ベランダに死体が!月9万円の豪邸に住んだら…【シングルマザー、家を買う/50章】
<シングルマザー、家を買う/50章>

 バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。

 春になると、我が家のベランダには、小さな花が咲く。

 とはいえ、サボテンさえ枯らす私がガーデニングをしているわけではなく、築40年のコンクリートでガッチガチに埋め固められた団地(しかも高層階)のベランダの端に、自力で育った雑草が小さな花を咲かすのだ。

 土も栄養もないのに、雨と日光の力だけで毎年花を咲かすのだから、尊敬に値する。しかも、毎年冬になると跡形もなくなるのだが、春になると新しい芽がいつの間にか顔を出し、花を咲かす。しぶとさが半端ない。……まるで自分を見ているような気持ちになるのはなぜだろうか。そんな花のことを、私は“幸せの花”と呼ぶようにしている。

 この小さな花を発見したのは、入居して数日が経った頃。布団を干すためにベランダに出ると、隅に小さな花を見つけたのだ。その瞬間、「この家にしてよかった」と心から安堵したことを覚えている。

 どうして花ひとつで安堵するのか。それには大きな理由がある。

◆夢の一軒家で見た戦慄の光景

 離婚する前、地方に転勤を勝手に決めてきた元旦那と、転勤先に住む家を探しに行った。臨月だった私はまだ2才の長女を連れ、慣れない土地でも快適に暮らせるような、素敵な家を探そうと意気込んでいたのだ。

 何軒か回った後、団地育ちの私に紹介されたのは、大きな、大きな一軒家だった。全国の団地住まいの子供たちがそうであるように、私も一軒家に異常なほどのあこがれを抱いていた。

 まず、家の中に階段があるという事実だけでテンションが上がる。この単細胞は一体何なのだろう。さらに、その家は『渡辺篤史の建もの探訪』でしか見たことのないような吹き抜けがあり、リビングは驚きの30畳。しかも、4LDK。

 さらに、夢にまで見た大きな庭があり、子育てをするには申し分ない。今後宝くじが当たらない限り住めないような豪邸だったのだ。こんな豪邸を東京で借りたら、30万はくだらない。しかし、地方であるという理由だけで、この家が9万円で借りられるというのだ。恐るべし、地方。

 その値段を聞いてもうすぐにでも契約の判子を押す気満々でいたが、とりあえず2階を見ましょうと誘われ、私はルンルンで階段を駆け上がった。そして、一つ目のベランダの窓を開けると、そこには見たことのない何かが横たわって死んでいたのだ!

◆白いハトの呪い!?

 恐る恐る近くで見ると、それは死にたてほやほやの白いハト……。カラスにつつかれてしまったのか、身体の半分が赤く染まっている。

……ねぇ、みなさん。ハトですよ! 死んでいたのは、平和の象徴である白いハトですよ!!! これから入居しようと思っていた家のベランダに、白いハトが血に染まって死んでいたんですよ!? そんなこと、ありますか!?

 思わず「ひっ」と声をあげ、後ずさりしてしまったが、そこはポジティブ思考だけが取り柄の私。この家に住みたいあまり、「平和の象徴であるハトが死に場所に選ぶほどの家なんだ!」と声に出していたのだ。恐ろしい、恐ろしすぎる! ポジティブって怖い!

 冷静な今であれば、どうしてこの豪邸がこんなにも低価格なのかに疑問を持つはずだが、人間浮かれると都合の悪いことには目を瞑る。その後、考える時間もなく、値段にそぐわない豪邸に住むことを決め、転居したのだった。

 しかし、この家に住み始めた私たち一家は、ハトの呪いなのか、次々と恐怖に見舞われることとなったのだった……。その話は、また次にでも。

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)

ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをものともせず保育園では人気者※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。