『モヤさま』は、BGMもエンディング曲のミツメも素晴らしい
 今年で放送10周年を迎えた、『モヤモヤさまぁ〜ず2』(テレビ東京系、日曜夜6:30〜)。

 街歩きや素人いじりの番組が数多くあるなかで、独特のユルいテイストが幅広い支持を集めているようです。

 けれども、それだけで人気番組が成立するほど甘くはないはず。そこで注意深く観ていくと、あちこちにこだわりを感じさせる要素に気づきます。

◆BGMはレゲエやスカ、エンディングはミツメ

 そのひとつが、音楽。全編を通して流れるマニアックなレゲエやスカから、番組全体のトーンが伝わってくる。ユルいけれども、足並みはきちっとそろっている。耳障りではないけれども、全く主張がないわけでもない。

 一見、ざっくばらんにやっているようで、実は慎重なバランスの上に成り立っている番組だと分かる選曲なのですね。

 たとえば…Toots & The Maytals - Pressure Drop

⇒【YouTube】Toots & The Maytals - Pressure Drop http://youtu.be/6rb13ksYO0s

※詳しく知りたい人は、「デイリーポータルZ」のこの記事が参考になります
http://portal.nifty.com/kiji/130826161522_1.htm

 そうしてBGMひとつおろそかにしないモヤさまのエンディングテーマが、ミツメというバンドの「あこがれ」。

 6月リリースのニューアルバム「A Long Day」に収録予定の一曲で、現状では番組終わりの数十秒ほどでしか確認できない状態なのですが、これがまた滋味あふれる演奏。いまのロックシーンに逆行した、“静かな”音楽を聴かせてくれます。

⇒【YouTube】ミツメ 4th Album”A Long Day” Trailer http://youtu.be/3mvhu0_sn3M

 というわけで、昨年リリースされたシングル「めまい」から、ミツメはどこが違うのかを考えてみたいと思うのですが、その前に昨今の若手バンドに通じる問題点を押さえておきましょう。

⇒【YouTube】ミツメ - めまい http://youtu.be/T1IbDJJ7_YI

◆若手バンドの「ジャパネットたかた化」現象

 それは、“まるでパチンコ屋の店内の音だ”ということ。

 全ての楽器が同じぐらい大きな音量で、わずかな隙間も埋め尽くそうとフルスロットルで鳴らされている。不必要なフレーズも多く、やたらとテンポが速い。

 すると、本来浮かびあがってくるはずの遠近感が失われ、とりあえず必死なのは分かるけど、残念ながら音楽とも言えない代物が出来上がってしまう。砂嵐のような音の壁を前に、ボーカルはジャパネットたかたの前社長も顔負けのキーキー声を発し続けるのみ。

(たとえば…)
https://www.youtube.com/watch?v=QvzzTBJ3IgY
https://www.youtube.com/watch?v=G3PKBwt02lE
https://www.youtube.com/watch?v=3exsRhw3xt8

◆ミツメの「音が鳴ってない部分」

 ミツメは、こうしたトレンドの対極にいるのですね。

 彼らの演奏には、きちんと音の鳴っていない部分が残されているのです。息を呑むためのスペースが、次の一音へ向けた集中力をフレッシュに保ち、楽曲にメリハリを生む。ダラダラとしたハイテンションとは違って、居合抜きのような緊張感が「めまい」にはあるのです。

⇒【YouTube】ミツメ - Blue Hawaii Session http://youtu.be/5wwPxEUQgnE

 そこで思い出すのが、レイ・チャールズ。ぎりぎりまで演奏の手数を抑えたスローテンポだからこそ、一つの音にまとまっていくときのスピード感が際立つ。

⇒【YouTube】Ray Charles - What Would I Do Without You http://youtu.be/9yfB06cFDBU

 数学者の岡潔という人が、こんなことを言っていました。

「私がいま立ち上がりますね。そうすると全身四百幾らの筋肉がとっさに統一的に働くのです。そういうのが一というものです。」(『人間の建設』小林秀雄、岡潔)

 ミツメにも、こうした“一”の凄味があるのですね。その輪郭を整えるために、音が止まっている時間が必要なのです。

 しばしばユルさが魅力と評されるミツメですが、表向きの脱力を支えるのは、慎ましやかな忍耐の数々であることは想像に難くありません。モヤさまがエンディングテーマに採用したのも、全くの偶然とは思えないのです。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>