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5月3〜5日、徳島で開催された「マチ★アソビvol.16」内にて4日、「MONACA田中秀和×広川恵一 in マチ★アソビ」が実施され、MONACA所属の作曲家の田中秀和氏と広川恵一氏、司会のDeNA岡村直哉氏が登壇してトークを行った。

4月30日に開催した初ライブ「MONACAフェス2016」の大盛況でも話題となったサウンドクリエイター集団MONACA。それが今回ステージを開催することになったのは、司会岡村氏によると「串カツ屋で、楽しく呑んでいる時に田中さん、広川さんと徳島に行こうかという話になり、ufotableさんに話を伝えたところ、トントン拍子でステージをやることになりました」という説明があった。そんなゆるい雰囲気ではあったが、このステージだけの話も多く、ファンにとっては興味深い内容となっていた。

トークでは、田中氏がMONACAに入社した時のエピソードとして、大学在学中にナムコなどいくつかの会社でサウンドの入社試験を受けたが、内定に至らなかったことを明かし、「僕はデモテープは通るんですが、面接で落とされるんです」と告白。

そんな折、MONACAの神前暁氏(『アイドルマスター』『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』「物語」シリーズなどで知られる作曲家)がmixiでアシスタント募集をしていたため、そこに応募したことがきっかけでMONACAに所属することになったという。田中氏は「神前さんが神戸に来た時に会って、神戸牛を食べさせてもらったのでお世話になることにしました」と、"神戸牛就職"であったことを明かしていた。

好きなアーティストや影響を受けた音楽については、広川氏は「ジャミロクワイに中学生でハマりました。とっつきにくいジャズやフュージョンを大衆向けにしたのがすごいと思ったんです」とコメント。一方の田中氏は「いろいろな人に影響を受けていますが、一番顕著なのは、うちの神前暁の影響です。僕はあまりアニメに詳しくはなかったのが、大学時代に『涼宮ハルヒの憂鬱』で神前さんの音楽を聴いたことがきっかけでこの道に入ったんです。神前さんの特徴のひとつとして、楽曲の作り方がすごくコンセプチュアルなんですね。そういうところに刺激を受けました」と語っていた。

楽曲をどう作るか、詰まった時はどうするかという質問には、広川氏は「仕事なので締切は守るんですが、どうしても出てこない時は寝ます。寝て起きても今日は駄目だとなったら、ビールを飲んじゃったりします(笑)」と会場の笑いを誘う。続けて田中氏が「夢の中で曲作ってる時ない?」と返すと、広川氏は戸惑った表情を浮かべていた。

曲作りについて田中氏は、「実制作の前に曲の構成やコンセプトを練るんですが、その時間が一番大事だと思ってます。作品のロゴやキャラクターのイメージカラーにインスピレーションを受けることもありますね」とコメント。広川氏も「キャラソンを作る時はキャラクタービジュアルをプリントアウトして貼ったりして、キャラクターを頭に置くようにしています」と頷いていた。

若手2人への質問として興味深かったのが、MONACAメンバーはどんな人たち?という質問。現在MONACAでは8人のアーティストが主に楽曲制作に携わっているが、高橋邦幸氏以外は2人から見て先輩に当たる。

2人のMONACAメンバーへの評価を書き出すと、「岡部啓一はうちのボスで、見かけはラガーマンのようでごっついです。僕は丁稚のような形でMONACAに入ったので、作曲家としての振る舞いを含めたいろはを(岡部氏に)厳しくも優しく叩きこまれました(田中)」「(神前暁氏について)僕は最初の1、2年は神前先生のアシスタントをしていて、毎日神前先生の家に通勤してたんです(広川)」「(高田龍一氏について)東京芸大の作曲課で学んだエリートで、一番作曲家っぽい髪型です。ヴァイオリンとヴィオラを弾きます。最近はインドの楽器を習ってます。変わった人です。作る音楽はアカデミックで、音をぶつけた不協和音から生まれるかっこよさと、キャッチーさをうまいバランスで融合させるような、現代音楽的な手法とかは真似ができないです(田中)」「(石濱翔氏は)『アイカツ!』などを担当しています。年齢は僕の1個上ですが、MONACA入りは2年ぐらい早いんです。最初はちょっと怖かったですが、最近は飲みに行ったりします(田中)」「(帆足圭吾氏は)帆足さん? 帆足さんは……語るべきことが多すぎて1時間以上かかりますね(田中)」「(高橋邦幸氏は)北海道出身で、僕らはクニタックと呼んでいます。履歴書を送ってきたメールアドレスがクニタックだったので、初対面からクニタックです(田中)」。

