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株式会社三越伊勢丹は、首都圏で伊勢丹6店舗、三越5店舗の百貨店を展開しているほか、中小型店事業として羽田空港や六本木ミッドタウン、丸の内などにも新業態店舗を出店。中国や東南アジアなど海外にも進出している。基幹3店舗の1つである伊勢丹新宿本店は、地下鉄の新宿三丁目駅に直結した本館のほか、男性向け商品を集めたメンズ館で構成されている。この「伊勢丹新宿本店メンズ館」のオウンドメディアが「イセタンメンズ公式メディア ISETAN MEN'S net」だ。

「伊勢丹新宿本店メンズ館」の前身となる「男の新館」は1968年にオープン。当時、男性の衣類は女性が代理購入することが多かったため、男性向け商品を集めていながら、顧客ターゲットは女性だったという。その後、2003年に「メンズ館」としてリモデルオープンし、男性自身が自分の欲しいものを選んで購入する場として生まれ変わった。

さらに2007年に一部リニューアルが行われ、現在では年間入館者数350万人、年間売上高は450億円を超える。

この成長に一役買っている「ISETAN MEN'S net」だが、その立ち上げは2013年だ。ただ、スタート直後は、月に1〜2本程度の記事が公開されるだけの寂しいメディアだったという。

「失敗の原因は、専任のスタッフがいなかったことだと思います。メディアの運営は店舗スタッフが兼務で行っていたため、どうしてもお客様対応や入荷してきた商品の整理などに時間を取られ、メディアは二の次になっていました。当時、私は別の部署にいたのですが、その存在を知らなかったほどです。社内での認知も低い状態でした」と語るのは、伊勢丹 新宿本店 紳士・スポーツ営業部 計画担当の成川央子氏だ。

○独自ファンの存在するメンズ館ならではの情報発信

「ISETAN MEN'S net」が誕生する以前の伊勢丹では、ダイレクトメールや折込チラシといった印刷物の発行に加えて、スタッフが手書きした手紙を送るパーソナルレターや、電話での呼びかけといったマーケティング活動を行っていた。テレマーケティングの対象となったのは、ハウスカードであるアイカード会員だ。

「以前は、限定商品の販売はどこで行われるのか、整理券は発行されるのか、どこに列を作ったらいいのかといった問い合わせが数多くありました。これはお客様にとっても不便な事ですし、できれば、社員の問い合わせ対応時間を来店してくださったお客様の対応に回したいという気持ちはありました」と、成川氏はオウンドメディア立ち上げの背景を説明する。

オウンドメディアに行き着いたのは、メンズ館が独自の顧客を持っていたことも影響しているという。

「Facebookをいち早く取り入れた結果、大きな反響があったのはメンズ館でした。お客様に、より便利に使っていただくために何かしようと考えた時、オウンドメディアにたどり着きました。メンズ館には本館と違うファンがついているのも見えていましたから、独自メディアでいこうということになりました」(成川氏)

○専任チームの立ち上げとO2Oツール導入でリニューアル

苦戦していた「ISETAN MEN'S net」のテコ入れに着手したのは、2014年秋のことだ。社内でもあまり知られていないメディアを消滅させずに復活させたのは、世間的なオウンドメディアの潮流を感じたからだという。

「2014年10月、下期を迎えるにあたって専任のメディアチームを立ち上げました。以前は別のブログサービスを利用したメディアでしたが、この時にソルフレアさんの協力を得てリニューアルに向けて動き出した形です」(成川氏)。採用したのは、ソルフレアの持つO2Oクラウドサービス「RUNWAY」だ。

「リニューアルに向けての課題は、コンテンツ量とそのクオリティでした。店頭スタッフが片手間で行うのでは十分なクオリティと量を確保するのは難しかったわけですが、発信すべき情報はたくさんある状態でしたので、それを出せば良いことはわかっていました」と語るのは、ソルフレア 代表取締役 CEOの藤縄智春氏だ。

