写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●IoTにまつわる"発明"をした面々が集結
幕張メッセで開催されたニコニコ超会議のドワンゴ超自由研究ステージにて、「超IoT発明研究会」と題した座談会が開催された。パネリストは岩佐琢磨氏(Cerevo代表取締役)、八谷和彦氏(東京芸術大学美術学部准教授、メディアアーティスト)、田中邦裕氏(さくらインターネット代表取締役社長)の3名。司会はUEI代表取締役社長・清水亮氏が務めた。

IoTとはInternet of Thingsの略称であり、様々な物がインターネットに接続することを意味している。昨今、IoTはあらゆる分野で耳にするバズワードとなったが、どこか曖昧でふわりとした印象しか持てないという人も多いのではないだろうか。実際にIoTは我々の生活をどう変えるのか。

座談会に集まった3名は、それぞれまったく違う分野で活躍する実業家、あるいはアーティストである。彼らの共通点は一つ、IoTに関する「発明」で世間を賑わせていることだ。

たとえばCerevoはアニメ「PSYCHO-PASS(サイコパス)」に登場するデジタル銃「ドミネーター」を実際に開発し、発売した。単なるおもちゃではなく、アニメと同じように変形し、さらにWi-Fiでスマートフォンと接続してアプリと連携できる。その完成度は異常なまでに高い。もともとCerevoはニッチなマーケットをターゲットにしたハードウェアベンチャーで、これまでにもロボットプロジェクターやIoT開発モジュールなど意欲的な製品を次々に送り出している。

一方、田中邦裕氏が創業したさくらインターネットはインターネットデータセンター事業を主軸にする企業だが、今年に入って新サービス「さくらのIoT Platform」を発表。通信環境とデータの保存や処理システムを一体型で提供し、IoT関連のスタートアップを支援している。

最後に八谷和彦氏はメディアアーティストとして様々なアートを制作。代表作には人が乗って空を飛べる飛行具"メーヴェ"があるが、それ以外にもメールソフト「ポストペット」の開発でも知られており、IoTの先駆者的存在でもある。

○発明とは何か

3者に共通しているのは、様々な製品を「発明」していることだ。では「発明」とは何だろうか。

Crevoの岩佐氏は「隙間を埋めること」と回答する。

「ハードウェアの隙間っていっぱいある。それを発明することで、どんどんオセロが埋まっていくみたいな感じ」(岩佐氏)

八谷氏は「妄想を現実化すること」が発明だという。それも単に作るだけでなく、たとえばメーヴェなら空を飛ばないとダメなのだそう。ちゃんとした機能を持ったもので実現化することが、妄想を現実化するということなのだ。もっとも、そうした発明はお金にはならない。それでも「売れるかどうかを考えるとやれなくなることがいっぱいある。それはとりあえずおいといてやってみるのが発明」(八谷氏)

この八谷氏の言に岩佐氏は、「今はネット上のコミュニティができて、特定の趣味嗜好の人たちとコミュニケーションをとれるようになった」とコメント。SNSなどの発展により、ニッチなクラスタ向けの製品を作っても情報が届くため、採算がとれるようになったという。

今もバックオーダーを抱えているというドミネーターについて、岩佐氏は「僕はドミネーターを作ったときから確実に黒字化できると思っていた。昔は請負仕事などで稼いだお金で作るしかなかったが、今はいかれたメーカーがいかれたものづくりをできるようになった」と力説。

その後、ロボットのタチコマを初お披露目し、実際に音声入力で操作して会場をわかせていた。

●「クレイジーなもの」を作る人が評価される時代
○IoTは世の中をどう変えるのか

ここ数年、盛り上がりを見せているIoTだが、司会の清水氏は「IoTというと予算がつくと聞くが、そもそもIoTはどうやって世の中を変えるのか?」と疑問を呈する。AIやVRにくらべて、IoTだけ具体的な形が見えにくいというのだ。

これに対して田中氏は「IoTとAI、ロボットに共通するのは、リアルな世界とコンピューティングをつなぐインターフェースであること」とコメント。同氏が代表取締役社長を務めるさくらインターネットにおいても、以前のようにPVと売り上げが直結する構造からコンピュータやAIの行動が売り上げにつながるビジネスに変化しつつあると述べ、将棋AIポナンザがさくらインターネットのサーバを使っていたことを事例として挙げた。

その一方で、「普通の人には(IoTが普及しても)何も変わらない」と述べるのが岩佐氏だ。氏は「もうすでにほとんどの人は生活を支えているテクノロジーを理解していない」と分析し、IoTも今後は生活の裏に隠れていく存在になるだろうと予測。その上で具体的なIoTの活用法として「キーワードは自動化」と述べた。

岩佐氏の意見に同意するのが八谷氏だ。ニコニコ超会議を歩いた八谷氏は「皆さんが超会議を楽しんでいるのにIoTはあまり関係ないように見える」と述べ、「車や個人用の飛行機、ドローンのような乗り物には大きな影響を与えると思うが、表面上はIoTは(一般の生活に)関係してこないのかも」と予測する。「一般の人の生活に影響を与えるのは自動運転車くらい」と述べる八谷氏に清水氏からは「メディアアートにIoTを取り入れたら面白いのでは?」という質問が飛び出したが、「(私は)あまりそういうタイプではなくて、枯れた技術の水平思考の方が好き。最先端のことをやっていると5年後には追い越されるから」と技術偏重を危惧している様子だった。

○クレイジーなものを作る人が評価される時代になった

今後、さらにニーズが高まりを見せると思われるIoT関連分野。そこに入っていこうとする研究者に向けて、登壇者からエールが送られた。

岩佐氏は「もっとものを作る人が増えてほしい」とコメント。ただし、「既存の組織ではいかれたものはなかなか作らせてもらえない」と述べ、自らが起業したのはそういったクレイジーな発明を世に出したかったからだと明かした。

また、昔に比べると今はそういった「ぶっ飛んだ発想」にも資金を出してくれる人が格段に増えたといい、「いかれたものを作る人が評価される時代になった」と熱く語った。

そんな岩佐氏に「でもCrevoでは社員は起業していないけどクレイジーな製品を作れているのでは」と軽くツッコミを入れて笑いを誘うのが田中氏。「IoTやAIが生活を変えるのかはわからないけど、相手が人間じゃなくなるかもしれない今後の10年をどう暮らすのかは重要」と述べた。

最後に八谷氏は、「自分で会社をやっていなかったらメーヴェは作れなかった。本当にやりたいことをやるために最終的には起業するしかない」と起業を後押しするコメントで座談会を締めくくった。

(山田井ユウキ)