WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 前週のチューリッヒ・クラシック・オブ・ニューオリンズ(4月28日〜5月1日/ルイジアナ州)は、連日の悪天候によって、予備日となる5月2日の月曜日まで持ち越された。しかも、最終的には54ホール競技の大会に短縮せざるを得なくなってしまった。

 それでも、月曜日に第3ラウンドを終えたあと、わずかな好天の合間を縫って、ブライアン・スチュアード(33歳/アメリカ)とジェイミー・ラブマーク(28歳/アメリカ)、そしてアン・ビョンフン(24歳/韓国)の3選手によるサドンデスのプレーオフが行なわれたことは、幸運だったかもしれない。

 PGAツアーは「72ホール競技の大会を成立させるため、あらゆる努力をする」という、とても強いポリシーがある。これは、ツアー規定にも明記されていて、そう簡単に妥協することはない。万が一36ホール競技で終わってしまった場合、賞金額こそ公式記録に加算されるが、優勝そのものは非公式となってしまうからでもある。

 実際に2005年以降、この11年間で54ホール競技に短縮されたのは、たったの4試合。72ホール競技を前提とする、PGAツアーの強い意識を感じる数字だ。

 ちなみにその4試合は、2005年のベルサウスクラシック、2009年のAT&Tペブルビーチ・プロアマ、2011年のザ・バークレーズ、そして2013年、強風で中断が続いたヒュンダイ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ。なかでも、印象に残っているのは、ヒュンダイ・トーナメントだ。もともと月曜日に終わる大会だが、その月曜日に全員が36ホールをプレー。予備日の火曜日に18ホールを消化し、どうにか54ホールをこなして、オフィシャル大会として成立させた。

 そんな公式戦へのこだわりという点においては、過去にこんなこともあった。

 それは、1998年2月のAT&Tペブルビーチ・プロアマでのこと。同大会は暴風雨によって、月曜日まで引き伸ばしても36ホールしか消化できなかった。そこで、残り1ラウンドを8月のオープンウィークに実施。なんと、半年以上もかけて54ホールを消化。公式大会として成立させたのだ。

 PGAツアーは、72ホール競技はもちろんのこと、公式大会として成立させることへの強い思いがある。1998年のAT&Tペブルビーチ・プロアマでのことは、まさにPGAツアーのプライドと意地が垣間見えるエピソードである。

 72ホールをプレーするため、PGAツアーではいろいろな工夫をしている。最近よく、MDF(made cut, did not finishの略)という言葉を目にすることがあるが、これもそのひとつ。

 通常は70位タイまでの選手が決勝ラウンドに進むが、同じ順位の選手が多くて予選通過者が70名を優に超えることが頻繁にある。そこで、予選通過者が79名以上になった場合、第3ラウンドを終えた時点で再び上位70位までカットする。この処置のことを、MDFと言う。

 最終日に進めなかった選手は、記録上では予選通過となる。通常どおり、獲得賞金も得ることができる。ただし、第4ラウンドはプレーできない。

 このルールは、悪天候などによって1日に18ホール以上プレーすることになった場合に備えた措置で、2008年から導入された。わずかな人数を減らすことでも、時間にすると大きな違いが生まれることから、PGAツアーと選手会との間で話し合い、試行錯誤を繰り返した結果、現状のシステムに落ち着いた。

 また、ツアー規定では、予選通過を通常の70位タイから、時間短縮のために60位タイに絞ることも認めている。この場合、70位タイまでの選手が記録上は予選を通過したこととなり、賞金も獲得する。

 とにかくPGAツアーでは、72ホール競技、最低でも54ホール競技成立のために最善の努力をしている。その際、最も大変なのは、大会を運営する裏方たちである。コースコンディションを整えるため、多くのボランティアやスタッフが動員されて、彼らは夜明け前から整備を始める。

 そんな苦労を知っているからだろう。選手たちは、中断や再開が繰り返されても、文句を言わずに黙々とプレーし続けている。

 今回のチューリッヒ・クラシックにおいても、日本の岩田寛(35歳)の、第2ラウンドの開始時間は午後6時だった。そのうえ、日没サスペンデッドとなって、消化したのはわずか5ホール。残りは翌日の早朝となった。

 しかし、こんなことはPGAツアーでは日常茶飯事の出来事。そんなツアーだからこそ、優勝には大きな価値があり、世界のトップ選手が集まってくる"世界一"のツアーなのだと、改めて実感する。

 今回、長丁場の大会をプレーオフで制し、ツアー初優勝を遂げたのは、ブライアン・スチュアード。54ホール競技とはいえ、その過程を考えれば、それ以上の価値があるものかもしれない。最後まで我慢強くプレーを続けた彼の、貴重な勝利を祝福したい。

武川玲子●文 text by Reiko Takekawa