41−80。3ポイントシュート25本中0本――。

 5月7日から長岡と東京で行なわれたオーストラリアとの強化試合3連戦。平均身長185.8cm、205cmのセンターを擁するオーストラリアを相手に、初戦は惨敗したというより、何もさせてもらえなかった。試合後、センターの間宮佑圭(JX-ENEOS)は声を上げて強調した。

「もう日本で練習したってどうにもならない。海外で高さのある選手たちとやるしかない。早く海外遠征に行きたいです」

 日本が大敗した理由は高さ以外にもたくさんある。

 4月9日から第1次強化合宿がスタートし、第2次合宿ではWNBAでヘッドコーチ経験のあるコーリー・ゲインズ氏を招聘したためオフェンスの戦術練習をメインに行ない、本格的なディフェンス戦術習得はこれからであったこと。主力の1人である本川紗奈生(シャンソン化粧品)がWJBLのシーズン中に足底筋膜炎と診断されて調整段階であること。五輪の選考を兼ねているため様々な選手起用を試す必要があったこと。「今シーズン初めての試合で、ゲーム勘がまったくなかった」という声も選手たちからは聞こえてきた。

 エースの渡嘉敷来夢(JX-ENEOS)がWNBA参戦で不在だったが、例え渡嘉敷がいても体格の小さな日本は、練習に練習を重ねてチームプレイの精度を高めないことには国際試合では勝機がないのだと改めて痛感した3連戦だった。

 そもそも、強化開始から1カ月足らずで、オリンピック5大会連続メダルを獲得しているFIBAランク2位の強豪(日本は16位)との国際A代表マッチは、観客にお披露目するには早すぎる対戦だった。オーストラリアは2年前の夏にも来日しているが、これまで強化を開始して間もない時期に日本がA代表マッチをすることはなかった。しかし、リオ五輪で『メダルへの挑戦』をスローガンに掲げている日本としては、早めに国際試合を組みたい意向があったのだ。

「今年は強豪国とゲームをたくさんして、早い時期に高さに慣れ、本番では高さへの対抗が当たり前になっていたいので、早めに強化試合や遠征を組む計画を立てた。オーストラリア戦で出た課題を5月末からのヨーロッパ遠征で克服していきたい」(内海知秀ヘッドコーチ)

 また、アジア2連覇中の日本は、強豪国に対戦のオファーをすれば受けてもらえる立場になってきており、「それだけの実力をつけたと認めてもらえている」と内海HCが語ることからも、積極的に強豪国を招聘すべきなのは当然だろう。これは、6月の世界最終予選を待たずに、リオ行きのチケットを入手しているからこそ取り組める4カ月間の強化スケジュールなのだ。

 今回は、オーストラリアにしてもリオ五輪の選手選考にからむ時期であり、双方にメリットがあった。オーストラリアは5名の代表候補選手がWNBAやフランスリーグに参戦中で不在だった。

「そのうち4名は世界選手権で活躍した実績があるのでリオに連れて行くが、日本に来ている選手たちは競争だから必死」とブレンダン・ジョイスHCが言うように、2014年の世界選手権の銅メダルメンバー6名が来日し、格下相手の日本にも一切手を抜かない姿勢から学ぶべきところが多くあったと言える。

 日本の武器はアジアナンバーワンを誇るスピードと機動力。今年はさらに速いトランジションゲーム(攻防の切り替えが速いゲーム)を目指し、その中で確実に3ポイントを決めることを課題にしているが、1戦目は高さを意識してしまい、フォーメーションの形をなぞっているだけで「狙い目がない試合」(内海HC)になってしまった。

 続く2戦目もゲームの入りが悪く、前半は16−42とオーストラリアに支配されてしまうが、後半は積極的なディフェンスから立て直したことで栗原三佳(トヨタ自動車)の3連続3ポイントが決まって流れが生まれ、後半だけならば39−39と善戦して55−81という結果に。

 3戦目には日本にゲーム勘が戻り、アグレッシブさが出てきて前半を1点リードし、最終スコアは73−84と大善戦。3ポイントを7本決めたことで得点が伸びる手応えをつかんだ。もっともよかった点は、リバウンドの本数が41対34で勝ったことだ。

「日本が戦いにきていて、かなり動かされていいポジションを取られた」とジョイスHCに言わしめたほど、1戦目に忘れていたディフェンスの意識が高まってきた。

 しかし、本番でしっかりと対応してくるのが強豪国。2年前、日本は世界選手権で対戦する国々と遠征で手合せをしたが、本大会ではスカウティングされて3戦全敗に終わっている。対応力のなさを克服しない限りはオリンピックでの上位進出は望めない。早い時期にオーストラリアと強化試合を組んだ意義はそこにある。課題を修正する時間はまだあるのだ。

 逆を言えば、日本は高さに慣れるために時間を要することをバスケファンが知るいい機会にもなった。観客にお披露目する国内での代表Aマッチ戦、しかも強豪と行なう試合の重要性を改めて実感した3連戦だった。

 アジア選手権のMVP渡嘉敷来夢を擁する日本チームの成長は著しく、高い目標を目指すにふさわしいチームであることは確かだ。しかし忘れてはならない。日本は20年前のアトランタ五輪の7位を最後に、世界選手権を含めた世界の舞台で決勝トーナメント(ベスト8)から遠ざかっている。高さに慣れたあとの試合に勝ち切るためには、さらにチーム力を高めていく経験が必要だ。

 メダルへの挑戦という目標に到達するためには、キャプテン吉田亜沙美(JX-ENEOS)が言うように、「これからの海外遠征ではチャレンジすることがたくさんあり、弱点を1つ1つ消していかなければならない」。

 世界2位のオーストラリアには、恥をかきながらも目覚めさせてもらった。あと3カ月、ここから目の色が変わるだろう日本がどこまで成長できるかが勝負だ。

小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko