絶え間なく押し続けることが肝心

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目の前で突然、人が倒れた。呼びかけたが反応はない。そんな時はどうすればいいか。プリンセス プリンセスの「Diamonds」(ダイアモンド)を思い出しながら心臓マッサージすることを推奨する医師がいる。

迷っている場合じゃない

2015年10月、日本蘇生協議会は、意識や呼吸のない人への対処法を示した「蘇生ガイドライン」を5年ぶりに改訂した。心臓マッサージの速さについて、2010年度版では速さの目安を「少なくとも1分間に100回以上」としていたが、今回の改訂では「100〜120回/分」と上限を設けた。

しかし1分間に100〜120回の間で、と言われてもピンとこない。心臓マッサージをする際は、同程度のテンポの曲を思い浮かべるのがよいとされている。そこで、ガイドラインの改訂に関わった京都府立医科大学救急医療学教室講師の山畑佳篤氏は、プリンセス プリンセスの「Diamonds」を推奨。関係者に許可をとり、替え歌をつくってYouTubeで公開している。歌詞には心臓マッサージの方法とAED(自動体外式除細動器)の使い方の手順が盛り込まれているので、覚えておくといざというとき役に立ちそうだ。

実際に、倒れた人を見かけたとき、どのように対応すればよいのだろうか。まずは肩をたたいて大きな声で呼びかけ、反応を確かめよう。反応がなく、呼吸をしていなければ心停止の可能性がある。また、一見呼吸をしているように見えても、しゃくりあげるような異常な呼吸は要注意だ。「死戦期呼吸」と呼ばれ、心停止直後の人に多く見られる。

次に、大声で助けを呼び、119番通報とAEDの手配を依頼しよう。その際、「誰か、お願い!」ではなく、「そちらのメガネをかけた方」など、明確に指名することが大切だ。手配をしてもらっている間に心臓マッサージを開始する。

改訂版のガイドラインには、倒れた人が心肺停止の状態なのか判断に迷っても、「心肺停止でなかった場合の危害を恐れずに、ただちに胸骨圧迫を開始」と明記されている。1分1秒が命に関わるのだ。迷っている場合ではない。

ひじを伸ばし、胸骨の下半分に両手を重ねて置き、体重をかけて「強く、速く、絶え間なく」押し続けよう。強さは「胸が5僂曚苗世狄爾機廚目安だ。心の中で(声に出してもかまわないが)「Diamonds」を歌いながらリズムに合わせて押すといい。絶え間なく押し続けることが肝心だ。疲れたら速やかに、誰かと交替しよう。

心肺蘇生は誰にでもできる

AEDが届いたらふたを開け、電源スイッチをON。AEDは心臓がけいれんし、血液を送り出すポンプ機能を失う「心室細動」という状態になったとき、電気ショックを与えて正常な働きに戻すための医療機器だ。成人の心肺停止の多くは心室細動によって引き起こされるという。

電源を入れると音声ガイドが流れる。ガイドに従い、倒れた人の洋服を脱がせ、電極パッドを指定された位置に貼る。パッドを貼っただけでは電気ショックは作動しないので、慌てて離れなくても大丈夫だ。自動診断が行われたのち、「心停止」であるとAEDが判断すると、電気ショックの指示が流れるようになっている。電気ショックが必要と判断されたら、誰も倒れている人に触れていないことを確認して、ショックボタンを押そう。

電気ショックが済んだら心臓マッサージを再開し、救急隊に引き継ぐか、呼吸が回復するまで続ける。なお、AEDによって電気ショックの必要がないと判断された場合は、電極パッドをはずして心臓マッサージをする。

「Diamonds」の替え歌のサビの部分で、山畑氏は「心肺蘇生は誰にでもできる。命を救うために身につけよう」と呼びかけている。倒れている人を前に、「助けられなかったら」「事故が起きたら」と、心臓マッサージやAEDの利用を躊躇することもあるだろう。しかし、何もせずにAEDの使用が1分遅れると、救命率が7〜10%程度下がると言われる。また、大人と子どもでは対処法も異なる。

最近では、お笑い芸人の前田健さんが路上で倒れ、通りかかった医大生らが心臓マッサージやAEDで蘇生を試みたが、残念ながら2016年4月26日に虚血性心不全で亡くなった。結果的には救えないケースもある。しかし、目の前で人が倒れたとき、落ち着いて最低限の処置ができるよう、心肺蘇生の方法を日ごろから心得ておきたい。

心肺蘇生のガイドラインは、日本蘇生協議会のウェブサイト(http://jrc.umin.ac.jp/)で公開されている。プロのバンドが演奏したという「Diamonds」の替え歌はこちら(https://www.youtube.com/watch?v=B0B6J3rj6Xc)で聴ける。消防訓練などに参加し、心肺蘇生の流れを一度は体験しておくことをお勧めする。

(Aging Style)