愛されメイクは今さら無理。でも、結婚したい。

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東京アラサーOLはお守り代わりにコスメを買います。

春はパステルな春コスメ、夏はビビッドカラーの夏コスメ、秋はチョコレート色の秋コスメ、冬はもちろんクリスマスコフレ!

四季がある日本では四季折々のコスメが発売され、伊勢丹、高島屋などの百貨店から街のドラッグストアまで、笑顔でアラサー女子を招き入れます。

毎日顔にお絵かきはしてるけど、全然ちがうんだよ

そりゃアラサーにもなりますと、「男のネクタイ、女の化粧」といわんばかりにメイクは常識扱いになってきて、毎日顔になにかしら塗ったり描いたり足したり引いたり伸ばしたり隠したりつけたり外したりして出勤します。

好きな男がいるわけでもない会社への出勤にトキメキなどありませんから、面倒くさくてすっぴんで出社したくなること、365日中360日ぐらいはあります。

お化粧<<<超えられない壁<<<5分の睡眠。しかし、すっぴんで行くと「体調悪い?」と即座に心配されるので、周囲を心配させないためにチークをひとはけするのはもはや市民の義務。

でも、楽しみな予定がある日のメイクは、義務メイクとは一線を画します。

服や靴を選ぶのと同じくらいお化粧にも気合が入るし、めちゃくちゃ悩みます。顔の作りが違うと言われようと、石原さとみ風、北川景子風、人種を超えてミランダ・カー風を目指したり。

冷静に考えるとちゃんちゃらおかしいけど、女にとってのメイクは、手軽で現実的な「変身」だからしょーがない。ほら、秘密のアッコちゃんも、セーラームーンも、みんなコスメ道具で変身してたじゃない。

ストレスフルな毎日から脱皮するための変身

「なんでそんな変身願望があるの?」って聞かれたら、「独身アラサーOLの日常はすごくストレスフルだからだよ」と返します。

もう新人じゃないから甘やかされない、でも肩で風を切ってオフィスを闊歩するほど偉くもない。若い子に怒鳴って「ヒステリックBBA」として陰口言われないように気を使い、そのくせ「女だから」となめられたりもするし、「男は自分よりちょっと頭が悪い子が好きなんだよ」とうんこセクハラを食らうし、自分で自分の立ち位置がワカラナイなんてことは日常茶飯事。さらに「結婚」にまつわる諸問題のせいで小言を言われることも日常茶飯事。

身ぎれいにしていれば「きれいなのに」と言われ、すっぴんで髪もボサボサに生活していれば「気をつかえ」と言われる。「そんな引き裂かれた状態を全部忘れたい!」「もう別人になりたい!」と叫びたくなるようなストレスのなかで、手っ取り早く女性たちの夢をかなえてくれるのが化粧です。引っ越しほど手間もお金もかからず、整形のようにリスクもない。お手軽で日常的にできる「変身」。それが化粧。

女同士できゃーきゃー言うのが楽しい

会社用の義務メイク、合コンや彼とのデート用メイクなど化粧の種類は多々あれど、一番楽しいのって結局、女同士で「あ、その色きれい。どこのなの?」「新しいの買ったんだ〜見て見て!」「そのラメきれいだね〜、上品」「ネイル新色?欲しかったんだよね。かわいい!」ときゃっきゃうふふと言っているときです。女同士で情報交換したり買い物していると、普段降り積もる「女のツラミ」が「女の楽しみ」に変わる気がするし、単純に楽しい。

アラサーともなれば、周囲のコスメフリークのレベルがすごい勢いであがっていきます。日本未発売コスメを海外出張のたびに大人買いしてきたり、個人輸入を駆使したりは当たり前。好きが高じて化粧品会社を立ち上げた友人もいます。

プロにカラー診断を受け、似合う色味を研究しつくし、成分などにも詳しくなる彼女たちを見ていると、「好きーかわいいー」とゆるふわ言い合うだけでは飽き足らず、がんがん研究して掘り下げていく探究心を褒め称えたくなります。

ここには「誰かのための化粧」なんて概念は存在しません。ただ純粋に、自分が楽しんで、満足するための趣味であり生きがいのひとつ。もちろん異性へのアピールの概念も宇宙の塵と化しています。

毎月毎号、女性誌で特集される「モテるメイク決定版!」「愛されメイクはこれ☆」「彼を虜にするなちゅ☆かわ☆メイク」なんてどこ吹く風で、みーんな自分が楽しくて、女同士で褒めえればそれで満足な気持ちが確実にある。

