日本の家電製品はかつて世界を席巻したが、今や優位性がなくなり、大手メーカーが逆風下にある。機能や品質面で大差がなくなる「コモディティ化」の影響を受けた格好で、中華圏企業が「救世主」となる傾向が強まっている。写真は東京都内の家電量販店液晶テレビ売り場。

写真拡大

日本の家電製品は1980年代から90年代にかけ世界を席巻したが、今や優位性がなくなり、大手メーカーが苦境に立たされている。機能や品質面で大差のない製品が多く流通し、消費者にとってどのブランドでも同じ状態になる「コモディティ化」の波をもろにかぶった格好だ。

【その他の写真】

100年以上の伝統がある大手家電シャープもその一つ。2000年代後半に液晶パネル事業に巨額の投資を行ったが、競争激化と価格下落で業績が落ち込み、12、13年度に合計9千億円の連結最終赤字を計上。大規模リストラで13年度は黒字に戻したが、再建の柱に位置付けた中小型液晶パネル事業が販売不振に陥り、14年度に再び2223億円の最終赤字に転落した。16年3月期連結決算は、主要5部門のうち、複写機と電子部品を除く3部門が赤字で、特に屋台骨のスマートフォン向けなどの液晶パネル部門が1291億円の営業赤字に転落した。

◆大規模な追加リストラも

シャープは15年9月に3千人以上の希望退職を再び実施するなどリストラに取り組みながら支援先企業を模索。台湾電子機器製造大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が3888億円を出資し、全株式の66%を握ることで今年4月に合意した。

シャープの新経営体制には鴻海の郭台銘会長の意向が反映され、社長に腹心の戴正呉氏が就任することになった。剛腕カリスマの郭会長は再建シナリオを速やかに実行して改革を進めることを最優先。堺市への本社移転や東京の拠点の一部移転なども矢継ぎ早に打ち出した。スピードとコスト重視の「鴻海流」経営が加速しそうだ。

今後、経営再建の前提となる大規模な追加リストラの実施は必至で、3千人以上の人員削減が行われる可能性もある。シャープに求められるのは成長よりもまず再生だが、大規模な人員削減を再び実施すれば、社員の士気の低下や優秀な人材の流出に拍車がかかりかねず、難しいかじ取りが迫られる。

シャープは今後、スマホだけでなく、タブレットや自動車向けなど中小型向けパネルを強化する方針。鴻海精密工業の世界的な販路の活用や共同部材調達などの相乗効果も見込んでいる。ただ、パネル主力納入先のアップルは減産を継続しており、大きなアップル依存が先行きに暗い影を投げかけている。米アップルの生産調整でスマホ向け市場が回復する兆しは見通せず、再建への道のりは容易ではない。

◆高まる中国勢のプレゼンス

電機では名門企業の東芝も経営不振にあえぎ、16年3月期連結決算営業損益が7191億円の赤字となった。1年前に発覚した会計不祥事で脆弱な収益体質があらわになり、人員削減や事業再構築など大規模リストラで費用がかさんだ。

医療機器分野で最先端技術を持つ医療子会社東芝メディカルシステムズをキヤノンへ売却し5900億円の売却益を計上した。財務の健全性を示す自己資本比率は3月末で6%弱と2月時点の想定(3%弱)から改善した。

東芝はエネルギー、社会インフラ、半導体の3事業を再建の柱とし、今期はリストラ効果などによる黒字転換を目指し、1200億円の営業利益を見込んでいる。

東芝は洗濯機や冷蔵庫を日本で初めて製造した老舗メーカーだが、これら白物家電部門を中国の美的(ミデア)集団に売却することで合意した。パナソニックの子会社となった三洋電機も海爾集団(ハイアール)に白物家電部門を売却している。パソコン・スマホ分野ではレノボ、華為技術、小米などが世界トップクラスをうかがう勢い。家電・電子機器分野で中国勢のプレゼンスが高まっている。

電子・電機は日本のお家芸。日本の産業をリードしてきた分野で目立つ“変調”。日本経済全体の先行きを左右するだけに早期回復を期待したい。(八牧浩行)