メガバンクが預金金利を引き下げるなか、西武信用金庫などは預金金利を引き上げた
 日本銀行が2月にマイナス金利政策を導入して以来、メガバンクの定期預金金利が満期1か月から10年まで0.01%で並ぶ異常事態になっている。

 銀行の預金金利もマイナスになるのではないかとの思惑から「金庫」がバカ売れしたり、三越や高島屋、京王百貨店などのデパートでお得に買い物ができる「デパート積立」がにわかに注目されたことがさまざまなメディアで報じられた。例えば高島屋の「ローズサービス」なら、毎月の積立額が5000円の場合、1年後の受取額は6万5000円と、5000円がボーナス分として上乗せされる。利回りは年8.3%超だが、百貨店で買い物をすることになり「むしろ家計への負荷は増えそう」と冷ややかな声も。

 一般の消費者がまず飛びついたのは、「生命保険」だ。大半を国債で運用している保険会社では運用難から今後の保険料の値上げが懸念され、保険の見直しで保険窓口や代理店は活況が続いている。また、予定利率の魅力が相対的に高まるということで、貯蓄性の高い学資保険や一時払い終身保険、養老保険の人気が高まった。ところがここにきて、利率のいい一時払い保険の販売を停止したり、受け取れる配当金を引き下げる保険会社が相次いでいる。

◆メガバンクが金利を下げる一方で金利を上げる信金

 また、「個人向け国債」にも人気が集まっている。最低金利として「0.05%」に設定されているからだ。メガバンクの定期預金の5倍の金利を“国のお墨付き”でもらえる、というのは抜群の説得力があるだろう。

 マイナス金利政策でメガバンクが預金金利を引き下げるなか、熊本第一信用金庫や西武信用金庫、遠賀信用金庫など、信用金庫は逆に定期預金の金利を引き上げている。信用金庫が金利を引き上げることができるのは、「信金中央金庫」があるため。信金中央金庫とは、信用金庫の“中央銀行”で、銀行にとっての日銀のようなもの。信金中金への「預け金」には0.1〜0.125%金利がつくと見られている。

 また、もともと高金利なネット銀行にも注目が集まっている。キャンペーン次第になるが、楽天銀行は同じグループの楽天証券の口座を一緒につくると、普通預金の金利が0.1%にアップする。普通預金なのでいつでも引き出せるうえ、個人向け国債がほしければ、楽天証券で買えばポイントも貯まるといった賢い使い方も可能だ。

◆デンマークではマイナス金利「住宅ローン」も

 金利低下を逆手にとれるのが、「ローン」。スイス、スウェーデン、デンマークではすでにマイナス金利が導入されていて、デンマークでは「住宅ローン」にマイナス金利を適用した大手銀行もでてきたほど。この3か国では不動産バブルに近い現象が起きている。

 同様に、自動車ローンや教育ローンの金利も低下し、ローンが組みやすくなるという見方もある。今のところまだその動きは顕著ではないが、自動車の購入を検討している人や、学費や留学費用に悩んでいる人には朗報となるかも。

 お金の預け先に困っているのは、消費者だけではない。運用難にあえぐ一部の地方金融機関が行き場のない資金をメガバンクに預金したとの噂も。事情に詳しい金融関係者によると、「安易に融資を増やせば不良債権になりかねないし、株式を買えば自己資本規制に引っかかる可能性も。そこで、わずかでも金利が付くメガバンクに預金することになったようです。預けたのは第2地銀や信金など中小機関とみられます。預かったほうの大手銀行は、運用先がないので迷惑かもしれませんが……」

 身近な生活に影響が出つつあるマイナス金利。その波紋はまだ広がりそうだ。 <取材・文/HBO取材班>