「日本のマチュピチュ」と呼ばれる地にある「天空の茶畑」が絶景だと話題になっている。場所は岐阜県揖斐川町(いびかわちょう)春日六合の上ヶ流(かみがれ)地区。山の中腹をくり抜いてできたような、標高300mほどの高台にある。

この茶畑自体は以前からあったが、一面を見渡せる絶景ポイントができたのは今年の3月だという。新潟の村上や静岡の掛川、京都の和束など、日本各地の茶畑を巡ることをライフワークとしている筆者も行ってきた。

茶畑のために東京から岐阜まで







上ヶ流地区は、岐阜市内からだと車で1時間ほどの距離にある。筆者は東京住まいなので新幹線で名古屋駅へ、そこから電車を乗り継ぎ、揖斐川町のコミュニティバスを利用し、最後は徒歩というルートで行った。

バスを降りるまでは良かったものの、そこからは山肌を縫うように曲がりくねった坂道をひたすら歩く。バスの運転手さんに降り際「お気をつけて」と言われたのはこの事だったのか。道中すれ違うのは車ばかり。筆者以外徒歩で向かっている人は皆無だ……。





高い木々に囲まれた道を進むこと30分。急に景色が開け、上ヶ流地区にたどり着いた。斜面で起伏のある地形をめいっぱい使って茶葉が栽培されているので、茶の畝が立体的に並んでいて美しい。茶畑の魅力は、鑑賞目的で植えられているわけではないのに、表面をアーチ状に整えられた畝が何本も連なる美しさにあると思っている。



勾配のきつい山を登る





道なりに進むと「天空の遊歩道→」と書かれたまだ新しい看板が。遊歩道は地元の方がボランティアで約1年かけて整備したそう。何人か案内のために立っている。遊歩道に向かう観光客が通る度に、とても嬉しそうに微笑んでいる。





遊歩道とはいうもののまだあまり整備されておらず、ちょっとした山登りのよう。階段は木で組まれた簡素なもので、勾配がきつい「けもの道」のような箇所も。絶景ポイントへ行くには、この道を20分ほど歩く必要がある。
しかし、重たい足を引きずって辿り付くと、その努力に見合うだけの価値がある絶景が眼前に広がった。



山々に囲まれた景観はまさにマチュピチュ。山中に茶畑が作られることは珍しくないが、四方を山に囲まれているのは珍しい。ましてや高いところから見下ろして楽しめる茶畑は、今まで見たことがない。畝の線が地区全体に走っていて、まるで庭園に作られた枯山水の砂紋のようだ。東京から5時間ほどかけて来た甲斐があった!


帰りに遊歩道入口で茶葉を販売していた地元の方が冷たい緑茶をくれた。普段飲んでいる緑茶と比べると、かなり渋みがある。上ヶ流地区は在来種(品種改良されておらず、生産数の少ない茶)を多く栽培しており、これを提供してくれたようだ。「ここの茶葉はよく味が出るので1回で4〜5煎は入れられますよ。フライパンで少し炒ると香りがよくなってより美味しく感じますね。うちの奥さんは炒り続けてほうじ茶にしてよく飲んでいます(笑)」と教えてくれた。せっかくなので在来種の新茶を買いたかったのだが「このあたりの新茶は1カ月先ですね」とのこと。今度は車で行こうと思う。
(茶柱達也)