世界トップのパラアスリートたちがプレーを披露し、パラリンピック競技の魅力を伝える大規模な体験イベント「NO LIMIT SPECIAL GINZA & TOKYO」が2日、銀座中央通りの特設会場で行なわれた。

 このイベントは、パラリンピックの普及啓発を目的に、東京都が昨年度から取り組むパラリンピック体験プログラムの一環として開催。多くの観光客や買い物客でにぎわう銀座通り口交差点から銀座二丁目交差点まで、200メートル以上を通行止めにし、テニスコートや体験ブースを設置。車いすテニスとウィルチェアーラグビーの選手、シドニーオリンピックマラソン金メダリストの高橋尚子さんや、陸上・十種競技の元日本チャンピオンでタレントの武井壮さん、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんらが参加した。

 イベントは、車いすダンスチーム「ジェネシス」のパフォーマンスで開幕。2014年の仁川アジアパラ競技大会にも出場した選手らが華麗でキレのある演技を披露した。続いて、車いすテニスのデモンストレーションには、パラリンピックシングルス2連覇中の国枝慎吾、アテネパラリンピックダブルス金メダリストの齋田悟司、女子世界ランキング2位の上地結衣が登場。

 3週間前に肘の手術をしたばかりの国枝は、タイヤが「ハの字」になった競技用車いすについて説明。車いすの推進力を使い、腕を使わずに上半身の動きのみで自由自在に車いすを操ってみせると、会場からどよめきが起こった。さらに、上地と齋田のラリーやチェアワークを、国枝がわかりやすく解説。何とも豪華なエキシビションを、観客たちは食い入るように見つめていた。

 イベントを終えた国枝は、力強くこう語る。

「この盛り上がりをそのまま東京オリンピック・パラリンピックにつなげたい。リオで金メダルを獲るために4月に手術をしたといってもいい。リオで3連覇、東京で4連覇するのが僕の夢なので、成し遂げたい」

 また、上地は「多くの人に車いすテニスを見てもらえた。これを機会に、いろいろな競技に興味を持ってもらえたら」。齋田も「車いすテニスを皆さんの前でアピールできたのは我々にとって大きな一歩になったと思う。もっとレベルアップして皆さんの前でいいプレーができるようにしたい」と話した。

 次に会場を大いに沸かせたのが、ウィルチェアーラグビーの選手たちだ。ウィルチェアーラグビーは、タックルなど車いす同士のぶつかり合いが認められている競技。そのスピードと迫力を伝えようと、池崎大輔、今井友明、山口貴久、池透暢の4選手が参加した。昨年のラグビーワールドカップで強豪の南アフリカを撃破し、歴史的勝利をおさめた日本代表メンバーの山田章仁選手と、元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんが実際に体験。

「ラグ車」とも呼ばれる堅牢な競技専用の車いすに乗り、池崎や池らの体が宙に浮くほどの強烈なタックルを受けた山田選手は、「言葉が出ない。予想以上の激しさでびっくりしています。(南アフリカの選手のタックルと比べて)今のほうがすごいです」と、衝撃を受けた様子。最後は笑顔で、「7人制ラグビーでリオオリンピックを目指しているので、一緒に頑張りましょう」とエールを送った。

 イベント終了後、池崎は「たくさんの人にウィルチェアーラグビーを知ってもらった。リオ、そして東京に向けていいイベントができたと思う」と話し、充実した表情を見せていた。

 また、陸上、パワーリフティング、ブラインドサッカー、ボッチャ、車椅子バスケットボールの体験会や展示も同時開催された。

 約2万2000人が訪れたこのイベント。会場をぐるりと観客が取り囲む様子は圧巻だった。一方で、観客席の後ろは立ち見の人たちであふれ、とりわけ車いすユーザーが特設会場の中の様子を見づらい状況があったのは運営面の課題のひとつと言えるだろうが、今後もパラスポーツの魅力や奥深さに触れる機会を継続的に作ることが、パラリンピックの成功につながることは明らかだ。

 武井さんは「僕もマイナースポーツの出身で、日本一を獲った後、(こんなにも反響がないのかと)ショックを受けた。今は自分自身がメディアになれる時代。選手の皆さんにはどんどん発信して、その輝く魅力を世の中に振りまいてほしい」と、自身の経験をもとに情報発信の大切さを説いた。

 また、国枝も「こういったイベントなどがあればあるほど、お客さんが我々に関心を持ってくれる。ぜひ知事にはこういう機会を増やしてもらいたい」と、舛添要一都知事にリクエスト。舛添知事も「はい、頑張ってやります」と即答していた。

 パラスポーツは、障がいの特性や程度に合わせて工夫を凝らすルールや用具などについて知れば、より楽しく観戦することができる。多くの人がまずはパラスポーツを「知る」ところから始め、それがムーブメントとなって、選手たちを力強くバックアップする成熟した社会になることを期待したい。

荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu