連休明け、体調をくずしていませんか

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就職や進学、異動や転勤など、環境の変化が多い春。その変化に対応しようと夢中になっているうちは気づかないが、ひと段落して緊張が緩むころに、心身に異変が生じる。いわゆる「五月病」だ。

一過性では済まない場合も

五月病は、医学的な病名ではない。新年度が始まってまもない5月ごろ、主に新入生や新入社員に心身の不調を訴える人が増えることから、こう呼ばれている。新入社員の場合は研修が終わり、部署に配属されてからしばらく経ったころに「六月病」になる人もいる。

新しい環境に適応しようとがんばり過ぎたり、「こんな仕事がやりたい」など自分の抱いていたイメージと現実とのギャップが大きかったりすると、毎日少しずつストレスがたまっていく。積み重なったストレスにより心と体が悲鳴を上げ、気分の落ち込みや倦怠感、集中力の低下などの精神的な症状に加え、不眠や食欲の低下、腹痛、下痢、めまい、疲れやすさといった身体的な症状が現れる。

精神科医で、お茶の水うつ病クリニック顧問の古賀良彦医師によると、五月病は「病気」というより上記のような「状態」に陥ることを指し、長い休みで生活リズムが乱れることをきっかけに、社会生活に戻れなくなってしまう。精神科を受診すると「心身症」あるいは「適応障害」と診断されることが多いという。

心身症は、心理社会的な要因または精神的なストレスが原因で体に様々な不調を生じる病気で、気持ちより体に症状が現れる。一方、適応障害は、「ある特定の状況や出来事が、その人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのために気分や行動面に症状が現れる」(厚労省「みんなのメンタルヘルス」)という精神疾患だ。いずれも原因がはっきりしていることが特徴だが、軽度のうつ病と区別がつきにくく、診断が難しい。

多くは一過性で、環境に慣れ、順応できるようになると回復するが、長引くとうつ病へと進行するケースもある。

ストレスを翌日に持ち越さない

五月病になるリスクが高いのは、「ストレスマネジメントが上手にできない人に多い」と古賀医師は言う。

「考え方が柔軟でコミュニケーションが上手な人、自分の意見を主張できる人はストレスへの耐性が強く、五月病にはなりにくい。また、身体的に健康な人はストレスにも強いと言われます。逆に、体があまり丈夫でない人や、リジット(柔軟性に欠ける)でコミュニケーションが苦手な人は、ストレスへの対処法を身につけていないことが多い。こうした傾向の強い人は要注意です」

しかし、持って生まれた性格はなかなか変えられない。五月病にならないためには、どうすればよいのだろうか。

古賀医師は「ストレスを翌日まで持ち越さないことが大事」と言う。「積み重なるとたいへんですが、1日のストレスの量というのは、たいしたことはないのです。体の疲れも同じ。その日のうちに解消するのがポイントです」

そのための対処法が「3R(Rest、Relaxation、Recreation)」だ。Restは質の良い睡眠をとり、体を休めることで、Relaxationは心を休めること。そのための具体的な方法として、古賀医師が勧めるのがRecreationだ。

「リクリエーションとは、再び(Re)つくること(creation)。ストレスという重みでへこんでしまった心と体をつくり直し、円滑な状態に戻してあげるのがリクリエーション。ちょっとしたことでいいので、毎日やるのが効果的です」

疲れたからといって「明日に備えて」とすぐに寝てしまうと、ストレスを翌日に持ち越してしまう。布団に入る前の15〜30分程度でいいので、1日の出来事を忘れて夢中になれる時間を持つといい。具体的には、どのようなことをするといいのだろうか。

「問題に直面しない」のがポイント

「1日分のストレスを解消するだけですから、たいしたことじゃなくていいんです」と古賀医師。「お金がかからず、準備や片づけが簡単で、極める必要のないこと」をいくつか用意しておくといいという。

たとえば、夕食は毎日コンビニ弁当という人なら、1品だけ調理する。帰りの電車の中で「今日は何をつくろうか」と考えたり、調理したりしている間はその日の出来事を忘れられる。ほかにも、好きな雑誌を斜め読みしたり、その日の気分に合わせてアロマをブレンドしてみたり、ここ数年ブームの「大人の塗り絵」もおすすめだ。手や頭を動かす「ちょっとした楽しみ」を見つけよう。

「すでに五月病になってしまった」という人は、まず、生活リズムを取り戻すことが大切だ。五月病になると、朝起きられなくなり、ひきこもりがちになる人も多い。早寝早起きを心がけ、朝晩のメリハリをつけよう。外部との接触を絶たないことも大切だ。学校や会社以外でいいので、外の人とコミュニケーションをとるようにしよう。

ポイントは「起こった問題に直面して対処しようとしないこと」だと古賀医師は言う。「上司が苦手」とか「仕事が理想と合わない」などの心理・社会的な問題は、原因そのものを取り除くのは難しい。それよりも、違うところに楽しみを見出し、自分を癒す方法を探すほうがいい。

家族や同僚など周囲の人も、本人が「眠れない」「食欲がない」「身だしなみに気を使わなくなった」といったサインを出していたら、まずはその事柄について話を聞いてあげるといい。心配でも、いきなり「会社で何かあったの?」と核心に迫ってはいけない。

誰かに話を聞いてもらうことで、気持ちがラクになることもある。いつもと違う様子はないか、つらそうにしていないか、周囲が気にかけてあげることも大切だ。[監修:古賀良彦 杏林大学名誉教授、日本TMS研究研修センター理事長、お茶の水うつ病クリニック顧問]

(Aging Style)