香港で「報道の自由」が風前のともしびになっている。中国の圧力が強まり、英国から中国に返還される際、「一国二制度」の下で保障された自由は危機に直面している。資料写真。

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2016年5月14日、香港の「報道の自由」が中国の圧力が強まる中、危機に直面している。昨年から今年かけて中国政府に批判的な書店関係者が失踪したり、新聞編集者が解雇されたりするケースが続発。「身の安全」を理由に移住する言論人も現れた。1997年に英国から中国に返還される際、「一国二制度」の下で保障された自由は風前のともしびだ。

香港社会に大きな衝撃を与えたのは、「銅鑼湾書店」親会社の出版社の株主で、作家でもある李波氏ら5人が昨年10月から12月に相次いで失踪した事件。香港中心部にある銅鑼湾書店は、100平方メートル足らずの小規模な書店だが、中国共産党批判や指導者のスキャンダルなど本土で販売できない書籍を扱ってきた。

香港メディアによると、中国当局が強制的に連行した可能性が指摘されたが、5人からは家族に無事を知らせる連絡が届き、李氏も3月24日になって香港に戻った。李氏は「友人の助けを借り、自分なりの方法で中国に渡った。連行はされていない」と繰り返し、中国当局の関与を否定。失踪事件の捜査中止を求めた。

さらに「中国では完全に自由の身。捜査機関は礼儀正しく、一切の権利は保障されていた」などと主張。その一方で、「今後はでっち上げの本は出版しない」とも語ったが、説明を額面通りに受け止める報道関係者は、ほとんど皆無だ

4月には香港の有力紙「明報」が編集幹部だった姜国元氏を解雇。姜氏は民主的な報道姿勢で知られ、中国で問題視されることを警戒する編集トップとの間に確執があったとされる。同紙は解雇について経費抑制のためと説明しているが、本社前では5月2日、社員らが「報道の自由を守れ」と抗議集会を開き、姜氏の復職を求めた。

日本メディアによると、香港で軍事専門誌を発行してきた著名な軍事評論家の平可夫氏は「身の安全」を理由に、5月に日本へ移住することを決めた。

平氏は中国・雲南省出身だが、カナダ国籍で、香港の永住権も持っていた。日本への留学経験もあり、中国語のほか、日英ロシア語にも堪能で、幅広い人脈を生かして、雑誌「漢和防務評論」で、中国軍の動向や腐敗問題などを論じてきた。雑誌の発行は続ける予定だが、銅鑼湾書店事件を受け、香港での活動継続は危険性が高いと判断したという。

ロイター通信は先ごろ、香港記者協会(HKJA)が発表した調査「報道の自由度指数」で、15年は香港における報道の自由度が2年連続で悪化した、と伝えた。調査は1000人超の市民と記者数百人を対象に実施。その結果、一般市民の54%、記者の85%が昨年は報道の自由が縮小したと考えていた。特に政府批判への懸念が最も強く、意見表明を差し控える「自己検閲」の雰囲気が一段と広まったとみられている。

ちなみに、国際NGO「国境なき記者団」(RSF、本部・パリ)」がこのほど公表した16年の「報道の自由度ランキング」で、対象の世界180カ国・地域中、香港は日本の72位を上回る69位だった。来年のランキングはどうなるのだろうか。(編集/日向)