新入社員や新大学生だけじゃない……新しい環境になるのは、新部署に異動になった社会人、子どもの進学で忙しくなるママたちだって同じこと。5月はその環境に適応できるかできないかわかれる時期で、気分が落ち込みやすいもの。そんなときにこそ読んでもらいたいのが、です。

行きづまった結果出した答えは……

会社で仕事がうまくいかず、人間関係にも疲れてしまった主人公の千鶴は、毎日の生活に息詰まってしまい「自殺」を決意します。会社にこっそり辞表を出して、誰も知らない田舎の民宿にたどり着き、そこで睡眠薬を服用してそのまま死ぬつもりだったのが……翌朝スッキリと目覚めてしまうのです。

自然と人が心を解放する

自殺に失敗してしまった千鶴。実は32時間もの間ぐっすりと眠っていたため、疲れも吹きとび気分も爽快! もう死ぬ気がなくなってしまったのです。しかも仕事も辞めてきて、誰も知らない田舎にやってきたことに安心し、のんびり、だらだらと過ごしてしまいます。
そんなのんきな生活を続けているうちに、この町で出会う人、自然が、どんどん彼女の凝り固まった心を解放させ、大事なことを気づかせてくれます。

宿泊先のオーナー・田村さんに癒やされる

そこで出会ったのが、田村さんという男性。千鶴が宿泊することになった「民宿たむら」のオーナーです。まだ30代前後で、寒い時期なのに裸足、髪はぐしゃぐしゃ、ひげも伸び放題で、おまけに服装はトレーナーにスウェットというお客さんをむかえるにはふさわしくない格好です。
田村さんは無農薬野菜を作ったり、それを売りに町へ出たり、自分や近所の人のために海に釣りに行ったりと毎日忙しく過ごしています。人との接し方もおおざっぱだしちょっとぶっきらぼうだけど、のんびりした人柄のため千鶴は彼に癒やされ、民宿に長居してしまう結果に。

さまざまな経験により体も心も元気に

田舎には都会では味わえない素晴らしさがありますが、その地で実際にさまざまな経験をしなければ、その素晴らしさにはなかなか気づけないもの。千鶴の場合は、散歩したり田村さんに連れられて釣りに行ったりといった体験をします。また、おいしい無農薬の野菜やお米、とれたての魚で体も元気になり、自然の威力により心も元気になったのです。

ストレスフリーになり本来の自分をとり戻す

私ってこんな人、頑固で欲張りで意地っ張り! など、自分に対していろいろなレッテルを貼っていませんか? 千鶴自身は仕事で悩み疲れ、自殺まで考えた繊細で気が弱い人間だと思い込んでいたました。しかし、田村さんには「気楽な人」とうつっています。
自分に辛く当たりすぎていると、だんだんと自分を見失いがちになり、心がふさがってしまいます。しかし、ストレスフリーになると、笑ったり怒ったり泣いたり、喜怒哀楽を人の前でも自然に出せるようになります。千鶴自身もそんな本来の自分を忘れていましたが、自然や人の優しさに触れることで、生きることに意欲的になれるまでに回復しました。

「天国はまだ遠く」を読み終えると気づくことは、きっかけを見つけて変化を与えてみると心も体も変化するとういこと。苦痛の中にいてもなにも変わらないもの。ちょっと行き詰ったときに読んでみると、とてもスッキリとした気分になれる本ですよ。