自社でもメディアを運営してきた経験がある同社が行った提案は、O2Oの実現を見据えたメディア展開だ。ロイヤルカスタマーの育成を目指し、デザイン等も含めてもう一度見たいと思わせるメディアとして2015年2月にリニューアルを行ったのだ。

「オウンドメディアというと割引きクーポンを発行したり、ゲームを用意する取り組みも多いですが、伊勢丹新宿本店メンズ館はそういう店舗ではありません。店のイメージに合わせたメディアの構築と、十分な情報の発信によって、PV/UUはリニューアル前の約10倍になりました」と藤縄氏は語る。

○新製品・イベント情報を中心に発信。独自記事も人気

PV/UUの伸びに貢献したのは、記事クオリティ向上と公開本数の増加だという。

「専任スタッフは当初4人で、現在は5人で活動しています。店頭スタッフの中からやる気のある人材を募って作ったチームです」と成川氏。

現在は専任スタッフが店内での取材やブランドから提供される情報をもとに記事を作成。ソルフレアがクオリティチェックを行った上で公開している。リニューアル後の公開記事数は、月間100本程度にまで伸びている。

「外部のライターやカメラマンに協力してもらうことや、ブランドから提供される写真を使うこともありますが、基本的に撮影も含め内製化しています。イベントによる変動はありますが、それを除くとほぼ右肩上がりで伸びています」と成川氏は成果を語る。

トラフィックの7割はモバイルからのもので、ブラウザ経由と専用アプリでほぼ半々の状態だ。 伊勢丹新宿本店メンズ館の顧客年齢は30〜40台の男性が中心だが、「ISETAN MEN'S net」の利用者もほぼ同じ層だという。ただ、店舗よりも20代の比率が高い傾向にあるという。

記事が多くなったことで検索流入も増え、SEOにも強いサイトになった。

「伊勢丹新宿本店メンズ館で検索して来る方も多いですが、スーツ、紳士靴といったキーワードで入ってくる自然流入もかなりあります。PVを伸ばしていくには自然流入が重要なので、よい傾向です」と藤縄氏は分析する。

百貨店では次々と新たな展示やイベントが開催され、各ブランドからの新商品も発表される。そのスケジュールに合わせて事前に記事を用意して公開するというのがメインの作業だが、限定商品販売時には残数を日々更新するなどリアルタイム性の高い情報発信も行っている。

人気コンテンツは、独自製作したマフラーの結び方講座だ。マフラーを贈る時におしゃれな結び方もプレゼントするというイメージで、ギフトに動画が視聴可能なQRコードつきカードを同梱することが売場から提案され、これを受けて作成したものだ。

「検索流入も多く、多くの方に見ていただけました。ご自分のマフラーを持って、売場に『あの結び方をやってください』といらっしゃる方もいたようで、売場でも手応えを感じたコンテンツです」(成川氏)

○O2O実現&メディアの成長に向けての取り組み

O2Oの実現を前提としたメディアだけに、来店誘導に向けた仕掛けも作られている。その1つがアプリを利用したユーザー情報の分析だ。アプリ利用時に登録した基本情報があるため、年齢や性別といった情報をサイト利用状況と照らし合わせた分析が行える。

また、ビーコンを利用したプッシュ配信もアプリを通して実現している。店舗にはビーコンが導入されており、店舗に近づいた人や店内にいる人に向けた情報発信も始まっている。

もちろん、メディアとして成長させるための目標もある。それは、双方向の実現とECへの誘導だ。

「以前にアンケートを実施したところ、改善要望が非常に多く集まりました。お客様が驚くほど熱心に考えてくださっていることがわかったので、こういった声を活かし、双方向のサイトに育てていきたいですね。また、店舗から遠くに住んでいる方にもメディアを通して接触し、ECに誘導できたらと考えています」と、成川氏は今後の展望を語った。

(エースラッシュ)