国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、タックスヘイブンに設立された約21万4000社とそれに関連する約36万の企業や個人の名前、所在国・地域などの情報をホームページ上で公開した。ICIJは情報公開で幅広く協力を求め、実態解明を進める。資料写真。

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2016年5月10日、タックスヘイブン(租税回避地)に関する「パナマ文書」を分析している国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、タックスヘイブンに設立された約21万4000社とそれに関連する約36万の企業や個人の名前、所在国・地域などの情報をホームページ(英文)上で公開した。 ICIJは情報公開で幅広く協力を求め、実態解明を進める方針。市民らからの情報にも期待している。

このホームページで「JAPAN」と検索して出てくる日本在住の企業と個人は合わせて400近くを数え、伊藤忠商事、丸紅、東洋エンジニアリング、ソフトバンクのグループ会社などのほか、セコムの飯田亮最高顧問、楽天の三木谷浩史会長らの名前も掲載されている。タックスヘイブンを日本企業が幅広く利用していることが明白になったことで、大きな波紋を呼んでいる。

パナマ文書は、租税回避地での法人設立を請け負うパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が、英領バージン諸島や香港、米ネバダ州など21の回避地で設立した法人に関する資料。キャメロン英首相、プーチン露大統領、習近平中国国家主席ら各国指導者や著名人の名前が含まれ、直接関わっていたアイスランド首相が辞任するなど国際社会に大きな衝撃を与えている。スイスのUBS、クレディスイス、英国のHSBCなど有力銀行も関係していたという。

タックスヘイブンに対しては、多国籍企業や富裕層の自国での課税逃れや、麻薬組織のマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されているとの批判が集中。経済協力開発機構(OECD)は税率や法制度の透明性を基準にタックスヘイブンのブラックリストを策定し、是正を促している。

関与した企業や個人は「合法である」と釈明しているが、専門家によると、実際はすべてが合法ではない。パナマなどタックスヘイブンに資金を預けたり会社を設立したりすることは合法だが、日本など主要国は日本居住者が全世界で得た所得に対して課税し、二重課税については申告の段階で調整する「全世界課税方式」をとっている。日本の居住者は、タックスヘイブンを含めた国外で所得を得れば、日本の税務当局へ申告しなければならない義務があり、適正に納税されていなければ「脱税」になる。

2014年から国外財産調書が導入され、5000万円を超える国外財産を保有する居住者は、その保有する財産の中身を記載して税務署に提出する義務を負うこととなった。故意の不提出や虚偽記載には、1年以下の懲役刑が科せられる。ところが国外財産調書の提出者は極めて少数で、未提出者が相当存在すると言われているが、実態は不透明だ。当局がパナマ文書を解読すれば実態を把握することが可能となるかもしれない。

4月中旬にワシントンで開かれた20か国財務相会議(G20会合)は「自動情報交換の仕組み」づくりで合意。日本の居住者がタックスヘイブンを含む外国に口座を開設すれば、その情報(口座残高、利子、配当など)が自動的に各国の税務当局に送られてくる仕組みを構築することになった。2017年までに55カ国・地域が交換を始めることで合意、日本は2018年までに交換することになっている。

4月のG20会合での声明は、「特に法人及び法的取極めの実質的所有者情報に関し、金融の透明性及び全ての国・地域による透明性に関する基準の効果的な実施に付した高い優先性を再確認する」と明記。これまではアンタッチャブルだった「実質的所有者」情報の透明性を求めている。「脱税、腐敗、租税回避、テロ資金供与、マネーロンダリングの目的で悪用されることを防止するため」とされている。今後、「国際的実質的所有者」情報の交換に向けて作業が開始される。

タックスヘイブンへの逃避資金は日本の企業・個人だけで数十兆円規模に及ぶとの見方もあり、正確な検証と徹底的な追及が望まれる。(八牧浩行)