プロレスのタッグマッチでは、実力が拮抗した一進一退の試合がある一方、WWE辺りになると誰か一人がしこたまやられて大苦戦......という試合がチョイチョイあります。
 多くの場合、抗争の過程の中で「ベビーフェイスが苦戦する画(展開)」として、観衆に感情移入を促すイベントとして発生します。

 そのプロレス的「苦戦の画」と重なるのが『スリー・キングス』(2009)。海外ゲーム好きの方には、「バトルフィールド バッドカンパニー」のストーリーモードの元ネタといえば通りが良いかもしれません。

 あらすじは......クウェートの王族から奪われた金塊の隠し場所を記した地図を発見した、米陸軍軍曹のバーロウとその仲間たち。その話を小耳に挟んだ特殊部隊のゲイツ少佐は、上層部に報告せずにバーロウらに接触。金塊チョロマカシを企み、即決行へ!
しかし、イラク軍からの解放を求める人々の現実に直面。少女の目の前でその母親を射殺したイラク軍の部隊長ほか数名を始末してしまったゲイツたちは、あとに戻れぬ事態に......。

 要は、湾岸戦争休戦協定締結直後の混乱するイラクを舞台に「金塊を頂くか、イラクの人々を助けるか、ええい!両方やがな!」みたいな呑気なテンションで展開する財宝探し系コメディ。
 同時に、米軍の見境のない爆撃、戦闘による原油流出に絡む環境破壊などなど、辛口な映像や演出もみられる反戦映画としても知られています。

リーダー格となるゲイツ少佐役には、海外ドラマ『ER』で人気絶頂期のジョージ・クルーニー。物語のキッカケを作るバーロウ役には、マイフェイバリット・ハンサムゴリラ、マーク・ウォールバーグ。頼れる黒人エルジン役には、アイス・キューブ。

 この3人が「スリー・キングス」というイメージになるかもしれませんが、劇中でのハンサムゴリラは、中盤からほぼ捕虜として拷問を受けて悶絶するだけでほぼ出てこないヤラレ役。
 しかもハンサムゴリラは本作では最後までヤラレのまま! プロレスならヤラレまくったベビーフェイスの選手が最後にオイシイところを持っていくのが定番なだけに、こんな展開は幼気なキッズファンや女性ファンからブーイングが起きるでしょう(スネたコアなファンからは喝采かも)。

 なもんで、キャラ的には一番のヤラレキャラっぽい4人目のビグが大活躍します。『マルコヴィッチの穴』や以前当コラムでご紹介した『アダプテーション』など珍妙な作品の監督としても著名なスパイク・ジョーンズの怪演が素晴らしく、他の演者を食っているといっても過言ではありません。

 プロレスでもヤラレ役が張り切り過ぎて、負けるには負けるのだけど、主役を食ってしまうことがあります。昨今の例では、一線を引いてパートタイムで若手の底上げ役を担当しているクリス・ジェリコが浮かんで来ます。

 独特のコントラストが際立つ映像や実験的な撮影法、ここ最近ご紹介している作品同様シャレオツなサントラと、ストーリーと共に見所、聴き所も多い本作。筆者、お気に入りの1本としてもオススメしたい作品です。

(文/シングウヤスアキ)