年始以降上昇してきた金価格。買いの背景となった3月の米国の利上げが見送りとなり、目先の材料は出尽くし、年始からの第一幕は終了した。一方、その後も続いた金ETFの記録的な残高増は、果たして先高を暗示するものなのか。

米国の利上げ見送りで
第一幕が終了した
2016年犇〞劇場

年始からさまざまなリスク要因に後押しされる形で上昇したドル建て金価格。年始から3月31日までにニューヨーク先物金価格は値幅で174ドル、率にして16・4%の値上がりで国際的にも数ある資産の中で最高のパフォーマンスとなった。四半期ベースで1986年以来約30年ぶりの上昇率となる。

円建て金価格はこの間の円高の影響を受けたが、それでもグラム単価で291円、7%の上昇となっている。

金価格を押し上げてきた材料は多く、複合的といえる。今や減速が確実視される中国経済の
動向と通貨人民元の切り下げ観測。それに伴う需要減少を映したこの間の商品市況の下落と景気の先行きを警戒する世界的な株安。サウジアラビアとイラン、ロシアとトルコなど中東をめぐる緊張に加え、にわかにリスク要因として浮上した英国のEU(欧州連合)離脱問題という地政学的要因。そして米国の利上げ見通しの下方修正だ。

この中で直接的な影響力の大きさとなると、最後の米国の利上げ見送りだろう。もともと1971年まで米ドルは金との交換が保証されていた(金本位制)という通貨制度に端を発し、金利を生まない金の価格はドル金利の上昇とそれを映すドル高に逆に反応して値を下げる傾向がある。

それゆえ昨年末まで、米国の9年半ぶりの利上げ転換を織り込む形で売られていた経緯がある。最終的には相場の常として売られすぎ状態にあったのが、昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)前後の安値といえた。

そして年始以降の波乱の金融環境を理由に3月のFOMCは利上げを見送り、年内の利上げ見通しも下方修正されることになった。金価格はFOMC直前に1年2カ月ぶりの高値となる1287・8ドルを記録したが、それは利上げ見送りをフルに織り込んだもの。となると、相場としては目先の材料出尽くしで年始からの金の上昇局面も第1幕終了ということになる。

しかし、一方で現物投資に匹敵する金ETF(上場投信)への資金流入が記録的水準となっている事実がある。最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高増は年始から3月31日までで176・83トン、時価ベースでは約8000億円にもなる。規模としては2010年4月にギリシャ債務危機が表面化した際と同じもの。多くは目先の値上がり益狙いではないとみられることから、先高観測の強さを表すものといえるだろう。

つまり、第一幕は終了したものの、相応の調整を経て第二幕に続くことになりそうだ。

マーケット・ストラテジィ・
インスティチュート代表
亀井幸一郎
中央大学法学部卒業。
山一證券に勤務後、
日本初のFP会社であるMMI、
金の国際広報機関であるWGCを経て
独立し、2002年より現職。
市場分析、執筆・講演など
幅広く活躍中。