、仕方のないことです。IP(インタークロスセクション・ポイント)という第1打の落下地点を、バックティーからでも240〜260ヤードぐらいで設計していた時代ですから。300ヤードヒッターには、当然物足りないでしょう。

 1934年に開場したオーガスタ・ナショナルGCがいまだ現役なのは、ときどき改造・改修して距離を伸ばし(現在7435ヤード)、ロングヒッター対策を念入りにやっているからです。

 また、オーガスタ・ナショナルGCには、最近になってセミラフとなるファーストカットをこしらえましたが、もともとラフはありませんでした。その代わり、ハザードを効かせて、グリーンを速くし、距離を長めにとるなどして、難易度を高めるコンセプトにしているのです。

 何にせよ、年に1回の試合のために造られたコースですから、実に手入れが行き届いています。贅沢っちゃ、贅沢ですよね。

 そこで、今回のテーマです。ゴルフ場とはいったい誰のためのものか、というお話です。

 年1回のトーナメントのために入念に整備しているオーガスタ・ナショナルGCをはじめ、今やアメリカの場合、プロの試合の開催を前提としたゴルフ場が多いかもしれません。

 一方、日本の場合はどうか。大改造してビッグトーナメントを開催したとしても、(練習ラウンドを含めて)使うのはトーナメント開催期間前後の1、2週間程度ですよね。残り50週か51週は、アマチュアに開放せざるを得ないわけで、たった52分の1のために"チャンピオンコース"を造るのはどうか、という考えがあります。

 トーナメントの開催はゴルフ場やコースのいい宣伝になりますが、ゴルフ場側にもチケットを割り当てられたりして、案外儲からないみたいですよ。しかも"チャンピオンコース"を使用する男子トーナメントの人気がイマイチです。だから今、本格的な"チャンピオンコース"を造る気運は盛り上がらない。その結果、強い選手が育たない、という悪循環に陥っているのです。

 確かに既成のコースで、井上誠一や上田治などの名匠が造ったコースを改造・改修して、"チャンピオンコース"にするという手もあります。しかし、古い名門コースはメンバーの意識が高く、「プロの試合に特別に貸してやる」という考えが主流です。

 実は、こんな逸話があります。

「なんで、プロの試合のために改造しなきゃならないの。うちはこのままで十分難しいから」と、お高くとまっていた某名門コースが、試しにメジャートーナメントを開催したそうです。そうしたら、トップに20アンダー以上を出されて大恥をかいて(要は簡単なコースだったということ)、「二度と試合には貸し出さない」と、捨て台詞を吐いたとか。そんな状況では、改造・改修はちょっと難しいですね......。

 または、TPCソーグラス(フロリダ州。※17番パー3のアイランドグリーンが名物)の設計者としても有名なピート・ダイ(アメリカ)とか、「戦略型コース設計の父」と言われるロバート・トレント・ジョーンズ親子(アメリカ)らが設計したコースが日本にもあるので、それを改造して使うという方法もあります。

 ただし、それらのコースは造った時期がバブルの頃で、今では経営者が替わっていたり、集客のためにコースを簡単にしたりと、紆余曲折を経ているコースがほとんどです。国際的なトーナメントのために改造・改修するなんて、そんな余裕はないでしょう。

 結局のところ、日本のゴルフトーナメントは、松や杉に囲まれた日本庭園的な林間コースを使って、がんばるしかないのです。言い換えれば、日本ではあくまでも52週分の51週が大事なのだと思います。

 そうした現状から、腕に自信のある男子プロ、あるいは将来世界で戦える選手を育成するには、早々に海外に行って、武者修行してもらったほうがいいのかもしれないですね。

 ともあれ、日本のアマチュアのための名門コースは、距離をさほど必要としない女子プロの試合にはピッタリはまります。というわけで、女子の試合の盛況はしばらく続きそうです。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa