さまざまな反応が複雑に絡み合って気分が落ち込んでいた

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独フライブルク大学やロストック大学、ハイデルベルク大学、フローニンゲン大学による共同研究チームは、インフルエンザなどのウイルス感染症にり患すると気分が落ち込むのは、「CXCL10」というたんぱく質が神経伝達を阻害し、気分の変化を調節する機能を損なわせるため、と発表した。

CXCL10は、体内で白血球を引き寄せ、炎症を起こす「ケモカイン」という物質の一種で、感染症にり患した際に、免疫系の反応過程で発生する。

風邪やインフルエンザ、C型肝炎などのウイルス感染症にり患すると、発熱やのどの痛みといった体調不良のほかに、倦怠感や眠気、疲労など気分の低調を感じることがある。免疫系の不調が、認知機能に影響しているのではないかと推測されていたが、そのメカニズムはわかっていなかった。

研究では、家畜が発症する感染症「水疱性口内炎」のウイルスをマウスに投与。発症したマウスに認知行動テストを実施し、動物にみられる抑うつ行動を示していることを確認したうえで、その脳内の神経活動を分析した。

すると、いくつかの神経で放出されたCXCL10が、本来は別のたんぱく質と結びつき神経伝達を担う「CXCR3」という物質に引き寄せられてしまい、正常な神経伝達を阻害していることがわかった。

特に海馬の神経伝達を阻害し、「抑うつ」状態に近い反応を示しており、これが感染症にり患した際の、気分の低調の原因となっているという。

研究者らは、人でも同様の反応が確認できるか精査する必要があるとしつつ、「CXCL10の発生を抑制するか、CXCR3との結合を阻害できれば、感染症の症状のひとつを完全に排除することができる」とコメントしている。発表は、2016年4月19日、オープンアクセスの科学誌「Immunity」に掲載された。

参考文献
Brain Endothelial- and Epithelial-Specific Interferon Receptor Chain 1 Drives Virus-Induced Sickness Behavior and Cognitive Impairment.
DOI: 10.1016/j.immuni.2016.04.005 PMID: 27096319

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