36年ぶりの朝鮮労働党大会が平壌で始まった。金正恩第一書記体制の確立を国内外にアピールし、労働党の規約改正、党中央委員会の委員選挙などが行われる。写真は「敬愛する金正恩同志に従い、白頭の行軍の道を絶えず歩み続けよう」という意味のスローガン。

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2016年5月6日、36年ぶりの朝鮮労働党大会が平壌で始まった。金正恩第一書記体制の確立を国内外にアピールし、労働党の規約改正、党中央委員会の委員選挙などが行われる見通し。北朝鮮の政治経済の実態と党大会後の展望について、韓国と日本の朝鮮半島専門家の見解を取材した。核開発とミサイル発射など挑発を繰り返す金正恩政権だが、「党大会成功」「対米勝利」を国民に喧伝し「求心力」を高めた同政権が、米国、韓国をにらむ形で「平和攻勢」に転換する可能性があるとの見方が浮上。経済専門家は、改革開放路線が着実に推進され、北朝鮮経済の内部に深く組み込まれつつあると分析している。

◆鄭成長・韓国世宗研究所統一戦略研究室長

一部の専門家は先入観に基づいて金正恩体制について脆弱性を指摘、恐怖政治が体制を不安定にすると分析するが、不安定さにつながるとは限らない。北朝鮮軍エリートたちの解任を「粛清」と同一視する見方があるが、長官クラスで粛清された2人は、解任後も他の職を得ており、より若い幹部たちは軍部内の他の要職に就いている。金正恩が「即興的」に軍事の人事を断行し、軍部掌握を粛清のみに依存しているというのは事実と大きく違う。

金正恩は党中心の統治を行うために、党と政権の人事は20〜30%にとどめ、軍は40%以上の大幅な交代を実施した。金正日時代に過度に肥大化し、高齢化した軍部の上層部を退役させ、世代交代を通じて若返りを図るもの。事なかれ主義に陥った勢力を遮断し、軍紀を引き締めており、既得権益をいかに剥奪するかがポイントとなる。

北朝鮮は韓国に比べ経済力はじめほとんどの分野で大きく劣っているが、核と長距離ミサイルの持続的な開発によって大量破壊兵器部門で優位に立ち、南北間の軍事力の差が拡大している。

金正恩の年齢だけを取り上げて、「未熟な指導者」と性急な判断を下し、軍部改革での部分的な動揺をもって「不安定」と論じるのは不適切である。金正恩は父親の金正日より緻密で、政治局会議など幹部たちを集めた会議を頻繁に開き、討論を経た後、決定することを好んでいる。北朝鮮軍を「戦える軍隊」に改革している金正恩を、韓国と日本の安全保障にとって、「一層脅威となる軍事指導者」と見なすべきだ。

2008年以降、韓国と米国は北朝鮮と取引交渉をせず、この間に同国は核開発を進め、韓半島の非核化は困難な情勢となっている。安保面で圧力をかけながら外交努力をまずすべきだが、将来、韓国が対抗策として、核兵器保有を迫られ、開発計画があることを宣言することも有効だ。韓国内世論調査では54%が「核保有」を支持している。

◆梁文秀・韓国北韓大学院大学教授

北朝鮮は「改革開放」を推進しており、「市場化」の結果、年間経済成長率は1%以上を確保。2〜3%に達するとの推計もある。国民の生活水準は明らかに向上している。中国のような水準まで改革開放を公開的な形で明示するのは現段階では期待できないが、静かな形で推進する「北朝鮮式の改革開放」が当分の間持続する可能性が大きい。

市場はもはや、北朝鮮の経済内部に深く組み込まれている。市場の構造を見ると、最も上部に国家機関の貿易会社が位置する。その下にトウジュ(富裕層)がいて、労働党、保安署など地域権力機関が続く。最も底辺にいるのは小売商と生産者だ。市場の発展は、生産より貿易など流通の発展に依存している。

◆姜英之・韓国東アジア総合研究所理事長

北朝鮮の相次ぐ核実験により、韓国が強く反発、南北関係はまたもや悪化し始めた。また昨年、労働党創建70周年記念大会への劉雲山共産党常務委員の訪朝を契機とした、中朝和解の兆しも雲散霧消することになり、米日など西側が主導する国連制裁の強化で北朝鮮は、ますます国際社会で孤立している。