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NVIDIAが開催した「GTC 2016」の発表の中でも異色で興味深かったのは、ロサンゼルス子供病院(CHLA:ChilDRen's Hospital Los Angeles)の「DR. TED」という発表である。この病院にはVirtual Paramedic ICU(VPICU)というチームがあり、PICU(小児集中治療センター)の救急医療を効率化するシステムの開発にあたっているようである。

従来、医師は頭の中で患者のモデルを作り、そのモデルに基づいて、治療の方針を立てる。しかし、このような能力を養うには経験を積む必要があり、医師を訓練するのは時間もかかり大変な努力が必要である。

また、救急病院であるので次々と患者が運び込まれるし、収容された患者の容体も刻々と変化するので、医師に与えられた時間は限られている。短い時間で、医師が色々なデータを理解する能力にも限界がある。

このような状況を改善するため、CHLAのVPICUチームは、過去の治療データから、どのような治療が最も有効であるかを予測するモデルを作り上げた。このモデルの構築には10年以上にわたるCHLA PICUで治療した約12,000人の患者の、症状、治療とその結果の電子データが使われた。この大量のデータを分析し、関係性の強いものを抜き出している。

データの作り方であるが、血圧や脈拍などの測定データ、投薬や検査のデータなど、色々な時系列データを並べて2次元の1つの図を作成する。このまったく異なる性質の時系列データを多数並べて、画像として扱うという考え方が面白い。

この入力データには161種の測定値が含まれ、5分ごとに測定された12時間分のデータが入っている。これを画像とみなしてディープラーニングで特徴を抽出する。

最初に作ったシステムは1次元のCNN(Convolutional Neural Network)であったが、現在ではフィードバックのあるRNN(Recurrent Neural Network)になっている。RNNはそれぞれの時点での患者の生体反応と治療データを入力とし、容体がどう推移するのかと生死を予測する。そして、生成された出力はネットワークにフィードバックされ、次の時点の入力と合わせて、次の時点の結果の予測に用いられる。

次の図は縦軸が正しい予測が得られる確率で、横軸は間違った予測を許容する確率を示している。この図から、DR.TEDは25%の誤りを許容した場合、正答率は90%程度になることを示している。このカーブの下の面積(Area Under Curve)はDR.TEDは90.3%であるが、子供の救急医療患者の死亡率を予測する標準となっているPIM 2システムでは83%であり、DR.TEDの方が精度が高いと言える。

DR.TEDは心拍数、最高/最低血圧、呼吸回数、血中酸素という5項目と生存確率を予測して出力する。これらを精度よく予測できるので、色々な治療について予測を行って、効果を比較すれば、どの治療が良いかが分かる。

次の図はDR.TEDが、心臓発作、心筋症、てんかん性の発作と気胸がある患者に色々な薬を与えた場合、どのような結果になるかを予測した出力の一部を示したもので、棒グラフが上側に伸びている薬は改善、下側に伸びている薬は悪化を示している。この図を見れば、どのような薬を与えて治療するのが良いかが分かる。

CHLAのVPICUチームは、10年あまりの救急患者の治療データにディープラーニングを適用したDR.TEDシステムを構築した。このシステムは、精度の高い生存確率、生理機能の予測を行うことができる。また、治療とその効果の予測も行うことができ、医師の判断を助けることができる。

今後は、フレームワークやコンピュータを拡張し、医師のディシジョンサポートを行うサービス範囲を拡大して行く予定である、という。

(Hisa Ando)