義援金の被災者への配分が開始されたが……(shutterstock.com)

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 4月14日の発生以来、間もなく1カ月が経つ熊本地震。5月8日現在、死者49人、関連死疑い18人、建物の全壊・半壊・一部破損6万8662棟という被害が出た。

 この震災では、依然多くの人が避難生活を強いられている。そんな熊本を支援しようと、全国から寄せられた義援金約57億円の第一次配分が5月6日よりスタートした。

 しかし、生活保護受給者がこの義援金を受け取りたくても受け取れずにいる、というニュースが、西日本新聞をはじめ各紙に掲載された。

 それらの記事によると、義援金が「収入」に当たり、その額によっては生活保護の減額・停止につながるのではと、生活保護受給者が懸念して、受け取りをためらっているケースがあるのだという。

 現在、義援金は第一次配分として、死亡者や行方不明者、住家が全壊した世帯に各20万円、半壊した世帯10万円、重傷者に2万円を配分することが決まっている。

収入の額によっては保護停止も

 確かに、生活保護受給者の収入は厳しく管理されており、受給者がなんらかの形で収入を得た場合は、必ず報告しなければならない。

 生活保護法第61条にも次のように定められている。

 第六十一条  被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があったとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

 収入が一定以上あると、生活保護費は減額されたり、停止されたりする。実際に東日本大震災では、義援金や補償金を理由に生活保護を停止や廃止された世帯は458件にのぼったという。
義援金も「収入」なのか?

 もっとも、義援金は即座に「収入」とみなされる、というわけでは決してない。受給者が義援金の使途と金額を書き込んだ「自立更正計画書」を福祉事務所に事前に提出すれば、「収入」から控除される仕組みが用意されている。

 今回の報道を受けて、東京都内で東日本大震災の被災者の支援を行なっている東京災害支援ネット(とすねっと)は、ブログで次のように手続きのルールを紹介している。

 「義援金が生活保護受給者の『収入』に認定されてしまうかのような誤解を与える見出しの新聞記事がありましたが、ちゃんと手続きを取れば、義援金等が収入認定されてしまうことにはならないはず」

 義援金や見舞金はすべて受け取る手続きをしたうえで、被災状況を書いた書面を作り、その大体の使い道を書いた「自立更生計画書」を手書きでもいいから作って、福祉事務所などに提出すればよいと指南している。

世間の厳しい目も一層萎縮させている

 実際、東日本大震災に際しても厚生労働省は通達を出している。

 それによると、「被災した生活保護受給世帯が義援金などを受けた場合、その世帯の自力更正のために充てられる額は収入認定されません。また、地方自治体の判断により、包括的に一定額を収入認定除外とするなど被災者の実情に応じた弾力的な取り扱いができることとしています」とのこと。

 その件に関する関係通知として、「東日本大震災による被災者の生活保護の取り扱いについて(その3)」が平成23(2011)年5月2日に出された。

 「義援金等の生活保護制度上の収入認定の取り扱いは、(中略)『当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額』を収入として認定しないこととし、その超える額を収入として認定すること」としている。

 ただし、煩雑な「自立更生計画書」の手続きを、書類の作成の苦手な人が多い生活保護受給者が敬遠して諦めるケースも発生しそうだ。

 そして、受給者を一層萎縮させている可能性があるのが、「生活保護受給者が義援金など受け取るべきではない」という世間の厳しい目だろう。

 「収入」に関しては、わずかなアルバイトでも保護停止につながることを恐れて、かえって社会復帰が遠のく問題など、以前から指摘されている。

 今回の義援金の受け取りをめぐる問題は、生活保護制度に対する根本的な課題を問うている。
(文=編集部)