『ヘイル、シーザー!』 (C)Universal Pictures

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【映画を聴く】『ヘイル、シーザー!』前編
器用すぎる映画音楽家の才能が
良い方向に作用!

ジョエル&イーサン・コーエン兄弟の最新作『ヘイル、シーザー!』は、“夢の工場”だった1950年代ハリウッドのスタジオ・システムの表と裏をありのままに描いた、豪華絢爛なサスペンス・コメディ。ニッチな音楽ファンに向けた前作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』とは違い、脚本とそれを具現化するために投入された諸々の物量のスケールがこれまでになく大きく、“総決算”とか“集大成”といった言葉が似合う作品となっている。

古くは『赤ちゃん泥棒』に始まり、『ファーゴ』や『ビッグ・リボウスキ』など、コーエン兄弟監督作品では繰り返し“誘拐”が題材として扱われてきたが、本作でもスペクタクル超大作を撮影中の世界的スター俳優(ジョージ・クルーニー)の誘拐事件が発生。それが世間に知れ渡る前に解決するため、スタジオはフィクサーと呼ばれる“何でも屋”のマニックス(ジョシュ・ブローリン)に、事件の早期解決を一任する。役者たちの公私両面を徹底的に管理する体制が確立されていた当時のスタジオでは、実際に彼のようなフィクサーが暗躍しており、マニックスも実在した人物をモデルにしているという。

そのほかにもセクシーさ全開の若手女優(スカーレット・ヨハンソン)、演技のヘタなアクション俳優(アルデン・エーレンライク)、真面目すぎる公証人(ジョナ・ヒル)など、個性豊かなキャラクターの登場する群像劇に仕上がっている本作。黄金期の映画業界を舞台としているため、カーター・バーウェルによる音楽もゴージャスかつノスタルジックな、往年の名画を思わせるテイストを前面に打ち出している。

たとえばスカーレット・ヨハンソンの演じる若手女優が人魚の尾びれをつけ、32人のパフォーマーとともに華麗な水中ダンスを披露するシーンや、アルデン・エーレンライクの演じるアクション俳優が西部劇のカウボーイとして投げ輪や射撃の腕前を見せるシーンなど、バーウェルは本作の中にいくつも盛り込まれている劇中劇それぞれにマッチした音楽を提供。これまでの作品では器用すぎるかゆえに映画音楽家としての作風が見えにくかったバーウェルだが、ここではそれがいい方向に作用し、実に多彩な音楽を楽しませてくれる。(後編「“無音”を音楽的に聴かせることのできる持ち味」に続く…)

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