「HONDA CBX400F」生産終了から30年過ぎても人気は衰えない(写真は、「NGU Auto」の提供)

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本田技研工業が1981年から1984年にかけて製造・販売していたロードスポーツモデルのバイク「CBX400F」が、にわかに脚光を浴びている。

きっかけは、2016年5月8日に大阪府八尾市の近畿自動車道上り線で起こった強盗事件。走っている「CBX400F」を狙って、黒色のクラウンがバイクの前を割り込むように幅寄せして路肩に停め、助手席から降りてきた男が奪って、そのまま乗って逃走した。

発売時49万円が、現在は300万円

「HONDA CBX400F」(400ccクラス)は、約30年前に生産を終了したものの、現在でもライダーのあいだでは根強い人気で中古車市場でも価格の高騰が続くほど。マニア垂ぜんの、「伝説のバイク」とも呼ばれている。

犯人の男は、そんな「CBX400F」を走行中に無理やり停めて、奪って逃げた。バイクを運転していたのは、兵庫県姫路市内の会社員の男性。後部座席には友人を乗せていたが、2人にケガはなかった。

そんな盗難事件に、インターネットが反応。ただ、注目したのは盗まれたバイクで、

「ふつうのバイクだと思うんだがな。誰が欲しがるの?」
「高速道って...そんな無茶して盗むほど高価なバイクか?」
「オイオイ、昔はただの教習車だったじゃないか?」
「俺はCBXなんかよりCB400fourだな」

といった具合だ。

とはいえ、盗まれるにはワケがある。驚くのは「CBX400F」の価値だ。

「HONDA CBX400F PROSHOP」の看板を掲げる、兵庫県尼崎市の「NGU Auto」によると、「CBX400Fは逆輸入ものもあるのですが、国内ものでおよそ300万円はしますね。(CBX400Fに)盗難が多いのは今にはじまったことではないですよ」という。今回の大阪府八尾市で起こった盗難事件の被害男性も、警察の聴取に300万円相当と話しているとされる。状態のよいものだと、500万円前後で売買されているケースもあるらしい。

発売当時の価格は約49万円だったが、1990年代の人気漫画『疾風伝説 特攻の拓』や『湘南純愛組!』に登場したことも手伝って、いわゆる「走り屋」のあいだで人気が沸騰。その一方で、生産中止で現存するバイクの数が減って、プレミアムがついたというわけだ。「ブランド」バイクに乗る、ステータスもあるという。

しかも、「CBX400F」を狙った盗難が多発して、所有者が盗難保険に加入できない状況が続いている。新車から中古車まで、条件なしで加入できるバイク盗難保険を取り扱うロードサービスの「JBR Motorcycle」(名古屋市)によると、「CBX400Fは所有者にマニアの方が多いこと、また盗難が多いことで知られており、(2016年5月10日)現在も加入をお断りしています」と話す。

ちなみに、「CBX400F」の保有台数(車検があるもの)は、ホンダモーターサイクル・ジャパンも「わからない」としている。

サスペンションやマフラーといったパーツの盗難も相次ぐ

警察庁によると、バイク盗難件数は2014年に4万3720件。検挙率は11.8%と低く、盗難されると大半は戻ってこないようだ。ただ、盗難件数は年々減ってきており、2010年と比べると2万9772台(40.5%)も減ってきた。

盗まれやすいバイクは、「高価」で「人気」の車種であること。大型バイクの「ハーレーダビッドソン」が狙われやすいことはよく知られているが、スポーツタイプの「HONDA CBX400F」や「HONDA CB400SF」なども人気があり、盗まれやすい。大型バイクは全体的に高価なので狙われやすいという。

前出の「NGU Auto」は、「CBX400Fは部品も高値がつくので、バラしてネットオークションで売買されることも少なくありませんね。中古業者でも買い取りますが、ただ、なかには書類(車検)なしの『ワケあり』物件もあり、うちにもそんな物件の問い合わせがありますよ」と話す。

本体より簡単に盗んで現金化できることもあり、サスペンションやマフラーといったパーツの盗難も相次いでいるが、生産終了の車種だけにパーツを交換するにも純正品はすでに廃番になっていて、修理するにも時間とカネがかかる。

40〜50代のライダーなど、昔から丁寧に乗り続けている人は少なくないようで、なかには盗難にあっても改めて購入するほどの愛好家もいるという。