中国が海洋進出を図る南シナ海が、日中間の新たな火ダネになっている。日本は「一方的な現状変更は認められない」と主張。これに対し、中国は「対抗意識を捨てるべき」と反発している。資料写真。

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2016年5月13日、中国が広範な領有権を一方的に主張して軍事拠点化を進める南シナ海が、日中両国間の新たな火ダネになりつつある。5月の連休期間中、欧州や東南アジア各国を歴訪した安倍晋三首相や岸田文雄外相は「一方的な現状変更は認められない」と中国を非難。中国側は「日本は対抗意識を捨てるべき」などと反発を強めている。

英国のキャメロン首相との会談で、安倍首相は南シナ海問題についても意見交換。昨年11月、20カ国・地域(G20)首脳会合出席のためトルコを訪問した際、安倍首相はキャメロン首相との会談で海洋進出を図る中国について「中国の一方的な活動は継続しており、国際社会が連携した対応が必要だ」と強調した。今回も同様の説明をしたとみられる。

ドイツのメルケル首相との共同記者会見でも安倍首相は中国を念頭に、「一方的な力による現状変更の試みは法の支配といった普遍的な価値に基づく国際秩序への挑戦であり、受け入れられない」と指摘。メルケル首相も「中国というのは遠い所であるが、ロシアやウクライナの問題が日本に影響しているのと同じだ。これは対岸の火事ではない」などと応じた。

岸田外相は南シナ海をめぐり中国と対立しているベトナムのフック首相との会談で、「一方的な現状変更は国際社会共通の懸念である」との認識で一致。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国が南シナ海問題で足並みをそろえるのが重要であることも確認した。

さらに、ミン副首相兼外相との会談では、ベトナムの海上警備能力を高めるため、日本から新造巡視船の供与に向けた調査を加速すると約束。ベトナムの海上警察の人材育成を進める方針も伝え、両国の防衛協力拡大でも一致した。

岸田外相はタイ訪問でもドーン外相との会談で、南シナ海に言及。中国による大規模な埋め立てや拠点構築などの動きについて、一方的な現状変更の試みだとして懸念を表明した。

これに対し、中国の王毅外相は岸田外相の東南アジア歴訪に先立つ日中外相会談で「日本は対抗意識を捨て、地域の平和・安定の維持に尽力すべきだ」などと反発、「中国に領有権がある」と改めて主張した。中国外務省国境海洋事務局の欧陽玉靖局長も、今月26日から開催される主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、南シナ海問題が議論される見通しであることに触れて「中国とASEANが行っている努力を尊重するよう望む」と述べ、サミットの議長国を務める日本などを強くけん制した。

南シナ海に関しては、フィリピンが申し立てた常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判断が近く下されるとみられる。申し立てについて、欧陽局長は「中国とフィリピンの関連の争いについて仲裁裁判所は管轄権を持たない。仲裁案は最初から違法で、どんな結果であろうと中国は受け入れないし、認めない」との主張を繰り返した。領有権争い解決のめどが全く立たない中、日中の対立はますますエスカレートしそうな雲行きだ。(編集/日向)