成分にも注意が必要だ

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ここ数年、デング熱やジカ熱など蚊を媒介する感染症への懸念から、虫よけ対策の必要性は高まっている。とくに抵抗力の弱い乳幼児は心配だが、大人と同じ虫よけ剤を使ってもいいものかどうか、迷うところだ。

6か月未満の赤ちゃんにはNG

5月11日にアース製薬が発表した『アース蚊の飛び始め予報 2016年第3報』によると、東京から西の主要都市では5月上旬からすでにヒトスジシマカが飛び始めている。新潟や仙台では5月下旬、都市部ではもっとも遅い盛岡や秋田でも6月上旬には蚊が襲来すると予測されている。これからの季節、子連れで公園などに行くと、蚊の餌食になる可能性が高いのでしっかりと対策をして出かけたい。

しかし、肌に直接つける虫よけ剤を子どもに使用する場合は、注意が必要だ。スプレーやミスト、ジェル、ティッシュなどさまざまなタイプが市販されているが、その多くに「ディート」という成分が含まれている。

ディートは殺虫剤ではなく、「忌避剤」だ。ディートに接した蚊は、触角にある毛穴をふさがれ、人間が発する炭酸ガスを感知できなくなる。そのため、近寄っても人間だと認識できない。血を吸われずにお引き取り願えるというわけだ。蚊だけでなく、ダニやブヨ、アブなど人間が発する炭酸ガスに寄ってくる虫すべてに効果がある。

一般には毒性が低いとされ、国内ではこれまでに深刻な副作用の報告はない。しかし、米国やカナダではまれに、けいれんなど神経系に影響を及ぼしたケースが報告されたため、安全性についての再評価が行われ、カナダでは2002年以降、とくに子どもへの使用に制限が設けられた。

日本では、ディートの濃度の上限は12%までと定められている。年齢による用法・用量の目安はカナダの基準を参考に、「6か月未満の乳児には使用しないこと」「6か月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日1〜3回」とされている。また、虫よけの注意書きには「漫然とした使用をさけ、蚊、ブヨなどが多い戸外での使用など、必要な場合にのみ使用すること」と記載されている。

正しく使えばこわくない

生後半年を過ぎれば大人と同じ蚊よけを使って問題ないが、1日1回塗るだけで、効果はどの程度あるのだろうか。

効果の持続時間は、ディートの濃度に比例する。たとえば、アース製薬の代表的な蚊よけスプレー「サラテクト 無香料」のディート濃度は10%で、効果の持続時間はおよそ10時間。同じスプレータイプでもディート濃度12%の医薬品は12時間持続する。また、濃度6%のミストタイプは8時間、5%のジェルタイプは6時間。ティッシュタイプは7%だが、皮膚に付着する量が少ないためか、持続時間は3時間と比較的短い。

当然、汗をかいたり、こすったりすると効果は薄れるし、紫外線の当たり具合によっても持続時間は短くなるが、公園に遊びに行く程度なら、出かける前に1回塗れば十分だろう。

子どもの肌に塗るときは、露出している部分にのみ塗り、衣服の下には塗らない(衣類につけるのはOK)、手や顔、粘膜、傷口は避ける、エアゾールタイプのものは付着効率が悪く、吸い込んでしまう危険もあるので、いったん大人の手のひらに出してから子どもの肌に塗るといった点に注意しよう。

ディートによる副作用の事例は、高濃度のディートを大量に、あるいは長期間使用し続けたり、誤飲したりといったケースがほとんど。年齢にあった用法・用量をきちんと守って使えば心配はない。ただし、肌の弱い子どもはかぶれなどを起こす可能性もある。異常が見られたら、すぐに皮膚科を受診しよう。

6か月未満の赤ちゃん向けには、ハーブなどの天然成分由来でディートフリーの虫よけや、衣服に貼るシールタイプのもの、ベビーカーに吊るす虫よけなども市販されている。また、長袖、長ズボンで皮膚の露出を少なくする、ベビーカーに虫よけカバーをかける、蚊が多い時間帯の外出を避けるなども有効だ。自衛手段を持たない小さな子どもを感染症の脅威から守るためには、保護者がしっかりと対策を講じよう。[監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]

(Aging Style)