馮寄台・中国信託商業銀行最高顧問・元駐日台北経済文化代表処代表は「過去7〜8年、馬英九政権の下で、両岸(中台)関係が良好だったから台湾と日本は最も密接な関係を保つことができた」と指摘。日台関係の良好な関係維持は両岸関係にかかっていると強調した。

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台湾では5月20日、馬英九・国民党政権から蔡英文民進党政権に交代する。これを前に、政官財言論界の有力者6人にインタビューした。馮寄台・中国信託商業銀行最高顧問(外交関係)・元駐日台北経済文化代表処代表は「過去7〜8年、馬英九政権の下で、両岸(中台)関係が良好だったから台湾と日本は最も密接な関係を保つことができた」と指摘。日台関係の良好な関係維持は両岸関係にかかっている、として、「蔡英文政権はこのことを肝に銘じなければならない」と強調した。(聞き手・ジャーナリスト相馬勝)

――これまでの日台関係をどうみますか?

馮寄台氏=日本は1972年に台湾と断交してから、台湾との関係は良くなかった。民間との関係になってしまいました。その後、台湾の場合、日本の外務省など政府高官などと会うのは難しくなってしまいました。これは日本政府としては、中国政府が唯一の政府との立場をとっているからです。

しかし、世論調査では日本人が最も好きな国は台湾です。台湾人が最も好きな国は日本という結果が出ています。だが、台湾と日本との関係はそんなに密接ではありませんでした。国民の感情は良かったのですが、関係は良くなかったのです。どうしてかというと、日本は台湾と付き合うとき、同時に中国を見ているからです。これは他の国々も同じだ。台湾と付き合うとき、中国の動向を気にしています。ただ、日本の場合は、中国を重視するレベルは他の国以上ですから、台湾と日本の関係はそれほど親密ではなかったのです。

それが、2008年に馬英九氏が総統になってから、変わり始めました。なぜかというと、両岸(中台)関係が改善し始めたからです。両岸関係は対日関係にとって重要な要素だからです。我々が庶民レベルでお互いにどんなに好きでも、日本側は中国を見て、台湾と距離を置くようになっていました。だが、両岸関係の和解で、日本側はほっとして、台湾と付き合うことができたのです。

――なるほど。馬英九政権は中国との関係改善を大胆に進めてきたからですね。

馮寄台氏=そうです。ですから、この過去7〜8年は馬英九政権の下で、台湾と日本は最も密接な関係を保つことができました。どうしてかというと、両岸関係が良好だったからです。これが政治の現実です。両岸の和解で日本と台湾の関係がこんなに良くなったのです。

馬総統以前の李登輝、陳水扁という2人が総統だった20年間はというと、両岸関係は良くなかったのです。私が馬総統に任命されて台北駐日経済文化代表処代表として、日本に駐在した4年間(2004〜08年)、数字は覚えていませんが、台湾と日本が調印した協定は一番多かったのです。そして、その協定も重要なものばかりでした。例えば、日台漁業協定や投資保証協定、航空協定、台湾の故宮博物院の日本での特別展開催、日台間でのワーキング・ホリデービザ制度創設、代表処の札幌事務所の設立などです。

――本当に日台間にとって重要な協定ばかりですね。

馮寄台氏しかも、これらの協定は、極めて親日的だった李登輝、陳水扁の両総統が最も結びたかった協定ばかりでした。彼らがやりたかったことを馬英九政権の下で、私がやったのです。私がこれだけの業績を上げることができたのは、もちろん日台関係が良好なことが前提ですが、これに加えて、台湾と中国との『両岸関係』が順調だったことが極めて重要な要素となったのです。

――とはいえ、馬英九政権はそれほど日本寄りではないとの印象が強いですね。

馮寄台氏馬英九総統について、日本では一部で『反日、親中』と言われていますが、それは違います。日本については親日的ですが、決して親中派ではありません。日本や米国など多くの国家は台湾よりも中国との関係を重視しています。『中国寄り』と言われながらも、馬総統が対中関係を改善したのは、日米を含む台湾の国際環境を整えるためでした。なぜならば、日本と台湾の関係、あるいは米台関係など、台湾を取り巻く国際関係は、すべからく中国によって左右されてしまうからです。

――馮先生ご夫妻は天皇陛下ご夫妻ともお会いになっていますね。

馮寄台氏そうです。私が日本にいたときの最も素晴らしい思い出です。忘れもしない2012年4月19日、東京・元赤坂の赤坂御苑で開催された天皇、皇后両陛下主催の「春の園遊会」に招かれました。天皇陛下は11年の東日本大震災に際し、台湾から日本へ寄せられた支援に対し、感謝の言葉を述べられました。また、皇后陛下も英語で家内とお言葉を交わされたのです。

1972年の台湾と日本の断交後、台湾の代表が初めて天皇、皇后両陛下とお会いすることができたのです。これは日本の外務省が手配してくれました。両岸関係が良好だから、日本側が中国の反応を気にすることなく、実現できたのです。日台関係の良好な関係維持は、両岸関係にかかっていると言っても過言ではありません。今後発足する蔡英文政権はこのことを肝に銘じなければなりません。

<3/6>に続く