いまさら愛されメイクなんて無理。でも結婚したい

20160510_make_03.jpgそんな、楽しくお化粧するアラサー独身女性に忍び寄るのが「でも、結婚したいなら、男ウケしないと意味なくない?」という悪魔のささやきです。

自分の好きなことに「男ウケ」なんて入れたくないのに、独身アラサーでいると「男はもっとナチュラルな方が好きだよ」「そのメイク怖くて近づけないよ」「だから独身なんじゃない?」なんてクソリプ総攻撃を受けます。

鏡を見て「最高」と満足していたのにすっぴんの方がいいだなんて、ちゃんと鰹節を削った出汁のお味噌汁を飲ませたら、「顆粒出汁の方がおいしくない?」と言われるのと同じくらいの気分の悪さです。

「メイクは自分のためのエンタメだから、ぶっちゃけあなたの好みは聞いていないのですよ、サー」と私なら突っ返しますが、なかにはそういうことを言われたら真面目に考えてしまう女性もいます。

全世界の男みんながナチュラルメイクが好きなわけでも、女子アナみたいな肉じゃが色メイクが好きなわけでもないはずなのに、「だからダメ」と思わされる。「独身」でいることを犯罪のようにを突き付けられて、彼女たちのなかには「楽しい化粧」から「義務の化粧」へとハンドルを切る人もいます。

「こうじゃなきゃいけない」から自由になるためにがんばって働いているのに、楽しみを奪って好みを押しつけてくるクソリプなんて欲しくない。「化粧は異性の気を引くため」だなんて決めつけてくる矮小な人間も好きじゃない。自分のためだよ馬鹿野郎。でもそれを面と向かって言えば、これまた「寂しさから女性ホルモンが枯渇してる」なんて頭をかち割りたくなるクソバイスを頂戴するという負のループ。

「やりすぎない方がいいよ」

「あんまり派手だと男は委縮しちゃうよ」

「普通っぽい方がモテるよ」

自分のお金で好きなコスメを買って、自分たちで楽しんでいたいだけ。なんでそれじゃいけないの? 灰色の気分を上げるために、自分の変身願望を手軽にかなえたかったのに。

その手っ取り早い気分転換さえ「結婚できない理由」につるしあげられると、悪くもない自分を責めてしまう。

頑固でゆずれないから結婚できないの? 笑顔で流して「男受けのするナチュラルメイク」の仮面を毎日かぶるのがイイ女なの? 結婚してたら、カラーメイクをしていても「おしゃれで素敵な奥さんだね」って言われるの?

不安やストレスは心を弱らせます。独身アラサー女は仕事やプライベートで自分を守っているけれど、あまりにも世間のクソリプが多すぎて押し負けてしまうと、「自分を守るもっと強固な鎧が欲しい」=「結婚したい」と呟いて迷走します。

「結婚」は文句を跳ね返すための免罪符ではない

「別に何言われようと好きにしたらいいじゃん。クソリプ野郎と結婚するわけでも、彼らが結婚を世話してくれるわけじゃないし」と効率厨は正論を吐きそうになりますが、ストップ。そんなことはみんなわかっています。彼女たちが呟く「結婚したい」は「疲れた」「ぬこかわいい」と同義で、本気で本当に結婚したいという思いとは別のものです。

根本にあるのは、不要に傷つけられたりする理不尽を避けるための免罪符が欲しがる気持ちです。「いいでしょ別に。結婚してるんだから」と言えたらどんなに楽だろう、という魂のルフランです。

だから、本当に結婚したいならむしろ愛されメイクはするべきではない、と私は思います。なぜなら無理をして相手に合わせても、結婚という長い生活では必ず限界がくるから。

自分が好きなメイクをしていることを「かわいい」「楽しそうでうれしい」と言ってくれるパートナーを選んだ方がずっといい。「男はこれが好き」と大きな主語を盾にして自分の好みを押しつけ、彼女たちの笑顔を消す相手なんて言語道断です。

なので無理やり「義務のメイク」をするのではなく、自分らしく楽しんでいる姿を「素敵だ」って言ってくれる相手を探しにいけばいい。けど、凹んでつらいときは、「正論よりも共感」なのもわかってるから、クソリプに傷つかないで欲しいなぁと願いながら、今日も百貨店のカウンター行脚をしに、一緒に出かける私です。

撮影/出川光

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