田中氏、広川氏のお互いの印象については、広川氏が「ひと言で言うとズルい。まず天才。名曲が書ける。さらにすごく人に好かれる。なのに裏表がない。ズルい。尊敬する先輩です」と表現。田中氏は「(広川氏は)食レポが下手。あとはトラックメイキングが巧みで、打ちこみで生の楽器っぽさを出したりするのがすごくうまいんです。『Wake Up, Girls!』の「止まらない未来」のブラスは実は打ちこみで作っているんですよ」と実例を交えながら語っていた。

そして話題は、4月30日に行なわれた「MONACAフェス2016」にも及んだ。まずMC岡村氏が「なんで大宮ソニックホール?」と切りこむと、会場からは同意の歓声が起こった。「MONACAフェス」は『アイドルマスター』『シンデレラガールズ』『アイカツ!』『Wake Up, Girls!』が集結して生バンドで歌うスーパーアイドルフェスな側面もあったことから、チケット入手が非常に困難なレアイベントと化していた。そのため「なんでもっと大きな会場でやらないの?」というわけだ。

田中氏によれば「結果だけ見るとあんなにアイドルコンテンツが集まって、たくさんの人に見たいと思っていただけるような大きなイベントになりましたが、最初に決まっていた企画コンセプトはMONACAの楽曲を生演奏でやるぞ、ということだけだったんです。それを見たいと思ってくださる人がどれぐらいいるのか……、初めてということもあり、全くわからなかったので、最初僕らは2000人のキャパでも大きすぎるのでは?と思っていました」とのことだった。

「MONACAフェス」当日のエピソードについて田中氏は、「サプライズで登場した『ハナヤマタ』の楽曲には、元々弦が入っていなかったんです。でもせっかくの生バンド+弦楽隊の編成だったので、弦を入れてアレンジさせてもらいました」と語っていた。広川氏は『アイカツ!』の「ラン・ラン・ドゥ・ラン・ラン!」について、「ライブで盛り上がってほしいという気持ちで作ったので、タオルを回して盛り上がってくれたのはうれしかった」と振り返る。広川氏は「普段、会場にいるとしても客席側の関係者席にいることが多いため、舞台裏を初めて垣間見て、こんなにも多くの人達が忙しく動き回って下さっているんだ……ということに驚いた」と感想を述べた。

最後の質問コーナーでは、「初めて使ったシーケンスソフトは?」という質問があり、田中氏は「小学6年生の時にYAMAHAの『らくらく作曲名人』を買いました」、広川氏は「初めては、野球ゲーム『ワールドスタジアム』の作曲くんモード」と意外な回答が飛び出していた。また「もしまた『MONACAフェス』があったらやりたい曲は?」という質問には、広川氏が「『ハナヤマタ』のNeed Cool Quality(にくきゅう)という劇中バンドの曲を作っているので、ぜひやりたいですね」、田中氏は「今回のフェスでは、スタジオでいつもお世話になっていて、全幅の信頼を置いているミュージシャンの方々に演奏していただいたのですが、次があったら僕らも演奏に参加してみたいですね」と期待の高まるコメントをしていた。

1時間のトークはあっという間に終了。普段はなかなか顔が見えないコンポーザーたちだけに、広川氏の飄々とした人柄や、田中氏の軽妙な語り口、先輩たちを遠慮無くネタにするMONACAの空気感などが伝わる良イベントだった。ラストは2人のサイン入りタオルなどがプレゼントされるじゃんけん大会が行われ、田中氏の「こんなたくさん集まっていただけるとは思いませんでした。また来たいです、『マチ★アソビ!』ありがとうございました!」というコメントとともに、盛況の内にイベントは終了した。

(中里キリ)