「トランプ大統領」誕生は十分あり得る──ある記者の視点

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どのような客観的、伝統的な基準に照らしても、ドナルド・トランプが今年11月の大統領選で勝利できるとは考えられないはずだ。多数の有権者を遠ざけてきたし、国内の主要な団体のいくつか(女性、イスラム教徒、ヒスパニック系など)はいずれしても、共和党の候補を支持しないだろう。

実際のところ、トランプはこれらの人たちに対し、自分以外の候補に投票する動機を与えているともいえるのだ。さらにトランプは、同じ共和党に所属する非常に多くの人たちも党幹部たちも、激怒させたり震え上がらせたりしてきた。

勝敗は対立候補次第

米国の大統領は、各州の選挙人による間接選挙で決まる。過去の6回の大統領選で、自らに投票する選挙人として獲得した人の数が最も少なかったのは、民主党では2004年当時の候補、ジョン・ケリー(現国務長官)だ。当選するのに最低必要となる270人のうち、257人を獲得するにとどまった。アル・ゴアは269人だったが、ビル・クリントンとバラク・オバマはそれぞれ2回ずつ、これを上回る人数を確保した。

政治においては結局、誰が対立候補かということがすべてを決める。ヒラリー・クリントンは依然として、無党派層の獲得に苦労している。そして、関連の世論調査の結果をみれば、クリントンが直面する課題は明らかだ。

キニピアック大学の最近の調査によれば、クリントンは激戦の3州で、トランプと互角の接戦を繰り広げている(かっこ内はトランプ支持対クリントン支持の割合)──フロリダ州(43%-42%)、オハイオ州(42%-43%)、ペンシルベニア州(42%-43%)。

従来から共和党支持であるものの、最近になって民主党支持者が増加しているジョージア州(41%-42%)でも、両候補の支持は拮抗している。

もう少し詳しくこれらの数字をみてみよう。激戦の3州ではいずれも、2008年と2012年の選挙でオバマ大統領が勝利を収めた。クリントンが1ポイントの差でトランプに勝っていても負けていても、それは問題ではない。クリントン陣営にとって本当に問題なのは、米国内でその名を最も広く知られた政治家が、クリントン自身の顧問たちにも多くの評論家たちにも”本命”と言われてきた人物が、40%そこそこの支持率に甘んじているということだ。

これほど多くの有権者たちを怒らせた人物と戦っていながらクリントンはいまだに、次期大統領にふさわしい候補は自分だと無党派層の多くを説得することができずにいる。これらの各州で、まだ支持する候補を決めていないと答えている人はそれぞれ、16〜17%いる。

一方、ジョージア州がテキサスやアリゾナ、サウスカロライナ各州と同様に、共和党支持の「レッド・ステート」から民主党支持の「ブルー・ステート」に変わる可能性が出てきていることは、クリントンにとって嬉しい知らせの一つだろう。白人以外の有権者と、ミレニアル世代の増加がその理由だ。

ただ、クリントンには別の問題がもう一つある。ジョージア州ではアフリカ系市民の人口が急増しており、この人たちの大半はクリントン支持のはずだ。しかし、それでもこの州でトランプに1ポイント以上の差を付けられないのはなぜだろうか?

情勢はまだ予測不可能、だからこそ─

これらはすべて、2016年の大統領選を一層興味深いものにしている。これまでのところ、情勢の予測は困難だったし、当面はその状況が続きそうだ。クリントンもトランプも、気が遠くなるほどの課題に直面している。

トランプは傷つけた人たちの心を癒さなくてはならない。だが、トランプがみせる威勢のよさは、共和党をひとつにまとめる必要がないことを示しているのかもしれない(実際、まとめない可能性もある)。ただし、それでもどこかから、支持してくれる人たちを探し出してこなくてはならない。

クリントンは「信頼」の点で問題を解消できずにいる。既成政治の旗手でもあることは、今回の選挙戦では必ずしも利点とはいえないだろう。ただ、これから新たに発表される世論調査の結果は、トランプよりもクリントンにとって、厳しい知らせになりそうに思える。