脂肪をガマンするよりも──食生活にも「多様性」が必要だ

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マクドナルドの同じメニューを10日間にわたり毎日食べ続けた結果、腸内細菌叢の多様性は40パーセント減少し、健康状態も悪くなった実験などを紹介。

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キングス・カレッジ・ロンドンで遺伝疫学を研究するティム・スペクター教授は、自身の「健康に関する顕著な現象」を体験したことを経て、自分の食事について研究することを決心した。

同教授は現在までに、食事に関する研究論文を800本以上発表しており、世界で最も論文被引用率の高い上位1パーセントの科学者のひとりだ。現在の研究では、腸内細菌叢(腸内フローラ)に焦点を当てている。スペクター氏は、人々の腸内細菌叢を研究するプロジェクト「British Gut」のリーダーでもある。

『WIRED』が開催した「ワイアード・ヘルス2016」において、スペクター氏は、科学文献をあさり、食べ物に関する良い要因とそうではない要因を特定しようと取り組んできたが「根拠がない説がたくさん存在していることがわかりました」と述べた。「カロリーを測定する、高脂肪の食べ物を控える、食事を抜かさない、1日に5回食事をとるなど、互いに矛盾する説が数多くあるのです」

明白なのは、どの食事がベストなのか、誰にもわからないということだと、スペクター教授は主張する。測定が行われたすべての国で肥満の割合は3倍に増加しているが、「そのすべての現象を説明できる食べ物はない」という。

たくさんのオリーブ油とチーズを摂る「高脂肪な食事」と、低脂肪乳製品と赤みの肉で構成された「低脂肪の食事」を比較した実験では、実際のところ、高脂肪の食事をとっていたグループの方が健康的だったという。それにもかかわらず、一般的に脂肪は悪いものだと考えられている。

「わたしたちはこうした要素にとらわれ過ぎて、腸内細菌叢のことを忘れてしまっています」とスペクター氏は述べる。「DNAよりも腸内細菌叢のほうが、健康について多くのことがわかるのです」

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スペクター氏の息子であるトムは、大学生のとき、父親との共同実験として、マクドナルドの同じメニュー(ビッグマックかチキンナゲット、フレンチフライ、コカコーラ、夜にはビールとつまみのクリスプ)を10日間にわたり毎日食べ続けた。その結果、腸内細菌叢の多様性は40パーセント減少し、1,400種類の細菌が腸内から失われた。実験の6日目からは疲労感や無気力な感じが増え、よく眠れなくなり、食欲も失われていったという

では、どうしたら腸内細菌叢を健康的に維持できるのだろうか? その答えは、さまざまな食べ物を摂取することにあるとスペクター氏は説明している。うれしいことに、食物繊維を豊富に含む野菜や発酵食品のほかに、ダークチョコレートと赤ワインなども、腸内細菌叢を改善する可能性があるという。

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『WIRED』VOL.22「BODY & HEALTH 病気にならないカラダ」

先端科学とテクノロジーは、ぼくらのカラダをいかに変えていくのか? 微生物・量子・遺伝子から見えてくる身体の新常識、21世紀のヘルスを拓く施設、そしてウェアラブルや遺伝子編集などのテクノロジーがもたらす「未来のヘルスケア」を読み解く。第2特集「イスラエル ゼロワン国家の夢」のほか、人間と囲碁AIの頂上決戦を目撃した4人の証言、映画『レヴェナント』の音楽を務めた坂本龍一&主演レオナルド・ディカプリオの独占インタヴューを掲載。