太りゆく北乃きいの脱力感が、『ZIP!』視聴率トップを支えている
 朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系、月〜金・朝5:50〜8:00)が絶好調です。2016年2月以来、3か月連続で同時間帯の視聴率トップとのこと。

 とはいえ、『ZIP!』と他の番組に大きな違いがあるわけはありません。芸能からスポーツ、政治にいたるまで、扱うトピックはほぼ同じだし、もこみちのオリーブオイルブームもすでに下火。はっきり言って、どうしても『ZIP!』でなければならない理由はないのです。

◆寝起きには、北乃きいの低いテンションが合う

 それでも、筆者自身の視聴行動を振り返ってみると、結局『ZIP!』に落ち着くことに気づきます。

『あさチャン!』の夏目三久は、いささか朝鮮中央放送っぽい原稿読みが堅苦しいし、『おはよう日本』はニュース前の“おはようございます!!”が早口すぎて、びっくりして首のスジを違えそうになる。これは、寝起きのテンションではない。

 その点『ZIP!』は、和めるのです。

 なぜ気が休まるのでしょうか。そう考えるとき、北乃きい(25歳)のことが浮かんできます。関根麻里の後を継いで、2014年9月に総合司会に就任したのですが、前任者と違って特に何もしないのですね。

 VTR中に顔面の筋肉を総動員して笑顔を作るわけでもなければ、自慢のスキルや知識で周囲を感心させるわけでもない。せいぜい桝太一アナや日替わりMCの話に対してテキトーに相槌を打つぐらいのもの。酒焼けしたようなかすれ声で、事務的に進行をこなす姿には、もはや場末感すら漂う。

 全くやる気がないこともないのでしょうが、視聴率激戦区のハイテンションな朝にあって、その無味乾燥ぶりは際立っています。

 けれども、そんな姿にこそ視聴者はリラックスしているのかもしれません。

 競争の激しい芸能界。他とは違ったキャラを無理やり作っては、120%の力で番組の役に立とうと必死のタレントを横目に、ただ黙々と太り続ける北乃きい。

⇒【今より細かった5年前の北乃きい】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=509864

 実際、彼女の司会ぶりを高く評価する声はほとんど聞えてこず、話題になるのは“激太り”のことばかり。プロとして落第点と言われても仕方ない状況でしょう。

◆「役立たずの木」の教えとは

 それでも、北乃きいは身をもって大切な教えを説いてくれているのです。

 古代中国の思想家・荘子の話に、“役立たずの木”というのがあります。

 大工の棟梁がある土地で見かけた、巨大な神木。舟が作れるほどの立派な枝も何十本と張り出ている。しかし、棟梁は見向きもせず通り過ぎてしまったというのです。

 当然、弟子は不思議に思い、こう訊ねます。

「こんな立派な材木は見たことありません。なのに、どうして師匠はスルーしてしまうんですか?」

 すると、棟梁はこう言い放ったのです。

「やめろ。つまらないことを言うでない。あれは役たたずの木だ。あれで舟を作ると沈むし、棺桶を作るとじきに腐るし、道具を作るとすぐに壊れるし、門や戸にすると樹脂が流れ出すし、柱にすると虫がわく。まったく使い道のない木だよ。

まったく使いようがないからこそ、あんな大木になるまで長生きができたのだ。」

(『荘子 内篇』金谷治・訳註、岩波文庫)

 そうして、“人の役に立つとりえがあることは、自分から世俗に打ちのめされてるのと一緒だ”と、弟子たちを諭すのでした。

 日々おおらかに丸みを帯びていく北乃きいの姿に、悠然たる無用の大木を重ね合わせてしまう、そんな朝です。
 
北乃きい / サクラサク 2016 feat. 童子-T

<TEXT/沢渡風太>