「あぁ〜、惜しいッ!」「もったいない」「どうしたんだろう......」

 歓声がこだまする女子ツアーのトーナメント会場。その片隅で、ギャラリーのため息がたびたび漏れてくるのは、香妻琴乃(24歳)の組からだった。

 一昨年のシーズン、賞金ランク19位となって一気にブレイクした香妻。昨季はシーズン序盤から腰痛に泣かされて、シード権(賞金ランク48位)を何とか確保するのが精一杯だった。

 迎えた今季、昨季からの巻き返しが期待されたが、ここまでの香妻は好調なのか、不調なのか、波のあるプレーが続いている。

 開幕戦のダイキンオーキッドレディスでは10位タイと、目標とするツアー初優勝に向けてまずまずのスタートを切った。しかし2戦目のヨコハマタイヤ PRGRレディスカップでは予選落ち。続くTポイントレディスでは22位タイと奮闘するも、4戦目のアクサレディスでは再び予選落ちを喫した。そしてその後、ヤマハレディースでは決していい状態とは言えない中で36位タイと踏ん張ったものの、以降は3試合連続予選落ちという憂き目にあっている。

 そうした状態にあっても、香妻の人気は根強い。日本ツアーきっての"美女ゴルファー"ということもあるが、小柄ながらアグレッシブかつパワフルなゴルフを披露する彼女に魅了され、常に多くのギャラリーがついて回る。

 香妻のファンが期待するのは、もちろん一昨年のような快進撃である。ゆえに、今ひとつリズムに乗り切れない香妻のプレーを目の当たりして、思わず嘆息を漏らしてしまう。

 香妻は今、いったいどんな状態にあるのか。

 昨季は腰痛に苦しみ、満身創痍でのプレーを余儀なくされた。はたして、その不安を今季も抱えたままなのだろうか。

「腰痛は、もう大丈夫です」

 香妻はそう言って笑顔を見せた。続けて語る。

「成績だけを見れば、調子が悪いように見えるかもしれませんが、昨季と比べると決して悪くはないんですよ。噛み合わない部分があるので、そこがしっかりはまってくれば、スコアもまとまるかなって思っています」

 このオフは、意気込み過ぎて失敗した昨年の反省から、まずはオーバーワークにならないように心掛けてきた。それでも、やるべきことはやってきた。トレーニングも十分に消化できたという。それも、腰にまったく負担をかけずにできたそうだ。その調整がうまくいったからこそ、香妻の表情は明るかった。

「今までは(腰に負担のかからない)トレーニングについて、何をどうすればいいのかわからなかったんですけど、トレーナーさんについてもらうようになって、(効果的なトレーニングの)方向性が見えてきたんです。腰痛が出ないようにするためのトレーニングなどもこなして、それが今、生きています。

 また、(技術的な部分の)スイングについても、コーチとトレーナーさんと一緒にいろいろと相談しました。今までは腰痛が出やすいスイングをしていたんですが、それを改善して、いいスイングをするためのトレーニングもやってきました」

 それらのトレーニングは、これまでやってきたこととは180度違った。自らの考えだけでやみくもにやってきた、昨年までの誤ったトレーニングから脱せられたことも「大きかった」と香妻は語る。

「昨年までは、(腰痛を防ぐためには)ただ筋力をアップさせて、体を筋肉で固めればいいと思っていたんです。それではダメ、というのがわかっただけでも大きな前進でした。

 あと、しっかりと休養を取って開幕戦に臨んだところも大きな変化です。昨年までは、合宿での調子をそのまま開幕戦に持っていこうと思っていて、ほとんど休まなかったんです。それで、特に昨年は合宿での疲労を引きずったまま、開幕を迎えてしまった。結果、シーズンを通して、いい成績につなげることができなかったんです。

 体を休めることって、すごく大事なんですよね。このオフ、そのことを改めて痛感しました。おかげで今年は、ゴルフにすごく集中できています」

 このオフ、香妻はさまざまなことを試してきた。そして、それが功を奏して、万全の状態でシーズンを迎えることができた。その分、結果が出ていないことに関しては、ややもどかしさを感じている。が、彼女に焦りはない。

「今教わっている先生(コーチ)の中島弘二プロ(70歳。茨城県・玉造GC所属)は、50年以上もゴルフをしていますからね。その先生に教わり始めて、まだ3、4年。これから学ぶべきことが、まだまだたくさんあります。そのひとつひとつ(の教え)を吸収しながら、焦らずにやっていきたいと思っています」

 ツアー初優勝を手にすることは、簡単なことではない。それは香妻自身、よくわかっている。しかし、決して手が届かない位置にあるわけではない。彼女にはそれだけのポテンシャルがある。ちょっとしたことが噛み合えば、近いうちにチャンスは巡ってくるはずである。

text by Kim Myung-Wook