やはり危険ではないのか--。今年2月、糖質制限ダイエットの第1人者だったノンフィクションライター・桐山秀樹氏が心不全のため急逝した。この訃報を受けて、過度な糖質ダイエットについての論議が専門家などの間で巻き起こった。糖質制限は本当に体に悪影響はないかどうか、改めて考えてみよう。

 糖質制限は、短期間にみるみる痩せるなど、見た目に歴然たる効果があると言われる。その上、米、パン、パスタなどの炭水化物(糖質)を摂らず、肉や酒はOKというお手軽感から一大ブームとなったのは記憶に新しいところだ。
 「見た目は痩せるし、糖尿病対策としても効果があるともてはやされましたが、皆さんはどこか釈然としないところがあったはずです。糖質は一時的なショック療法としてはいいと思いますが、長い目で見るととても危ないと思います」

 こう警鐘を鳴らすのは、医学博士の内浦尚之氏だ。
 その理由はこうだ。
 「糖質制限を勧める人たちは『糖は麻薬のような悪い物』と言い、糖質の摂り過ぎは肥満や動脈硬化を招き、心筋梗塞、脳梗塞、痛風のほか、糖尿病、がんにもなりやすいと主張しています。しかし、それは糖が悪いのではなく、単なる食べ過ぎから起きるものなのです。私たちの食欲を左右しているのは糖です。糖を摂ると血糖値が上がって満腹中枢が刺激され、摂らなければ血糖値が下がり空腹を感じる。つまり、生命にとって一番大事な食欲の調節を糖がしているわけです。その証拠に、低血糖発作はあるが、低タンパク発作や低脂肪発作はない。糖が不足すると、いきなり生命にかかわるような発作が起きるのも、それだけ生命にとって重要だからです」

 米国のハバード大学も2年前、「糖質制限を続けると心筋梗塞や脳卒中の発症率が高まる」と発表している。
 それによると、スウェーデンの30歳〜49歳の女性4万3396人を対象に食生活を調査、約16年間にわたり心筋梗塞や脳卒中などの発症を追跡したところ、「低炭水化物・高タンパク質」のグループは、そうではないグループに比べ発症リスクが最大1.6倍高まったという。

 また、同大学医学部系列の医療センターによる別の報告もある。
 動脈硬化症のモデルマウスに12週間、同カロリーの「標準食」「脂肪の多い西洋食」「低炭水化物で高タンパク質」の3種類の食事を与えたところ、「低炭水化物…」は、「標準食」と比べてアテローム性動脈硬化症が15.3%多く発生した。
 また、「低炭水化物…」のマウスはダメージを受けた血管の修復能力に悪影響があることも分かったという。
 「アテローム性動脈硬化症は、血管内壁にコレステロールなどが沈着して起こります。過度に炭水化物を減らしてタンパク質や脂質を多く摂取すると、動脈硬化巣が炎症などでもろくなる可能性があり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まるのです」(前出・内浦氏)