by Kit

IPアドレスは、ある程度は地理情報に基づいて割り当てられているため、「どこからのアクセスなのか」という位置情報を割り出すことが可能です。ところがこの精度はまちまちで、時にはまったく見当外れの位置にピンが表示されることもあります。そのピンが何もない場所を指すだけであれば影響は少ないのですが、運悪く特定の場所を指してしまったことで悲劇が起きています。

Internet mapping turned a remote farm into a digital hell | Fusion

http://fusion.net/story/287592/internet-mapping-glitch-kansas-farm/



問題が起きているのは、ジョイス・テイラー・ニー・ヴォーゲルマンさんが所有する360エーカーの農場。所在地は、カンザス州最大の都市ウィチタから車で1時間のところにある、ポトウィンという小さな町。

農場には2階建ての家と農園、牧草地、古い果樹園、納屋が2軒、豚小屋がいくつかあって、テイラーさんはここを長らく貸し出しているのですが、借りた人のもとにはなぜか、FBI捜査官、連邦裁判所執行官、歳入局の集金人、自殺願望者を探す救急車、行方不明の子どもを探す警察官など、いろいろな人が訪れたそうです。

10年にわたってこの謎の現象が続いているのですが、FusionのKashmir Hill氏とセキュリティ研究者のDave Maynor氏は原因を探り、借りた人が本当に詐欺師やペテン師だったからではなく、IPアドレスのジオロケーション(位置情報)にあることを突き止めました。

IPアドレスからは、場合によっては家単位まで特定することが可能ですが、時には正確に情報を得られず、国単位までしか情報を割り出せないことがあります。マサチューセッツ州に本拠を置くデジタルマッピング会社MixMindでは、その誤差を少しでも埋めるために、IPアドレスで住所が正確に把握できないときのデフォルトを州や都市、郡といった単位で表示するようにしました。

アメリカの場合、国の「ど真ん中」はカンザス州北部、ネブラスカ州との境界近くの「北緯39度50分、西経98度35分」にあり、デジタル地図の場合は「39.8333333、-98.585522」とも表記されます。しかし2002年にMixMindはこの数字を「丸める」ことにして、IPアドレスが「アメリカ合衆国のどこか」だとしかわからなかったときのデフォルト位置を「北緯38度、西経97度(38.0000、-97.0000)」に変更しました。

この変更により、MixMindのIPマッピング情報を使っている5000以上の会社では、本来の位置から2時間ほど離れた場所が「アメリカの中心」として表示されるようになりました。そして、この新しい「アメリカの中心」が、偶然にもテイラーさんの農場の入口にあたる場所だったそうです。

Kshmir Hill氏は以前、スマートフォン紛失時の「探す」機能の結果が特定の家に集まる事例をFusionで取り上げた人物でもあり、「他にも、同じような事例で悩んでいる家があるのではないか」と考え、テイラーさんのところにたどり着いたとのこと。



Hill氏によれば、同じような事例は他にもあり、ヴァージニア州アッシュバーンに住むトニーさんは、近くにデータセンターがあることから、1700万件のIPアドレスの「所在地」として扱われてしまい、4年前から警察が来たりしているそうです。

ちなみにMixMindはこの問題を真摯に受け止めていて、Mapzenという会社が「地名辞典」を作り、MixMindのデータベース改善を進めているところだとのこと。

Missing the Point- GeoIP's, Points, Polygons, and a Precarious Farm in Kansas ・ Mapzen

https://mapzen.com/blog/missing-the-point/