ベッキーを見た中居正広の第一声は「お久しブリーフだ」だった。

芸能活動を休止していたベッキーが、5月13日(金)放送の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系列)に出演した。3ヶ月の「謹慎」からのテレビ復帰。対応を一歩間違えば、再びバッシングにもなりかねない。

『金スマ』と中居正広がベッキーをどう迎え入れたのか、改めて振り返りたい。


「お久しブリーフだ」


13日放送の『金スマ』は、9年目を迎えた「ひとり農業」のロケ。前半25分は中居正広ほかレギュラー陣が、田植えや収穫の手伝いを行っていた。作業を終え、野菜や山菜などの作物を前に、これから晩御飯を作ろうというところで、TBS山本アナが「この方にも参加していただきます」とベッキーを呼びこんだ。

神妙な面持ちで入ってきたベッキーに対し、中居正広がかけた言葉が「お久しブリーフだ」である。

ご存知、ダンディ坂野(ベッキーと同じサンミュージック所属)のギャグである。しかも「お久しブリーフだ」「お久しブリーフ」と他の出演者を見回しながら2回言う。この局面なので、当然誰も笑わない。

中居の「ちゃんと言わなきゃいけないことあるんじゃないの」という振りに、ベッキーが「この度は私事でご迷惑をおかけして……」と謝罪を口にし始める。その言葉を中居正広が何度も茶化して遮る。涙声になりかけたときや、重い雰囲気になりかけたときに、わざと空気を破壊するように。

「お休みの間、見てよ。ベッキーの穴をどうやって埋めようかって、ベックが入ったんだよ」
「頼むよレギュラーなんだから。スタメンなんだから」
「ジタバタしないでよジタバタ。すぐジタバタするから。俺もジタバタしましたけど」

ベッキーが不倫報道を受けて記者会見をしたのが1月6日。SMAPが解散報道を受けて『SMAP×SMAP』に生出演したのが1月18日。そして2月12日、『金曜日のスマたちへ』は突然『金曜日のスマイルたちへ』と名前を変え、SMAP解散騒動が絡んでいるのではと憶測が飛んだ。

中居正広は自身の「ジタバタ」をネタにした。タイトルに影響があったと噂される番組の中で。

スキャンダルで休んでいた人物がどのようにテレビに復帰するか。そのやり方は様々だ。ビートたけしは『27時間テレビ』に乱入した。島田紳助は『行列のできる法律相談所』で視聴者に向けて謝罪した。矢口真里は『ミヤネ屋』に生出演した。

ベッキーと『金スマ』は「ロケの合流」を選んだ。録画編集により表現を練ることができ、ロケで同じ作業をすることで出演者との距離も近くなる。しかし一方、何事もなかったかのように合流するのも、謝罪に重きをおきすぎるのも、ロケの継続には不自然になる。

このジレンマに対し、『金スマ』は「ベッキーの登場に中居正広が自虐で応ずる」という展開で「軟着陸」をさせている。

「90度」で座る2人


ベッキーが合流した後、出演者たちは晩御飯の調理に移る。ベッキーは中居正広とTBS山本アナと同じ班で調理を担当。料理が完成し全員で食卓を囲む。そして夜が更け、ベッキーと中居正広が2人だけで話をする。

この「調理」「食事」「対談」全てのシーンに共通して、ベッキーと中居正広は90度の角度、上から見ると「ハの字」に位置していることに気がつく。

向かい合って目を合わせて話すのは圧迫感があり、緊張が生まれる。横に並ぶと緊張は解けるが、馴れ馴れしい印象も残る。90度の角度はお互いがリラックスでき、適度に距離を取れる位置。カウンセリングでも「90度法」と呼ばれている座り方だ。

2人の対談は、囲炉裏がある部屋で行われている。2人は囲炉裏を囲んで90度で座る。カメラは3〜5台(正面から見たツーショット、中居のアップ、ベッキーの背中越しの中居ワンショット、ベッキーのアップ、中居の背中越しのベッキーワンショット)あり、2人とカメラの間には囲炉裏が挟まれる。

つまり、視聴者も囲炉裏を挟んだ位置にいる。こうすると、中居とベッキーがそれぞれの相手を見て話す顔のアップは、カメラに向かって左右45度の向きになる。ベッキーと中居正広、2人と視聴者、それぞれの目線が正面から向かい合わない。余計な緊張を生まない配慮がこの配置にある。

テロップの排除


2人の対談の場面にはもう一つ特徴がある。字幕(テロップ)が無いのだ。

尺が長いトークの場合、途中でチャンネルを合わせた人のために、今何について話しているのかを画面隅にテロップを表示することがある。今回の場合なら「Q:あの会見に嘘はあった?」など、中居の質問をテロップにしたりするだろう。

しかし、今回の対談では左上隅の「金スマ」以外、一切のテロップが無い。それまでのロケでも出演者の発言をテロップに起こしていたのに、対談の2人の言葉はテロップに起こしていない。

ここからは想像だが、発言を要約したくなかったのではないだろうか。

発言をテロップにする場合、言った内容をそのまま起こすのではなく、ある程度の編集が入る。もし今回テロップを起こしたとすれば、どうしても長くなるベッキーの発言から「ここ大事!」とディレクターが判断した部分のみテロップになったかもしれない。しかしそれは、本人の言葉をそのまま届けたことにならない。

また、中居正広が質問するときも、表情や声でニュアンスを使い分けている。時に曖昧を許さず、時に共感する、その緩急のバランスはとても高度だ。数文字のテロップでそこまで表現するのは難しい。

要約を誤れば、誤解を生むことになる。冒頭に「嘘をついてほしくない」と約束して話し始めたのに、誤解を生んでしまっては元も子もない。

さらに加えるなら、テロップを排除することで会話のリアルさが増す効果がある。他の番組を例にするなら『テラスハウス』も住人の発言にはテロップをつけていない。編集され文字になった発言を目で追うのと、本人の言葉を耳で聞くのとでは、感情移入のレベルも変わってくるだろう。

ベッキーがテレビ復帰した『金スマ』は、ベッキー本人の言葉が伝わるよう慎重に配慮がされ、さらに中居正広が強力に作用した回になっている。中居正広が自身の番組に謹慎明けの人物を迎え入れるのは、今回が初めてではない。稲垣吾郎も草なぎ剛も、『SMAP×SMAP』で復帰して再び芸能界のレールに乗った。行いを反省した人物はどうしたらテレビで許されるのか。中居正広ほど考えている司会者はいないかもしれない。
(井上マサキ)