140分間カメラ回しっぱなし! 衝撃のワンカット映画『ヴィクトリア』はヒロインの人生が180度変わる一夜の出来事にドキドキが止まらない【最新シネマ批評】

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ご紹介する映画は、ドイツ映画『ヴィクトリア』(2016年5月7日公開)です。本作はなんと140分全編ワンカットで撮影したという衝撃の作品! スペインからドイツへやってきたヴィクトリアという女性の人生が、140分の間にとんでもない方へと転がっていく様をスリリングに見せていきます。

ベルリン映画祭では銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞したほか、ギルデ・ドイツ・フィルムアートシアター賞とベアリナー・モルゲンポスト紙 読者賞の3賞を受賞した話題作です。

【物語】

ベルリンのクラブで踊っていたヴィクトリア(ライア・コスタ)は、まだこちらに来て日が浅く、ドイツ語ができないので友だちもいません。そんな彼女に声をかけるチンピラ風の男4人組。中でもゾンネ(フレデリック・ラウ)と気が合ったヴィクトリアは、彼らと夜遊び。

拙い英語で会話しながら屋上で宴会したりして、ヴィクトリアはひさびさに楽しい夜を過ごします。

やがて彼女は「仕事があるから」と帰ろうとすると、ゾンネが職場のカフェまで送ってくれました。

ところが! ゾンネ以外の仲間がトラブルに巻き込まれてカフェに転がり込んできて、そこからヴィクトリアの人生が劇的に変化していくのです。

【140分間ワンカットの一夜が凄すぎる!】

映画を見ていると、夜からポーンと朝のシーンへ飛ぶことはよくありますよね。時間の経過をシーンとシーンをつないで演出しているのですが、『ヴィクトリア』にはそれがないのです。

映画が始まってからずっと撮りっぱなしで、カメラはヒロインのヴィクトリアを追い続けています。夜中から明け方までの140分(正確には139分)の間に彼女の身に起こることのすべてが映し出されているのです。

ゆえに、危ないことは、そのまま危なっかしく映し出され、アクシデントもそのままなので緊張感がハンパありません! ヒロインの恐怖はそのまま観客の恐怖でもあるのです。

【台本ナシの即興演技による犯罪ドラマ】

セバスチャン・シッパー監督は、完成台本は用意せず、シーンとロケーションと登場人物の大まかな動きだけを記した12ページの覚え書きを頼りに撮影を行ったそう。もちろん役者たちも同じものしか与えられていないから、役者は自身の役を動きから想像して構築していかなくてはいけなかったでしょう。そして「せーの!」でベルリンの夜、140分間を突っ走ったというわけ。

おそらく予算もない中、そうせざるを得なかったのかもしれませんが、監督、スタッフ、役者たちがそれぞれの持ち場で気力実力をMAXにして臨んだのでしょう。「みんなの心をひとつに!」なんてクサいけど、そういう気持ちがないとやり遂げられないかも。

【ヴィクトリアという女性】

この映画は、犯罪ドラマにしたのも大正解! ヴィクトリアが犯罪に巻き込まれていく後半はもう畳み掛けるような展開で、ワンカット効果が生きています。

またヴィクトリアのキャラ設定も見事。危険な仕事に巻き込まれそうになったとき「彼女、関係ないじゃん、帰してあげて」と思ったりするのですが、ヴィクトリアは「やる」とか言うんですよ〜。

でも彼女が語る過去が、ヴィクトリアがなぜそういう行動に出るのかを物語っていて、彼女は変わりたいんだ、殻を破りたいんだというのがわかります。だからGOしちゃうんですよ。

ちなみにヴィクトリアを演じたライア・コスタはスペインの新人女優。一夜の出来事で退屈な毎日が一転する女性を演じて、その変化を的確に見せていくところが素晴らしい。ゾンネを演じたフレデリック・ラウも、キャラクターの人となりをジワジワとにじませていくところが凄い。ワンカット撮影の中できちんと役を生きています。

ちょっと刺激的な映画を見たい人のオススメ。140分で人生がこんなにも急激に変わってしまうなんて、もう驚きと怖さがないまぜになったような気持ちに。監督や役者たちの140分間の衝撃をその目で確かめてください。

執筆=斎藤 香(c)Pouch

『ヴィクトリア』
(2016年5月7日より、渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー)
監督:セバスチャン・シッパー
出演:ライア・コスタ、フレデリック・ラウ、フランツ・ロゴウスキ、ブラク・イーギット、マックス・マウフ、アンドレ・M・ヘンニック
(C)MONKEYBOY GMBH 2015

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