事件は土俵じゃない、ビデオ室で起こっているんだ!

大相撲というのは判定に関して極めて先進的な仕組みを備えています。勝負を裁く行司と、それを四方から見守る5人の勝負審判、さらに東西の控え力士も判定に疑義を唱える資格を持つというトリプルチェック体制。そのうえで、ひとたび物言いとなれば土俵の進行を止めて協議を行ない、ビデオ室の意見を仰ぎながら判定をくだします。

さらにその際に、他のスポーツにない落としどころとしての「取り直し」を備えている。「よくわかんないから、取り直し」という黄金判定。「今のシュート入ったか入んないかわかんないんで蹴り直し」「今のホームラン入ったか入んないかわかんないんで打ち直し」「どっちの馬が先着したかわかんないんで走り直し」などというケースは他に類を見ない中、大相撲は時を戻します。時をかける力士たちがいる。

このことによって土俵には納得が生まれる、はずなのです。トリプルチェックをかいくぐったアヤしい一番も、取り直しというご破算によってアヤしさは吹き飛びます。ビデオで見ても微妙なくらいの勝負は、決着戦をやる。およそ揉めることなど考えられない仕組みが相撲にはある、はずなのです。

しかし、実際には揉める。ていうか、最近よく揉めている。僕の中の名探偵コナンは事件の匂いをかぎつけています。「このまわし臭いなぁ…」「肉の間が臭いなぁ…」「尻の穴が普通に臭いなぁ…」とクンクン嗅ぎまわっています。尻の穴はたぶん拭き残しですが、何やら陰謀の匂いがする。これは真実を解き明かすしかありません!

ということで、インターネットにその人ありと謳われた決めつけ捜査の安楽椅子探偵が、大相撲のビデオ室で起きている事件を解き明かしていきましょう。

◆ビデオ室の存在は知っているが、何をしているかはよくわからない!

まず今回の捜査のキッカケとなった一番から。大相撲夏場所二日目、安美錦と栃ノ心の一番です。この一番、安美錦は立ち合いで一旦当たってからパッと引いていなします。これを喰らった栃ノ心は、勢いよく土俵際へ。素早く背中に取りついた安美錦はポーンとついて送り出し。栃ノ心は頑張るでもなくアッサリと土俵を割ります。

しかし、安美錦はここで土俵にばったり。アキレス腱を断裂したそうで、土俵に突っ伏すとそのまま動けなくなります。これを見守る行司の軍配は栃ノ心へ。安美錦は歩くことができず、呼出しにかかえられて土俵から下りると、車椅子で花道をさがります。アクシデントに押し流されるように勝負が決する中、ひとつの問題が起きます。ビデオでリプレイを見ると、栃ノ心が土俵を割るほうが、安美錦が崩れ落ちるより早かったのです。

↓何故、物言いはつかなかったのか!謎が深まるアヤしい一番!



微妙なときはとりあえずビデオ見ようや!

多少時間がかかったとしても、次の一番でデブが行ったり来たりするのをちょっと削ったらええやん!

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かつて紹介されたビデオ室の様子では、ビデオ担当の勝負審判が2名おり、土俵の六方向から撮影された映像を複数台のモニターで確認していました。物言いをつける権利はないそうですが、勝負審判に連絡をして、勝負審判は随時意見を聞くことができ、「物言いしたほういいっすね」などの提案は可能といいます。それだけの体制を築いておきながら、何故こうしたスルーは起きたのか、謎は深まるばかりです。

●推理その1:「見てなかった」
僕中コナンは開口一番言い放ちました。「見てなかったんじゃないのぉ?」と。うむ、ありそう。デブとデブのおしくらまんじゅうを一日中見せられたら、ちょっとダレる時間があっても不思議はない。エアポケットのようにみんな見ていなかった空白の一番。「行司さんが見てたから大丈夫やろ」「場内も静かやし、大丈夫やろ」「どっちがどっちでも別にどっちでもええやろ」というなぁなぁ精神で誤審は流れていった。ほかの競技ではまずないと思いますが、相撲ならあるかもしれません。

●推理その2:「ビックリしていた」

僕中コナンも事件発生当初、安美錦の心配を先にしてしまっていました。安美錦が倒れたことで判定などどうでもよくなったのです。勝負審判も「うわ」という想いで心が埋め尽くされ、物言いとかをつけている場合ではなくなったのかもしれない。「そんなことより安美関を助けないと」「こっから協議したら結構待たせちゃうし」「とにかく早く終わろう」というやさしい気持ち。ほかの競技ではまずないと思いますが、相撲ならあるかもしれません。

●推理その3:「土俵を割ったとかどうでもいい、生き死に判定」
相撲の判定ではよく「死に体」という話が出てきます。単にどっちが先に地面に触れたかだけでなく、「ここで事実上死んでますな」という空中判定が行なわれている。今回の一番も、決着の様子だけ見れば余裕タップリに立つ栃ノ心と崩れ落ちる安美錦で、安美錦の死にムード。「死んだのはー、安美錦!」という判定で相撲界は最初から納得していたのかもしれない。一瞬、頭に取り直しという選択肢も浮かんだかもしれませんが、あの死にっぷりではやるだけ無駄ですからね。

●推理その4:「NHKが言うのが遅かった」
土俵下の審判がダレているだけならまだしも、ビデオ室からもアクションがないというのは不自然です。もしかして、ビデオ室は超受け身野郎なのかもしれない。自分が判定する気持ちで見て、何かあれば「微妙です」とお知らせするのではなく、アヤしいぞという話になってからムムムと見返しているとしたら。いつもならNHKが「軍配は栃ノ心に上がりましたが微妙ですね…」くらい言いそうなところを、NHKも安美錦の容体にばかり目が行っていて、微妙感を醸すのが遅かった。その結果、見返したタイミングでは、もう安美錦が帰ってしまっていた。「うわ」というビデオ室の気づきは、ことなかれ主義でかき消されるであろうこと、想像に難くありません。

↓むむ、この推理はかなり核心に迫っている感じがする!
<八角理事長、微妙一番に「物言いつけなければダメ」>

この一番を含め幕内後半戦の審判長を務めた審判部の友綱副部長(63=元関脇魁輝)は「こっち(正面)から見て安美錦の膝がカクッと(先に)落ちたみたいだったから」と物言いをつけなかった理由を説明。「他の審判も手を挙げる様子もなかった」と問題はなかったことも強調した。ただ、その後にスロービデオを見たビデオ室から「際どい一番だった」旨の連絡が入った。ただそれも「勝ち名乗りが挙がった後だったから」と話すなど、後味の悪さを残した。

http://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/1644625.html

NHKのスローを見てから言うビデオ室!

ことなかれ主義の勝負審判!

安美錦の早退!

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●推理その5:「他人まかせだった」

先の記事にある「誰も手をあげてなかったし」という引っ込み思案のセリフ。もしかして、この日のメンツはそろいもそろって他人まかせだったのではないか。「問題があれば誰かあげるやろ…」「何か目立ちそうでイヤ…」「誰も行かないのに俺が行ったら、俺だけちゃんと見れてないみたいでイヤ…」という思考。逆鉾が審判長をやっているときは、「逆鉾まかせだとアイツ何も見てないから危ない」という危機感があったものを、逆鉾が指導普及部付けのヒラ委員となったことで、逆に行けなくなってる説。

●推理その6:「客の並びがいつもと違った」
相撲の会場では、溜まり席と呼ばれるリングサイドを常連さんが埋めています。しかし、いつもなら東方にいる相撲記者が向こう正面にまわっていたり、細かい配置換えがある様子。もしかして、頼れるワンセグマンが溜まりにはいたのではないか。ビデオ室よりも先にワンセグの中継を見ながら「こりゃ微妙だな」「どっちかわからんね」「物言いがつきそう」などとデカイ声でつぶやいている人がいたとしたら。その人の声がキッカケで物言いをつける、という順番に審判が染まり切っていた可能性はある。ていうか、審判もワンセグ持ってたらええんちゃうか。ワンセグの不在が、誤審スルーに大きく影響している可能性はありそうです。

