【日本サッカー見聞録】手倉森ジャパンは逆境を力に変える不思議なチーム

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▽U-23日本代表は、5月11日に佐賀県のベストアメニティスタジアムで開催された『九州 熊本震災復興支援チャリティマッチ』でガーナ代表と対戦し、矢島の2ゴールと富樫の代表初ゴールにより3-0と快勝した。代表とはいえガーナは国内リーグの若手を中心としたチームで、スタメンには19歳の選手が4人など平均年齢も21.3歳と日本よりも若い。GKリチャード・オフォリとMFサミュエル・テッテーの2人はフル代表に名を連ねているものの、国内リーグが終わったばかりとあってコンディションも万全ではなかったようだ。

▽日本は立ち上がりからガーナの高いDFラインの背後にある広大なスペースを利用して、縦パスから浅野が抜け出しては果敢にシュートを放つ。試合前、霜田技術委員は「高温多湿のマナウスではどのチームもスローペースの試合展開で、引いて守りを固めて来るだろう。そこで日本もカウンターがカギになる」と予想していたが、浅野の俊足は大きな武器になるだけに、後半途中のジョーカーとして起用するのではなく、スタメン起用が効果的と感じさせる立ち上がりだった。

▽前半11分と15分の矢島のゴールは、右利きの矢島を左MFに、左利きの野津田を右MFに起用して、彼らのカットインからスペースを作り、サイドバックの亀川や伊東の攻撃参加を引き出したプランが的中した。「ガーナ(の守備)はボールサイドにブロックを作ってスライドしてくる。日本の悪い癖は攻撃を切り返すが、ラストパスを早いタイミングで狙って行け」という手倉森監督のスカウティングも功を奏した。

▽1点目は中央突破のこぼれ球を左サイドの矢島が右足のコントロールシュートでGKの頭上を破った技ありのゴール。そして2点目は素早いリスタートから伊東のクロスをファーサイドでフリーになった矢島が豪快なボレーで決めた。

▽これが代表2試合目となる伊東は、このアシストだけでなく、再三にわたり質の高いクロスを供給。ゴール前の選手に合わせて高低やタイミングを考えたクロスで、シュートの精度が高ければもう2点くらいはアシストしていただろう。この伊東だけでなく、代表初スタメンの冨樫は「空中戦はもう少し勝ちたかった」と反省したものの、ゴール前で存在感を示し、30分にはGKの出際を浮かす技巧的なシュートで初ゴールを決める。そして同じく初スタメンの橋本もボランチとして落ち着き払ったプレーで攻守に安定感をもたらしていた。

▽リオ五輪のアジア最終予選後、主力選手にケガ人が続出し、チーム作りを不安視される手倉森ジャパンだが、特定の選手に頼るのではなく「レギュラーがいない」(手倉森監督)チーム作りが、今回も好結果をもたらした不思議なチームでもある。ただ、相手の実力を考えると手放しでは喜べない。その意味でも18日から始まるトゥーロン国際大会は、ポルトガルら強敵が集うだけに、リオ五輪へ向けて格好の試金石となるだろう。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。