韓国で死者が続出した加湿器殺菌剤事件が波紋を広げている。製品発売から会社側が責任を認めて謝罪するまで15年もかかり、政府の対応に批判が集中している。写真は加湿器。

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2016年5月13日、加湿器から“毒霧”が吹き出す―。韓国で加湿器の水に混ぜて使う殺菌剤が原因で100人以上が死亡した事件が波紋を広げている。製品発売からメーカーが責任を認めて謝罪するまで実に15年。検察当局も捜査に乗り出しが、政府の対応が後手に回ったことにも批判が高まっている。

韓国メディアによると、最も多くの被害者を出した殺菌剤は、英日用品大手レキット・ベンキーザーの韓国法人「オキシー・レキット・ベンキーザー」(現RBコリア)が01年から販売していた。容器には「子どもにも安全」などと記載されていた。

06年ごろから、乳幼児や妊婦を中心に呼吸困難などの肺疾患患者が相次ぎ、11年になって政府の疾病管理本部が「加湿器殺菌剤に含まれる毒性化学物質のポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩(PHMG)と肺損傷に因果関係がある」と発表。販売中止と製品回収の措置が取られた。この10年間に453万個を販売、シェアは9割を占めていた。

これに対し、会社側は因果関係を否定して、ソウル大教授らに調査を依頼。教授らは「加湿器殺菌剤と肺損傷の因果関係は明確でない」との報告書を提出した。

その後も被害者団体は抗議活動を続け、昨年10月、検察当局が業務上過失致死容疑などでようやく捜査を開始。捜査が本格化した5月2日、会社側は記者会見し、「加湿器殺菌剤により肺を患った被害者と家族に深く謝罪する」と頭を下げ、補償を約束した。

2日後の4日、検察当局はソウル大教授を逮捕し、同様の研究をした湖西大の教授は出国禁止とした。検察当局はソウル大教授らが注文通りに研究結果を出した見返りに多額の金銭を受け取ったとみている。

被害者団体によると、殺菌剤の死傷者は1500人以上。政府が認定した死者は95人だが、今後さらに増え100人を超えるとみられる。 世論調査機関のアンケート調査では、加湿器殺菌剤事件の責任が政府にあるという回答は約半分の49.3%に達し、会社の責任という回答(24%)の2倍に上った。

中央日報は「韓国政府のお粗末な管理が加湿器殺菌剤問題を拡大させた」との社説を掲載。「清掃用に使われたPHMGが韓国で加湿器殺菌剤に化けたのは01年だ。用途が工業用添加剤から消費財である加湿器殺菌剤に変わったが、韓国政府は特別な許可手続きなく業者に任せた」と指摘し、「加湿器殺菌剤が普遍化してから原因の分からない乳幼児の死亡事例が医学界でしばしば報告された。だが、疾病管理本部の対応は職務放棄に近かった」と批判した。

事態はさらに広がりを見せ、韓国・ニューシスによると、韓国の弁護士団体はPHMGとは別に、「韓国政府は20年間、エギョンやイーマートの加湿器殺菌剤の成分であるクロロメチルイソチアゾリノン(CMIT)、メチルイソチアゾリノン(MIT)などに対する有害性審査免除の告示をし続けた」と批判。「米環境庁(EPA)の吸入毒性警告(1998年)も無視した」と糾弾している。(編集/日向)