先日、リクルートテクノロジーズがドイツのスタートアップ企業とブロックチェーン技術の応用に関する共同検証を開始したことが発表された。

「ブロックチェーン※1」といえば、仮想通貨ビットコインの取引のために考案された情報管理システムである。ブロックチェーンは、データを分散管理することによって、コストをかけずにセキュリティ強度の高い取引を管理できる特徴を持ち、金融業界の根幹を変える技術として、世界中の関係者の注目を集めてきた。最近では、ブロックチェーンの強みを活かした他分野での応用が話題になっており、先月末には、34社(5月2日時点では43社)による「ブロックチェーン推進協会(BCCC)※2」や、28社が参画する「社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)※3」が相次いで設立されるなど、日本でも注目を集めている。

今回リクルートテクノロジーズが発表した共同検証も、ブロックチェーン技術応用の流れを汲み、転職市場でのブロックチェーン活用を想定したものとなっている。ブロックチェーン技術の基盤開発・サービス活用に実績のあるascribeと連携し、履歴書公証データベースのプロトタイプ開発を開始した。

これにより、ブロックチェーン上で卒業証明書や前職の在籍証明書などの公的証明書を管理・閲覧できるようになれば、転職活動者が複数の公的証明書を収集する労力が軽減され、採用する企業にとっても、詐欺・改ざんの心配なく、より安全に公的証明書を取り扱えるようになることが期待されるという。

今回の取り組みで注目されているポイントは、金融領域以外でのブロックチェーン活用を視野に入れている点に加え、実利用シーンを想定して、実際にプロトタイプの作成を行っている点である。

先述の通り、日本でもブロックチェーン技術を社会インフラ等、金融業界以外にも応用しようとする声は広まりつつあるが、多くの場合、現時点では理想の形が語られている状況に過ぎない。

理想の形が定まれば、次に求められるのは具体的なサービスを想定した開発・検証である。今回の取り組みも、単なる理想の形の提案ではなく、実利用に向けてどのような課題があり、どんな形であればサービスとして成り立つのか、今後の検証結果が得られてこそ価値があると言える。
今後はますます、実際にプロトタイプを作成して課題を見極めようとする動きが活発になってくるだろう。

当初は概念ばかりが先行して語られてきたIoTも、実際にサービスとして形が見えてくるに連れて、センサー技術の限界や、共通基盤の必要性、法整備の問題など、多くの課題が見つかり、少しずつ普及に向けた道のりを進んできた過去がある。

「あらゆる取引の在り方を変える」と期待されるブロックチェーンが、我々の身の回りに浸透するまでには、どのような課題が残されており、我々はどうやってその課題を克服していけるのだろうか。今後の各社の動向に期待していきたい。

※1 ブロックチェーン:
データを世界中に分散させ、ネットワークの参加者が共有・管理する仕組み。元々は仮想通貨の取引のために考案されたが、特定の人によるハッキングを防止しやすい点や、データが破損しても復元できる利点などが注目され、金融業界を初めとする、幅広い分野で注目を集めている。

※2 ブロックチェーン推進協会(Blockchain Collaborative Consortium, BCCC):
ブロックチェーン関連技術周辺の情報共有と海外連携を目的としている。ブロックチェーン推進協会(BCCC)は実務者どうしの情報共有が大きな目的の団体であり、日本ブロックチェーン協会(JBA)は政策提言や自主規制などで影響力を発揮することを目的とする団体という違いがある。

※3 社団法人日本ブロックチェーン協会(Japan Blockchain Association, JBA):
ブロックチェーン技術を活用したサービスを提供する事業者が参画し、仮想通貨サービスに関するガイドラインの策定や、社会インフラへの応用、国や関係省庁へ政策提言などをする業界団体である。

readwrite編集部
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