●推理その7:「新しいシステムを導入しちゃってた」
大相撲は意外にIT関連がお好きです。かつて、まだiPadが出初めの頃、親方と力士に1台ずつ配ってゴミにしたこともありました。もしかして、新たな判定システムみたいなのを導入しちゃっているのかもしれない。土俵に仕込んだ感圧式センサーとか、三次元映像解析でアウトとかインとか出しちゃうヤツとか。そのシステムでは「WIN 栃ノ心」とか出てたのかもしれない。ほかの競技ならまずないでしょうが、相撲なら機械の言葉に100%で従うかもしれない。魔法のIT信仰で。

●推理その8:「賭けてた」
正面:「栃ノ心に100万円!」
東:「栃ノ心に100万円!」
西:「栃ノ心に100万円!」
向正面:「栃ノ心に100万円!」
向正面:「栃ノ心に100万円!」
行司:「栃ノ心に100万円!」
ビデオ室:「栃ノ心に100万円!」

●推理その9:「前のとき、悪いことしたなと思ってた」
実はこのふたり、長く相撲をとっているだけあって揉めたのは今回が初めてではありません。2010年名古屋での取組では、もつれるような土俵際の投げの打ち合いから、安美錦は土俵下に転落。客席まで飛んでいくような派手な決着で、安美錦は足を傷めます。年寄衆に抱えられ花道を下がる安美錦ですが、土俵上では審判が物言いの協議真っ最中。安美錦は花道から呼び戻され、勝ち名乗りを受けるために、最終的にはケンケンで土俵に上がらされたのです。「あのときは悪いことしたなぁ」という気持ち、現在の審判部にもあったかもしれない。

↓「あのときはすまんかったのぉ」という熱い気持ち!



「何、足が痛い?」
「ダメだよぉ」
「勝ち名乗り受けるまでが相撲でしょ」
「ケンケンで上がりなさい」
「あと、次の力士に水をつけてから帰れよ!」

●推理その10:「帳尻」
先の理事長選を経て理事会の体制も一新され、審判部の顔ぶれも変わりました。琴勇輝の「ホウッ!」を禁止したり、仕切りでの手つきを徹底させたり、所作の乱れを正そうという動きが感じられます。そんな中、昨今の土俵上にはひとつ正すべき疑惑がありました。それが審判部による手心問題。人気力士には「1回は負けを見なかったことにしてあげる」という手心対応で、逆に一日に2回負けさせるなどの事態を頻発。そのあたりの手心をリセットし、帳尻を合わせていこうという動きがあるのではなかろうか。今回の安美錦と栃ノ心も、前回の取組で安美錦の師匠・伊勢ヶ濱親方による手心誤審があったばかり。

伊勢ヶ濱親方は先の日本相撲協会理事長選で、貴乃花親方を支持し、貴乃花もろとも大敗。中央の仕事を追われ、めでたく大阪場所担当として地方にとばされました。そのあたりで過去の清算というか、置き土産みたいなものも早期にクリーンにしたいという向きがあるのかもしれません。「前のときは悪かったのぉ」で栃ノ心に謝るパターン、これは十分にあり得るでしょう。

↓「前の取組では伊勢ヶ濱のバカがすまんかったのぉ」という熱い気持ち!


「ごめんな、この間は」
「ワシは栃関の勝ちって言ったんよ」
「でも伊勢ヶ濱がさぁ」
「勝手に説明始めちゃって」
「ビデオも見てないくせに」
「ワシ、家に戻ってからビデオ見たんよ」
「アレは栃関の勝ちやったもんなぁ」
「帳尻合わせといたで」

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僕の中の名探偵コナンは手にした腕時計型麻酔銃を貴乃花にぶちあて、世迷言をしゃべります。「私の家族と仲間たちはぁー」「北の湖前理事長の目指した理想の相撲道を目指しぃー」「一将万骨の絆を抱いてぇー」「御先祖を思い起こしぃー」「人生は打ち上げ花火ぃー」「帳尻すまんかったぁー」などと申し上げたてまつり、事件の真相を語るのです。世迷言すぎて安美錦の耳には届かないかもしれませんが、結論としては「帳尻」。これでお願いしたい。もし、もう一度土俵に立つ機会があれば、さすがにやりすぎたという意味で、揺り戻しの帳尻をお約束して、本日の捜査を打ち切らせていただきます。見た目は大人、中身は子ども、真実はたぶんひとつ!ありがとうございました。

なお、「つきひざ」のほうが面白いと思った説は、惜しくも落選です!