いまも世界を揺るがし続けている「パナマ文書」問題。今回の発表により、同文書に記された一部の日本企業名も明らかになりました。メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の著者で、元国税調査官・作家の大村大次郎さんは、名前が発表された日本企業の中でも、伊藤忠商事丸紅という総合商社に着目。「租税回避の目的ではない」という両社の発言を「知らなかったはずがない」と断言。さらに、総合商社による「節税」ならぬ「逃税」の手口を次々と明らかにしています。

「伊藤忠」「丸紅」の節税?スキーム

2016年5月10日のICIJの発表で、日本の企業名も公表されました。

その中で、伊藤忠商事丸紅の名がありました。

伊藤忠商事丸紅は、記者発表の中で「台湾企業がタックスヘイブンにつくった企業に投資をしただけで、租税回避の目的はない」などと述べていました。

でも、伊藤忠商事丸紅がなぜそういう投資をしていたのか? 本当に租税回避の目的はなかったのか? なんて、普通の人はわかりませんよね。

なので、伊藤忠と丸紅が何の目的で何をしていたのか、元国税調査官として解説しますね。

まず最初に申し上げたいのが、伊藤忠と丸紅は、明確に租税回避の目的がありました。ただ、それが日本の税金ではなかったということだけです。

伊藤忠と丸紅は、台湾の企業がヴァージン諸島につくった「レナウンド・インターナショナル」という企業に出資していました。

出資額は、伊藤忠が約6%、丸紅は約8%。日本の両社で14%もの出資をしている。

なぜ台湾の企業が、ヴァージン諸島に企業をつくったのか、考えられる理由はいくつかあります。

一つは、台湾ではタックスヘイブン対策税制がつくられておらず、台湾企業はタックスヘイブンを租税回避で利用することが非常に多いということです。

先進諸国の多くはタックスヘイブン対策税制をつくっています。明らかに不自然な取引や不自然な契約などがあれば、タックスヘイブンの会社であっても、母国で課税するという法律です。しかし、台湾にはその法律がありません。だから、台湾企業はタックスヘイブンで会社をつくりたがるのです。

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もう一つは、中国での税制優遇措置を受けようということです。

実は中国には、外国企業が中国内で事業を行う場合、一定の条件を満たしていれば、税金を半分以下にするという優遇措置があります。

このヴァージン諸島につくられた「レナウンド・インターナショナル」という会社は、中国で銅製品を扱う事業をするものだということです。

しかし中国では、おそらく台湾企業については、外国企業として扱わず、外国企業の優遇措置の対象外になっていると思われます。そのため、ヴァージン諸島に会社をつくり、日本の商社にも参加を呼びかけ、中国の「外国企業優遇税制」を受けようとしたのではないか、ということです。

いずれにしろ台湾企業側には明確な租税回避の目的があります。

そして、伊藤忠、丸紅も間接的にその恩恵を受けることになるのです。つまり、伊藤忠、丸紅が参加している企業は、台湾、中国で租税回避をしているということなのです。

そして、伊藤忠、丸紅がそれを知らなかったはずはない、ということです。

また、そもそも総合商社というものが、タックスヘイブンをうまく利用し、課税を免れているというのは、以前から知られた事実です。

総合商社というのは、実はタックスヘイブンを利用した節(逃)税がしやすい業態なのです。

たとえば、2014年3月期の決算では、大手商社5社は、連結ベースで約2100〜4450億円もの当期利益を計上していますが、税負担は極めて低いのです。なぜなら単独ベースでは、大手5社がそろって営業赤字になっているからです。

なぜこのようなことになっているのか、というと、彼らは、グループ全体の利益を、税金の安い海外子会社に移し、日本の本社では利益が出ないようにしているのです。

そのため、日本の本社は赤字となり、税負担が少なくて済んでいるのです。

日本の法人税率は名目上は約40%ですが、総合商社の実質税負担は多くの場合10%を切っているのです。

総合商社というのは、そもそもが「逃税」をしやすいのです。

総合商社は、複数国にまたがって子会社を設立し、グローバルに活動しています。

だから総合商社は、なるべく税金の安い国の子会社に利益を集中させようという、行動に出ることになります。自社グループの収益を税金の安い国に集中させて、グループ全体の節税を図る、ということです。

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『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より一部抜粋

著者/大村大次郎
元国税調査官で著書60冊以上の大村大次郎が、ギリギリまで節税する方法を伝授する有料メルマガ。自営業、経営者にオススメ。
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出典元:まぐまぐニュース!