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1〜3月期にAppleのiPhoneの販売台数が初めて前年同月比で下落した。「スクリーンの大型化」という切り札を使った一昨年のiPhone 6シリーズがiPhone史上最大の売れ行きだった影響もあるが、iPhone 6シリーズ成功の反動ばかりが原因ではない。iPhoneだけではなく、スマートフォン市場全体が減速し始めているからだ。Andreessen HorowitzのBenedict Evans氏に言わせると、これは「モバイルの波の終焉」の始まりである。

世界の携帯産業には、これまでに2つの波が起こっている。1つは90年台後半に起こり始めた一般向けの携帯電話の普及。日本のガラケーはそこで目覚ましい進化を遂げたが、音声とSMSにとどまっていた世界の携帯には2000年台半ば過ぎにブレーキがかかり始めた。そんな停滞感をスマートフォンが打ち破った。モバイルでWebを利用でき、アプリで様々な機能やサービスを可能にするスマートフォンによって、コンピューティング市場やデジカメ市場も取り込みながら携帯は成長を続けた。その結果、下のグラフ(年間販売台数)の点線のようにモバイルの波は90年台後半から10年に及ぶ大波になった。

しかし、永遠に成長を加速させ続けるものはない。いつかは終わりを迎える。現時点では2020年までに50億人がスマートフォンを使用するようになると予想されている。世界人口全体の66%、成人に限れば8割以上になる。1人に1台、それは携帯電話の理想だが、言い換えると”飽和状態”である。そんな成長の終わりが見えてきた。

今の話に戻すと、携帯電話の販売には新規ユーザーの獲得と買い替えの2つがあるが、携帯の年間販売台数が19億台を超えてアクティブ台数の伸びが鈍り始めた。また、ハードウエアが成熟してきたスマートフォンが以前ほど短い期間で機種変更が行われなくなり、買い替え期間が伸びる傾向にある。売上高の面でも、以前はスマートフォンの平均販売価格がフィーチャーフォンを大きく上回っていたため、スマートフォンへの移行が携帯市場の売上を拡大したが、今ではフィーチャーフォンと変わらない価格のスマートフォンが増えており、売上高の伸びも鈍っている。

成長から成熟へ。それに伴って2015年に兆候が見られた減速が、2016年の第1四半期にははっきりと数字に現れ始めた。IDCが4月27日に発表した世界のスマートフォン市場に関する調査によると、今年1〜3月期の出荷台数の伸びはわずか0.2%増(前年同期比)。同社の調査で過去最低の伸びである。また、トップ5メーカーの顔ぶれが大きく変わった。XiaomiやLenovoが消え、OPPOやvivoといった新興メーカーがトップ5入りした。スマートフォンのコモディティ化の影響が読み取れる。

3月期決算発表からAppleの株価は下降線をたどっているが、「モバイルの波の終焉」を嘆く必要はない。世界的な飽和が見えてきた携帯電話の減速は予測の範囲であり、それよりも10年に及ぶ大波がもたらしたチャンスに目を向けるべきである。1つは数々のセンサーを備えたデバイスを世界中の人々が1台ずつ持つということ。そして買い換え期間が延びているとはいえ、多くの人が2〜3年のペースでスマートフォンを買い換えている。そんな大きな可能性を秘めたパーソナルデバイスが誕生したのだ。

少し前にApple CEOのTim Cook氏がCNBCのインタビューで次期iPhoneについて「今は必要性に気づいていないけど、それなしでは生活できなくなるようなものを提供する」と述べたのが話題になった。次期iPhoneが本当に、そんなインパクトのある製品になるのかは分からないが、1人1台に迫り、定期的に買い換えられるスマートフォンは、これからも社会を変えるデバイスになり得る。今年のWWDCやGoogle I/Oでは、パーソナルデバイスの普及で切り開かれる未来が示されると期待したい。

(Yoichi Yamashita)