専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第54回

 ひと頃騒がれたシミュレーションゴルフ。そのブームは一段落したのか、最近あまり話題になっていませんが、どうなっているのでしょう。

 今回は、他の関連施設と比較しつつ、現状を探ってみたいと思います。

 そもそもゴルフのシミュレーションマシンは、お隣の韓国で発展した経緯があります。

 現在の韓国人選手の活躍は、みなさんご承知のとおりです。そうした状況にあって、韓国国内はゴルフブームが続いています。しかし、韓国は平らな土地が少なく、ゴルフ場を大量に造成できない事情がありました。そこで、簡単に量産できるシミュレーションゴルフに白羽の矢が立ったのです。

 そのため、初期のシミュレーションマシンは、ほとんど韓国製でした。日本で使用されていたものでも、聞いたこともないような韓国のゴルフ場がプログラムされていて、「やけに山岳コースが多いな」と苦笑したものです。

 日本にシミュレーションマシンが入ってきた頃は、大金持ちがプライベートで持っている、という噂がありました。某通信会社のオーナーの地下室にあって、そこを訪ねた漫画原作者の先生が、それをネタにしたという都市伝説もあります。

 なにしろ、そのマシンはティーグラウンドが傾き、さらに天候の調整も可能だったそうです。突然小雨が降ったりするなど、まるでゴルフ場にいるような感覚でプレーでき、「我々も一度行ってみたいな」と仲間内で話題になったものです。

 当時の最高級マシンは、おおよそ1台1000万円弱。その後、日本のメーカーもがんばって、非常にリーズナブルなマシンとなり、一気に普及し始めました。ゴルフバーなども大挙出現。1980年代後半のビリヤードブーム、バブルの頃の打ちっぱなしブームを思い起こすような勢いで、都内では一時、シミュレーションマシンだらけになりました。

 シミュレーションゴルフの設置店は、お酒を飲みながら軽食をつまんで、2時間くらいで帰るという、カラオケやダーツバーの代わりになるものでした。グループでの飲み会やデート、さらにはゴルコンにも最適と、何かと重宝されました。

 当初は物珍しさもあって、私もよく行きましたが、次第に料金が高いことに気づきます。お酒を飲んで食事付きとはいえ、ひとり5000円ぐらいはしましたか。

 そうなると、本物のゴルフを平日にしたり、打ちっぱなしの練習場に行ったりしたほうが安いじゃん、ということで、特に地方ではあまり普及しませんでした。結局、シミュレーションゴルフは、都会のお洒落な"遊び"だったのです。

 また、シミュレーションマシンがポピュラーになると、各所に1〜2台、客寄せパンダみたいに置かれるようになりました。ゴルフ量販店の試打スペースであったり、スポーツジムであったり、さらにゴルフクリニックや練習場、シェアハウスなどにもあったりして、さまざまな場所で見受けられました。しかもタダ同然でできるようになって、目新しさもなくなってしまったのです。

 ですから、最新鋭のシミュレーションマシンを導入した店であっても、今やかなり料金を安くしないと使ってもらえないのです。それだけ、テクノロジーが進歩したのでしょうが、ゴルフ人口そのものが減っている現在、シミュレーションゴルフのピークは、どうやら過ぎたようです。

 ゴルフはもともと、自然と触れ合うからいいのです。そんなわけで、ハイテク・シミュレーションゴルフを屋内でやるより、ローテクのゴルフもどきを屋外でやるほうが、今では人気があります。

 例えば、グラウンドゴルフ。おもちゃのクラブと軽くて柔らかいボールを使って、すごく短いコースを回るレジャーですが、現在"ポスト・ゲートボール"として、お年寄りに人気があります。

 ゲートボールは、ボールの位置で相手のプレーを邪魔するから"意地悪"で、トラブルになることも多いとか。その点、グラウンドゴルフはそういう心配がないから楽しいし、昔できなかったゴルフを今できるのがうれしい、という方が多いそうです。

 他にも、サッカーボールをゴルフ場で蹴って、ドラム缶を小さくしたような穴に入れる、フットゴルフというものがあります。これは、すでにW杯なども開催されていて、結構な人気です。

 その施設が栃木県にあって、私も一度行きました。ゴルフ場の空きコースを使っていたので、その雰囲気はゴルフ場と何ら変わりませんでしたね。

 というわけで、ゴルフ関連の施設や競技は、より自然志向に向かっています。ゴルフは、プレーそのものより、軽井沢あたりで、森林浴感覚でやるのが楽しい、という人もいますからね。

 今後、ゴルフのシミュレーションマシンはなくなることはないと思いますが、現状維持のまま、温泉にある卓球場のように、"あるところにはある"存在になっていくのではないでしょうか。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa