アイデアだけで満足はしない:「Field Hack ONAGAWA」キックオフミーティング開催

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4月22日、六本木のGoogleオフィスにて「Field Hack ONAGAWA」キックオフミーティングを行いました。「Field Hack ONAGAWA」はすでにお伝えしたように、Google イノベーション東北、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)、Engadget 日本版の3者が開催するモノづくりイベントです。東日本大震災から5年経ち、復興しつつある宮城県女川町の課題をフィールドワークと技術で解決しようというのが目的です。

インプットデイの22日は、Google ハングアウトによる遠隔地からのビデオ会議ではありますが、はじめて女川町の人たちと接する機会。緊張とともに熱気がこもる会場におよそ40人が集まりました(遠方からの参加者はハングアウトでの参加)。

地域×テクノロジーの可能性に挑戦する


はじめにGoogle イノベーション東北の松岡朝美さん、IAMAS 小林茂教授、Engadget 日本版の鷹木さんから、今回の「Field Hack ONAGAWA」にかける思いや参加者へのメッセージがありました。

2012年10月から被災地東北を回っているという松岡さん。いろいろな地域をまわる中で、もしかしたらもっと地域にある課題に対してテクノロジーが役に立つ場面はあるんじゃないかと感じたことから、こうした形でField Hackを開催することになったといいます。

松岡朝美さん

松岡:今回、女川で実施するということで、まさに地域のみなさんと一緒にフィールドワークしながら見えてきた課題の解決を目指します。アイデアだけだして満足するようなものではなく、プロトタイプを作り、女川のみなさんがテクノロジーの可能性をビシビシ感じてくださったら嬉しい。女川のみなさんとのチームワークを大切に、みなさんのスキルを活かして、一緒に女川町から新しいものを作り上げていくつもりで取り組んで行きたいと思っています。

小林茂さん

小林:短期間でプロトタイプまで作成することが可能なら、地域に対するテクノロジーの取り組みと合わせることで、すごいことが起きるんじゃないか思いまして、松岡さん、鷹木さんに相談して、じゃあやりましょうということになりました。こういうチャレンジは、日本、あるいは世界でもほぼ初めてなんじゃないかと思います。今日来ていただいている人たちも、よくわからないけどおもしろいに違いないと前のめりな人たちばかりなんじゃないかなと思います。ぜひ、一緒にチャレンジしていきましょう。

鷹木創さん

鷹木:これまで電子工作部で20回くらいものづくりのイベントをやっていますが、やはり2週間でできるものになりがちなんです。もちろん、それはそれでよい部分もあるんですが、もっと夢を見たいよねということを考えていました。じゃあ、大きなジャンプができるものって何だろう?っていうときに女川町でやれたら......という話をいただいたんです。たった3〜4週間ですが、ぜひこのField Hackに没頭して、いいものができるとうれしいなと思います。メディアとして全面的にバックアップします!

「必要なことだからやる」


今回のテーマは「復興しつつある宮城県女川町の課題」をハックすること。

では、いまの女川町の様子はどうなんでしょうか? 現地・女川町でのフィールドワークおよびハッカソンのベースとなる「女川フューチャーセンター Camass」というコワーキングスペースからNPO法人「アスへノキボウ」の高橋健さんが現地の話をしました。

高橋さんによると、震災前には自然の豊かなスポーツが盛んな町であったといいます。津波によって一瞬で町並みが消えた写真や、震災前に1万人いた人口が2016年3月現在で8600人であることなどのインプットがありました。

震災直後に、民間の中から「女川町は俺達が守る」と復興連絡協議会が立ち上がり、産業界を超えて復興を進めているとのこと。2015年3月には駅の開業に合わせ、「町びらき」を行いました。現在、商店街「プロムナード」が完成し、これから、その先に公園などが作られていく予定だそうです。

まちづくりワーキンググループという市民参加のワークショップであったり、オープンなデザイン会議であったり、開いた町づくりが行われているというのが印象的でした。また、高橋さんが所属する「アスヘノキボウ」では、女川町と民間企業、町内の人と町外の人、さまざまな連携を試みているそうです。

Google イノベーション東北の松岡さんは「女川町の人たちは"必要だからやる"という姿勢でハックする人たち」だといいます。必要だからやるというのはまさにハックだし、もしかしたら最近のものづくりイベントでは希薄になっている部分かもしれません。

女川町から特産品のカマボコ、地域限定のお菓子も

5つのワーク、Googleのツール群


参加者全員の自己紹介のあと、グループ分けが発表されフィールドワークの選択です。今回、女川町を「海」「山」「教育」「食」「町」という5つのフィールドに分けて、それぞれにフィールドワークを実施。その分野のプロが案内人となり、顕在する課題や可能性を探ることになります。

フィールドワーク「SEA Hack」「YAMA Hack」「TABE Hack」「TOWN Hack」の案内人

「EDU Hack」の案内人の方とはハングアウトで!

当日は現地入り後フィールドワークに入るため、事前にどのフィールドワークに参加するかをグループごとに決め、キックオフミーティングは終了となりました。近くの町出身の人であったり、イノベーション東北のサポーターの人であったり、地域との関わりを考えたり、自分のスキルが地方で活かせないか考えているという参加者が多く、ギリギリまでグループで話し合っていました。

また今回、Google Developer Relations チームが技術サポートに入り、Google Cloud Platform(GCP)のツール群が利用可能です。

佐藤一憲さん(Google Developer Relations チーム)

Google Developer Relations チームの佐藤一憲さんから、Google Cloud PlatformのCloud Vision API/Cloud Speech APIについてのデモがありました。これらのAPIを使うことで簡単に音声認識などができるようになります。インバウンド需要の高い昨今、海外からの旅行者向けに翻訳サービスなども簡単に作れるとのこと。

鈴木拓生さん(Google Developer Relations チーム)

同じくGoogle Developer Relations チームの鈴木拓生さんからは、Googleマテリアルデザインの紹介がありました。PCやスマホなどデバイスにとらわれずにアプリやWebサイトのデザインができるというデザインフレームワークです。すでに一般公開しているものですが、こうしたツールは短期間で開発する場合に特に有用です。

そして松岡さんからは、Google マップや Google Earth のマッピングツール群紹介です。Google は非営利団体や公益団体がGoogle の地図製品を活用できるように「Geo for Good」という取組みを通じ、必要な知識やリソースの提供を行っています。2005年に森林伐採計画が及ぼす被害を可視化したことをきっかけに始まった取組みで、状況を判断したり、考察を助けたりすることを目的としたものです。

このほか、今回のフィールドワークをサポートするものとして「オープンデータキット」の紹介がありました。Android端末だけとなりますが、オフラインで端末のアプリ側にデータ蓄積し、オンライン時にサーバに送信し、データ集約できるというもの。通信状態が安定しない場所でも利用できそうです。

まず、現地に入ってみないとわからない


いよいよ5月7〜8日にDay1〜2を開催します。

松岡さんがこの「Field Hack」の一番最初の舞台に女川町を選んだのは「可能性を感じたから」。参加者も主催者、現地の人たちも一緒になって新しい未来を切り開いていきたい、といいます。

参加者の中には「フィールドワーク自体はじめて」という人も多く、「いまはワクワク感でいっぱいですが、これから『テーマと"できること"と地域』というところで絞りこまれていくんだろうと思います。まだ見えてきてはいないですが...」という参加者のコメントのとおり、まず現地に入ってみないと何が起こるかわかりません。

フィールドワークでどんな課題、どういう可能性が見えてくるのか、それをハックするものとして何が出てくるのか、期待がふくらみます。

大内孝子(おおうち・たかこ):フリーライター/エディター。主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)がある。