昨年12月末の日韓首脳会議で決着したはずの慰安婦問題。ソウルの日本大使館前の少女像撤去をめぐり日韓両政府の見解が対立し、総選挙で勝利した野党陣営が公然と日韓合意の見直しを求めるなど、韓国内で再燃の兆しが見え始めた。資料写真。

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2016年5月6日、昨年12月末の日韓首脳会談で決着したはずの慰安婦問題が、韓国内でくすぶり始めた。ソウルの日本大使館前の少女像について、韓国政府は撤去の約束はしていないとして、日本側と対立。4月の総選挙で与党を過半数割れに追い込んだ野党陣営は公然と日韓合意の見直しを主張し、一部メディアも後押ししている。

慰安婦問題に火を付けたのは、朴槿恵(パク・クネ)大統領。聯合ニュースなどによると、4月26日、新聞社やテレビ局の編集局長らとの昼食会で質問に答える形で、少女像について「少女像の撤去と連携されているが、合意で言及も全くされなかった問題で、扇動してはならない」などと述べた。さらに、「(撤去についての議論は)被害者(元慰安婦)のためにならない。全く事実ではなく、混乱を引き起こしてはならない」と語ったという。

これに対し、萩生田光一官房副長官は翌27日の記者会見で、撤去は「(合意の)細部の事項の一つに含まれているというのが私の認識」と反論。「韓国側は日本政府が慰安婦像に対して懸念を持っていることを認知し、韓国政府としても適切に解決されるよう努力をすることになっている」と指摘した。

韓国メディアによると、萩生田発言について、外交部報道官は28日の記者会見で、「合意内容に撤去についての約束は全くない」とコメント。「これと(慰安婦支援)財団設立は完全に別個の事項であり、合意文面にもそれに関する連携性は全くない」と繰り返した。

昨年12月28日の日韓両国外相の共同記者発表文書には、少女像に関する韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相の発言を明記。「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」とされている。

少女像をめぐり、朴大統領をはじめ韓国政府は「民間で自発的に設置したものであり、韓国政府があれこれ言える問題ではない」との姿勢を続けている。日韓合意でも撤去まで踏み込んだ約束はしてはいないが、「合意で言及も全くされなかった問題」「別個の事項」などの韓国側の言い分は国内向けの「言い訳」にも見える。

一方、最大野党の「共に民主党」は27日、「我が党の基本的な見解は、昨年12月28日に韓日外務長官が合意した慰安婦合意内容を受け入れられないというものだ」と強調。再交渉を求める立場を改めて鮮明にした。第二野党の「国民党」共同代表も29日、「合意を基本的に無効化させ、(慰安婦)被害者の権利のための実質的な合意が行われなければならない」と表明した。

一連の動きを受け、ハンギョレ新聞は「少女像をめぐる見解の差が示す慰安婦合意の破綻」との社説を掲載。この中で「日本政府が少女像の撤去にこだわる主な理由は、慰安婦問題が再び取り上げられるのを防ぐことにある。しかし、日本が自国の責任を国際社会の前で明確に認めない限り、慰安婦問題は終わらない。総選挙で民心の所在が確認された今が、再交渉の適切な時期だ」と訴えている。(編集/日向)